第21話「お花見」

 満開の桜、美味しいお酒、実に合う。

 私は今日、お花見に来ていた。世界で流行した感染症も、だいぶ落ち着いてきたのかマスクも必須というわけではなくなった。それでも病院などではマスクをつけないといけないし、流行前に戻るのは無理かなと思っている。

 それでも、こうして桜を見ながらマスクなしでお酒が呑める。とてもいいことだなと思う。マスクをしていると表情は見えないし、飲食はしにくいし、視界が遮られている気がするし、あまりいいイメージはなかった。みんなはどう思っているのだろうか。


由佳ゆかー、なんだか嬉しそうだねー」


 友達が私にお酒を注ぎながら言った。桜の下では日本酒がいいのではないかと思って、今日は日本酒を呑んでいる。スルスルと入っていくので、気をつけなければいけないが、美味しいものは美味しい。そんな嬉しい気持ちが顔に出ていたのだろうか。


「うん、こうしてまたみんなでお花見できるからね、なんかテンションも上がるというか」

「ほんとだねー、なんでもかんでも自粛だったもんねぇ、もう戻りたくないよー」

「うんうん、でも分からないよね、あれも急に流行ったし、これから先何が起きるかなんて誰にも分からない」

「まぁそうなんだけどさー、やっぱりお花見は楽しみたいじゃん? できれば自粛しないで済むようなやつでお願いー」


 友達がそんなことを言うので、私は思わず笑ってしまった。

 あ、コップの中に桜の花びらが一枚舞い降りた。それもまた風情があるようで、私はあたたかい気持ちになった。

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