第18話「部長として」

「おい、そこ! ボーっとしてるんじゃないぞ、集中するんだ!」

「す、すみません!」


 インターハイ予選が近づき、自然と練習に力が入る。俺はサッカー部の部長として、そして三年生最後の大会ということで、絶対に勝ちたいという気持ちがあった。

 今は後輩が練習中にボーっとしていたので、注意したところだ。さすがにうざいと思われるかなと心配になるが、練習もしっかり本気で取り組まないと試合に勝てない。その気持ちは後輩にもしっかりと持ってもらいたいため、注意もするのだ。


「よう、中川なかがわ気合い入ってんな」


 そう俺に言ってきたのはクラスメイトでもある火野ひのだった。火野は足を怪我していたので最初は帰宅部だったが、一年生の秋からサッカー部で一緒に頑張ってきた。こいつがいなかったら今の俺はいない。ある意味恩人でもある。


「ああ、最後の大会が近いからな、つい力が入ってしまうというか」

「あはは、まぁ気持ちは分かるぜ。これまでみんなで頑張ってきたんだ、勝てるって信じないとな」


 火野がぐっと拳を握った。たしかに技術的にも上手くなりたいが、精神的な面も大事だ。勝てるって信じることか、たしかに火野の言う通りだ。


「そうだな、でもちょっとみんなに言いすぎてるかなって心配になるんだが……」

「なんだよ、部長が弱気でどうするんだよ。大丈夫だよ、みんな中川についてきてくれてるからな。堂々としてればいいんだよ」


 火野がケラケラと笑って俺の背中をポンポンと叩いた。そうか、弱気になってはいけないな。俺がしっかりしないとみんなも弱気になってしまう。気合いを入れなおそうと思った。

 火野やみんなと一緒に全国に行きたい。その思いで俺は今日もボールを追いかけていた。

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