第20話「川」
ベランダから見える川を見るのが、僕は好きだった。
今日もボーっとしながら川の流れと川の向こう側に広がる景色を眺めていた。こちらは住宅街だが、川の向こうは運送会社の倉庫などが並んでいる。先ほどもトラックが一台、吸い込まれるようにして倉庫に入っていった。
左側から一台、車がやって来た。ここから見ても分かるくらい、ゆっくりとしたスピードだ。車の色で自動車教習所の車だということが分かった。
おそらく若い子が頑張って練習しているんだろうな、そんなことを考えているとまた左側から一台車がやって来た。白いワンボックスカーらしきその車が、前の自動車教習所の車に追いつこうとしている。後ろのワンボックスカーの運転手はイライラしているのかな、広い心で許してやってほしいな、そんなことを僕はボーっと考えていた。
二台の車が通りすぎた後、右側から人がやって来た。ランニングをしているお兄さんかおじさんか、年齢は定かではないがたぶん男の人だろう。走る姿を見て、僕も運動をしなければいけないなと思った。
雨がたくさん降ると川が増水することがある。ごく当然なことだ。しかし氾濫してしまうくらいまで増えてしまうとこちらは困ってしまう。実際に数年前に氾濫して、このあたり一帯が水浸しになったことがあった。
ニュースでは梅雨入りしたと気象予報士が話していた。また雨の日が増えるのだろうか。そうなったら嫌だなと思ったが、人間とはなんて勝手な生き物だろうか。今はおだやかな川の様子を見ながら、僕は目の前に広がる景色を楽しんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます