第11話「アイドル」

 ステージ上の彼女は、とても輝いていた。

 学校ではいつも明るく元気な彼女が、その笑顔でみんなを明るい気持ちにさせてくれる。僕は何度もライブに来ているが、彼女の輝く姿を見るのが大好きだった。

 彼女はメロディスターズというアイドルグループに所属している。五人組のグループで、ライブを行ったり、たまに地方のテレビやラジオにも出たり、忙しい毎日を送っている。

 それでも学校はちゃんと行きたいと言っていて、昔から学校を休むことは少なかった。中学三年の時、彼女と一緒の高校を受験することが分かった時は、僕は飛び上がるくらい嬉しかった。また彼女のそばにいることができる。その思いで勉強も頑張った。


「あ、天野あまのくん! 今日も来てくれてありがとう!」


 メロディスターズはライブ後に握手会が行われることが多い。もちろん今日も行われていた。僕はいつも彼女のところに行って、握手をして少しだけお話する。いつも学校で会っているが、アイドルとしての彼女とお話をするのも好きだった。


「ううん、今日も、か、可愛かったね。とっても輝いていたよ」

「ありがとう! えへへー、なんだか照れちゃうな。あ、ねえねえ、今度文化祭があるね、一緒に見て回らない?」

「え!? あ、う、うん、僕なんかでよかったら、ぜひ……」

「うん! あー楽しみだなー、天野くんと一緒にいるとなんだか楽しくて!」


 そこまで話したところで、スタッフさんに促されて僕の番が終わった。彼女は「あっ……」と、ちょっと寂しそうにしていた。

 一緒にいると楽しい……か。僕は嬉しさのあまり飛び上がりそうになったが、ここは外だと言い聞かせてやめておいた。

 彼女の手の温もりを思い出しながら、僕は家路についた。

 

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