第7話「暗闇」

「あ、あれ……?」


 部屋でテレビを見ていると、ふっと明かりが消えた。テレビも蛍光灯も全部だ。夜なので、私は真っ暗闇に包まれた。

 おかしいなと思って立ち上がるが、見えない。今見えていた景色はどんなものだったっけ。必死に思い出そうとするが、意外と覚えていないことに気がついた。


「いたっ!」


 何かに足をぶつけた。すねのあたりに痛みが走る。そうだ、スマホの明かりで何とかなるのではないかと思い、スマホを探す……が、そのスマホがどこに置いてあるのか分からない。見えない暗闇の中あちこちに手を伸ばしてみる。


「にゃん!」


 その時、何かを踏んだ。たぶんうちの猫だろう。私の近くで寝ていたことを思い出した。


「あ、ごめん! ハチ!」


 そう、うちの猫は『ハチ』という。忠犬ではない。ハチを踏まないようにそーっとすり足で動きながらスマホを探す。あ、それらしきものに触れた。私はそれを手に取り画面をタップする。ぼやっとスマホから明かりが出て少しだけ安心する。


「あーなるほど、停電か……」


 スマホでそのままニュースを見てみたら、大雨で停電が起きているとあった。たしかに外はずっと雨の音がする。夏にたまにある大雨の日かなと思った。

 うーん、どうしようもないけど、早く電気がついてくれないかな。何かと不便だ。現代人は電気がなくなったら生きていけない気がする。私はぼんやりとスマホの画面を眺めていた。


「にゃーん」


 ハチが私の足にすりすりと頭をつけてきたので、ハチの頭をなでてあげた。猫は暗闇に強いと聞くが、今はどうなのだろうか。

 暗いと何だか気分も落ちてしまう気がした。私はハチと一緒に暗闇でぼんやりとしていた。

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