第19話「創作意欲」
暖かくなってきたからか、創作意欲も出てきたような気がする。暖かいのはそんなに関係ないかな、まぁいいか。
私は椅子に腰かけて机でノートとにらめっこしている。ペンをくるくると回してみるが、それで言葉が浮かんできたら何も苦労はしないものだ。
何を書いているかというと、曲の歌詞だ。私は大学でバンドを組んでいて、ボーカルと作詞を担当している。作曲はギターの子がやってくれたり、自分も手伝ったり色々だ。
デジタル社会となった今、スマホやパソコンがあるが、私は作詞をする時はノートに書くと決めている。そちらの方がアイデアが浮かんでくるというか、ちょっとした私のこだわりだ。
しかし今日はせっかく出てきた創作意欲とは裏腹に、いい歌詞が思い浮かばない。おかしいな、いけると思ったんだけどな。
創作の種は色々なところに散りばめられている。散歩をしている時、お風呂に入っている時、ご飯を食べている時、パッと浮かんだ言葉をメモすることを忘れない。
そのメモを見ているのだが、うまく繋がらないような状態になっていた。ちょっと休憩した方がいいのかな、私はノートから目をそらしてスマホを手に取った。今日もSNSではくだらない炎上ネタでみんなが盛り上がっている。もう少し違うことをやればいいのにななんて思っても、口には出さない。
その時、一つの投稿が目に入った。
「……そっか、今日は母の日か」
ふとカレンダーを見ると今日は五月の第二日曜日、母の日だった。母には事前にカーネーションを贈っていたから問題ない。
「……待てよ、母の日……お花……愛情……感謝……そうだ」
私はメモをもう一度見直して、そこに『花』『愛情』『感謝』と書き加えた。何かが繋がりそうな気がする。私は思いついた歌詞をつらつらとノートに書いてみた。うん、サビは悪くないのではないだろうか。
「これ、いいかも。ちょっとメンバーに送ってみるか」
私はスマホを手に取って、今書いた歌詞を打ってバンドメンバーに送った。どんな反応が返ってくるだろうか。
ちょっとしたことで言葉は浮かんでくる。まるで言葉遊びみたいだ。私はそれが好きだったのかもしれないなと思った。
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