第15話「恋は突然に」

「お前、八組の九十九つくもさんのことが好きなんだろ?」


 昼休み、友達と話していると、急に友達がそんなことを言った……って、え!? い、いきなり何を言っているのだろうか。僕は何も言っていないのだが……あれ? でも以前そんなことを言ったような気もする。よく分からなくなっていた。


「え、あ、い、いや、好きとかそういうわけでは……」

「なんだよー隠さなくていいぞー、ああ、恋をするっていいもんだよなー」


 友達がうんうんと頷いて僕を見ている。なんだかおじさんくさい。本当にこいつと同じ年なのか心配になってきた。

 ……そう、僕は九十九さんという女の子に恋をしていた。九十九さんは生徒会長で、みんなの前に出ることが多い。一般人の僕は話したことはほとんどない……のだが、一度だけ玄関で九十九さんがハンカチを落として、僕が拾って声をかけると、「ありがとうございます」と笑顔で言ってくれた。僕はその時恋に落ちた。単純な男だと思われるかもしれないが、それでも全然かまわない。彼女の笑顔が頭から離れなかった。


「まぁでも、九十九さんは生徒会長だからなぁ、俺らなんか眼中にないかもなー」

「ま、まぁ、それは分かってる……」

「ふっふっふ、大丈夫だよ、それでも諦めないのが男ってもんだろ」


 友達はそう言って僕の背中をバンバンと叩いた。うーん、もちろん諦めるつもりはないのだが、同じクラスになったこともなければ、話したのも一回だけ。やっぱり不安にもなるわけで。

 ……いや、不安になっている場合じゃないな、こいつみたいに気楽に考えるのがいいのかもしれない。僕はいつかこの気持ちを九十九さんに伝えたい。ダメだったとしてもいい。その時までこの気持ちは大事に持っておこうと思った。

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