第22話「にらめっこ」
「ねぇ、面白いことしない?」
「ん? 面白いこと?」
「うん、テレビ見るものつまらなくて。何かないかなぁ」
ある日の午後、彼女がそんなことを言った。突然何かを言い出すのは彼女の癖というか、もはや特技といってもいい。それは言い過ぎかな。
「そうだなぁ……あ、にらめっこしない?」
「にらめっこ? ふふふ、可愛いところあるね、よしやろう」
なぜ自分でも『にらめっこ』が出て来たかよく分からないが、そういえば小さい頃によくやっていたなと思った。
俺と彼女は正座をして、向かい合って座った。
「「にらめっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ」」
未だに『あっぷっぷ』というのがよく分からないが、とりあえずやってみる。彼女は口角を上げて目線を細めてなんだか面白い顔をした。俺も負けじと面白い顔をする……と見せかけて、真顔を見せた。笑顔でもなく、怒った顔でもなく、ただただ真顔だ。
「……ぷ、くくくく、あっはっは、なんで真顔になるのよー」
「あ、笑ったな、なんかこれが逆に面白いんじゃないかと思って」
「あははは、それ反則だよー、面白い、あはははは」
俺は真顔を続ける。彼女はツボにはまったようで、笑い転げている。
「あー笑った、こうして笑ってる時が一番幸せなのかもしれないね」
「そうだな、そういう時間も必要なのかなって思うよ」
傍から見ればなんだこのバカップルはと思われるかもしれない。でも笑顔になるこの時間が大事なんだろうなと、俺も彼女も思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます