第12話「名前」
「私の
「へー、いいじゃん、可愛い名前だと思うよ」
「そうかなぁ、なんか古臭くない? 昭和って感じするし。私は平成生まれだってのに」
私はフライドポテトを食べながら、友達に返事をした。私は自分の名前があまり好きではなかった。三月生まれだから『弥生』だなんてストレートすぎるし、もっとひねってくれてもよかったのにと思っていた。
「そんなことないよ、可愛いよ。私なんて
「あはは、そうなんだね、それも面白いじゃん」
「うーん、もっと可愛い娘のためにパクらないで考えてほしかったなーと思うところはあるよ」
友達はオレンジジュースを飲みながら、あははと笑った。そうか、みんな何かしら自分の名前に思うところはあるのか。自分だけじゃないと思うと、少し心が軽くなった気がした。
「そっか、もしかしたらみんなそれぞれ考えることはあるのかもね」
「そーそー、だからあんたも古臭いとか言わないこと、弥生ちゃん」
「あっ、ちょっとバカにしたでしょー」
私がそう言うと、友達が笑ったので、私もつられて笑った。
三月になり、少しずつ暖かくなってきた。誕生日ももうすぐだ。春の足音とともに、私も心を入れ替えようかなと思った。
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