第1章


さてと、ではまず手紙に書いてある通り、「ステータス!」




ぽわんと半透明の緑の画面が浮かんできた。






名前:未入力 


性別・種族:女・人間


レベル:19




生命力:3000(回復速度毎分10)


魔力 :1000000(回復速度毎秒100)


知力 :500(社会人歴30超)


精神力:10000(オバタリアン並)


力  :50


素早さ:30


幸運 :500


魔法熟練度:30(禅)


装備:地球の服(劣化防止復元有)(素早さ+30)(温度調節(微)


地球のアクセサリー指輪:シールド機能・火・水・土・風・雷・電磁波・放射能(50)


地球のアクセサリーネックレス:各種精神攻撃無効・各種毒攻撃無効




スキル:1(未入力)2(未入力)3(未入力)4(未入力)5(未入力)




ボーナススキル:【アントニオの加護】異世界言語(インストール済み)・アイテムボックス(中)・鑑定(極上)・隠蔽(極上)


【日本の神の施し】幸運(食料)






うん。孫ちゃんと一緒にやっていたゲームで知ってることが多いね。本当に孫ちゃんには助けられているよ・・おばぁちゃん泣きそう。。


そう、携帯ゲーム機を孫の誕生日に買ってあげて以来、おばぁちゃんもボケないように一緒にやろうとモンスターが出てくるゲームで孫に鍛えられているのでこのステータス画面の大半は理解している。




でも、この世界の事はまだ知らないけれど、始まりにしては随分と能力や加護が高い気がするのですが・・。




まぁ、女は度胸です。判らないことは少しずつ覚えておけば良いでしょう。


痛みも疲れもないすっきりとしたこの身体があれば大丈夫です!






となれば勝手知ったるや、まずは名前から決めていこう!


身体が若返った為か、先ほどまでのおばぁちゃん気質が乙女に戻ってきた様にとてもやる気が満ちてきている!




そうだなぁ~ここは今までの名前でも良いけどちょっとゲームぽくハンドルネームのようにしてみようかしら(にこにこ)




名前 → エン・ツバサ




これも何かの縁ってね、自由と言えば翼でしょう。あまり捻り過ぎても忘れてしまってもいけないと若返ったとはいえ覚えやすい名前を目の前の画面に手を当てて入力してみた。


後はスキルですか・・。どうしましょうね。




ということでおばーちゃん改め翼はそのまま草原の真ん中でぺたんと座り込んでゆっくりと考えて行く。




思いつくことは多々あるのですが、まだこの世界を把握していませんからね。加護があるからと安易に進めてはいけないと孫ちゃんにしっかり教育されています!


事前準備は大切です。




そうだ!事前準備と言えばアイテムです!段々と某モンスター系のゲーム内容を思い出してきた翼はさっそくアイテムボックスとやらをのぞいて・・いやどうやって?ここにはコントロールできるボタンはありませんが・・。




どうしましょう・・。あっ!確か小説ではアイテムボックスとは空間魔法だと書いてありましたね、ではまず魔法を使用できるようにならないと・・。




そうして翼は今まで使用したこともない魔法とやらに挑戦しようと草原に座ったまま静かに目を閉じた。




確か、魔法とは魔力操作がうんたらで・・魔力を感じて操作するとかなんたら書いてありましたね。




こうして翼は草原の真ん中で座禅を組み、趣味でしていた禅のクラスを思い出しながら瞑想を始めた。




色即是空・・どれくらいそうしていたのだろうか・・元々一度老いて死んだ身。焦ることなくゆっくりと時間をかけて志向を宇宙に飛ばすように深く深く精神を漂わせる。


頬にかかる風や草原からの緑の匂いなども気にならなくなるほど・・。




思い出すのは稲穂が実った豊かな田んぼ、いつか見た登山明けの頂上の朝日、乳を与えて安らかに眠る赤子の寝顔、ランドセルを背負いながら夕日を背に歩いた学校からの帰宅道、海、山、町、人々や家族、、空からテレビで観た宇宙へ・・。




そして今ある自分自身へ・・。あった・・今まで感じたことのない穏やかなで熱い塊。これが魔力・・・。




一度感じてしまえば魔力はわかった。次いで別の次元をイメージするためもっともっとと精神を研ぎ澄ませる。


1時間程ゆっくりと自分と自分がいる世界、それに同じであって別の次元と思考を飛ばして行く・・




あった・・私、アイテムボックスを感じることができた。そこにあるのに認識できなかった別の次元に魔力で空間を作成しているわ・・そんな風に感覚でわかっていった。




「アイテムボックス」




翼が静かに瞑想したまま呟くと、魔法で区切られた別次元の空間と現状を繋いだ感覚がして目を開けた。




そうすると目の前には半透明の青い画面がステータス画面の様に広がっていた。


20マス×20マスですね。これは中に入っているアイテム欄と思って良いのでしょう。




中身は見易い様にアイコン化された物資の様で数字もアイコン右下に分かり易く記されている。


下の方には100000Gとこれまた数字が記されているので所持金であろうことはわかる。




試しに全種類のお金1枚ずつと掌に集中してみると、金貨 銀貨 銅貨と何もない空間からゆっくりと硬貨が現れた。




ふぅ・・まだまだ慣れませんがお金は良くある単価で間違いないようですね。お財布は持ってないのでいざという時の為に銀貨5枚だけを内ポケットへ入れておきましょう。


最近までおばぁちゃんをしていた翼は特に物欲もないので最低限と推測されるだけのお金を持っておくことにした。




後はアイテム欄にある初心者セットかな?冒険者のリュックとやらを見て取り出そうと背中に背負うことに集中してみた。


3分程かけて肩や背中にゆっくりと重みを感じるようになったのでリュックを前に卸して中身を確認してみる。




えーっとリュックの中身は?


コップ・お鍋(小)・スプーンにフォークセット・魔石のようなものがついた小さなコンロぽいやつ・水筒(竹製)タオルぽい綿の布5枚・ひざ掛け1枚・包帯のような布10枚・傷薬のような軟膏1・周辺の地図?1枚・コンパス1個・乾パン12個1袋・チーズ手のひらサイズ一欠片・塩1瓶・胡椒1瓶・ハーブぽいの1瓶・ジャーキーに似た乾燥肉10枚・乾燥みそ汁の元?5つ


そしてリュックの上にはテントで使うような布が丸めて装着されていた。




これだけあればなんとか生きいられそうですね。サバイバルなどしたことありませんが・・。


アイテムボックスから何でもかんでも出していたら悪いお人に攫われるのが小説のセオリーでしたし、このリュックは常日頃から背負うようにしましょう。




後はまだモンスターには遭遇しておりませんが、幸い長い草が生えているし辺りに何かいそうな気配もないので大丈夫・・でしょうが・・魔法の練習もしておきましょう。


では・・まず人間として一番必須である水を出せるように頑張りましょうかね。




もうその場所で4時間くらいは経過していそうであるが、まだのんびりしている元おばぁちゃん。


流石に喉が渇いたので竹の香りがするおいしいお水をゆっくり半分程飲んで乾パンを一つ頂いてからもう一度瞑想を始めるのであった。




ふぅ・・お次はお水です。お水・・お水・・。




確かお水は空気中に存在している分子・・水素2と酸素1の原子がくまちゃんのぬいぐるみの顔のように電子で結合していると・・お孫ちゃんの宿題を思い出しながらくまちゃんぬいぐるみの顔を思い浮かべる翼・・。


くるくると翼の側にあった空気中を覚えたての魔力で少しずつ覆っていく。そこを細かく細かく細分化していくイメージで精密な顕微鏡をイメージしながら探っていく。


空気に湿気はそこそこ感じるしこれだけ草が生えていれば大丈夫。後はイメージよ・・。




そこから深い瞑想に入りながら1時間程、本来ならとっくに集中力を切らせていそうな時間であるが、神様に強化してもらった身体でなんとか額に汗をかくくらいで済んでいる。


ようやく空気中の水分を感じ取れるようになった頃、今度はそれを大仏様のように組んだ掌の上にそっと集めるように魔力を集中していく。




うーん、少しずつ掌が湿ってはいるけれど、これでは喉を潤す程集めることはできないわね・・。




アイテムボックスのように違う次元を認識することと、空気中に含まれる水分を集めるのには違いがあるのかもしれない。もしくは、単純に適性の違いかしら・・。


お孫ちゃん直伝の異世界小説を思い出しながらも翼は諦めることなく自分自身に集中していく。




適性の違いかしら・・魔力の練度が未熟なのかしら・・そこで思い出したのがいつか公民館で友達と習ったヨガである。確かヨガではチャクラを意識することを習ったわね・・。


ヨガで習ったチャクラの場所を翼は意識してみる。




チャクラチャクラ・・下から順番に習った箇所を探ってゆっくりと解放して開いていくことを意識していく。


ゆっくりと暖かな魔力にチャクラに貯めて少しずつ押し広げて・・・。チャクラから身体へ巡るように・・。魔力を通す道を広げて・・。


だんだんと魔力が使い捨てカイロ並みに温かく感じられるようになった頃、ついに軽く組んだ掌にゆっくりと水の球を具現化することができた。






はぁ・・はぁ・・どうやらやっと飲み水は確保できたようね。


掌に集まった水球をコップにそっと移し替えて飲んでみると湧水を飲んだ時の様に澄んだ水の味がした。




ふぅー。おばぁちゃんがんばったよ!孫ちゃん!!




身体はまだ疲れていないけれど集中力が疲れてきていたので今日はゆっくりここで休もうとのんきにテントの準備をしている翼であった。




多分だけど、あの神様なら急に何かに襲われるような場所に転移はさせないと思うのよね。




なんともご都合主義な思考で納得した翼は、少し歩いて見つけた長い棒を真ん中に立てテントの端を石で固定してテントを張ってアイテムボックスに入っていた魔法の絨毯(防水+乾燥機出したて)とやらを下に敷いてテントの中で落ち着いて座っている。


いやぁ~この絨毯なに?最高よふわふわじゃないの!乾燥機出したてって一番好きなやつよ!ふかふかのほこほこの・・フカフカノ・・zzz




流石オバタリアン(死語)精神をもつ翼ちゃん。まだ地球でいうところの14時くらいだが、確かに若い神様が気を利かせて魔物の少ない場所へ転移させてるとはいえ本当にすや~っと眠ってしまっている。




大丈夫か?おばぁちゃん。。




なんとそのまま夜明け前くらいまでぐっすりと眠ってしまっていたのであった。

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