第5話「勝負」

「なーなー、大島おおしまは数学何点だった?」


 給食を食べ終えて昼休みになり、さて何をしようかと思っていると、隣の席の真田さなだくんが話しかけてきた。


「な、何よ、人に聞くのなら自分から言いなさいよ」

「おおう、相変わらずこえーなー、俺は九十二点だった! 大島は?」

「え!? あ、う……きゅ、九十点……」

「え、マジ!? よっしゃ、大島に勝ったぜー!」


 真田くんがガッツポーズをして喜んでいる。うう、また負けてしまった。ここ最近真田くんに勝った記憶がない。おかしいな、ちゃんと勉強しているはずなんだけどな。


「ま、まぁ、たまたま運が悪かっただけよ」

「あはは、何の運だよー、さて、俺が勝ったし大島に何してもらおうかなー」

「え!? な、何よそれ、何も言ってなかったじゃない」

「えー、たまにはいいじゃん。そうだなー……」


 え、何? 何か恥ずかしいことでもさせられるの? それだったら断ればいいだけか。私は真田くんの次の言葉を待った。


「……あ、そうだ、じゃあさ、一緒に遊びに行かね? カラオケでもどうだろ?」

「……へ? カラオケ?」

「ああ、こう見えて俺歌うの好きだからさ、どうだ?」

「あ、う、うん……いいわよ」

「よっしゃ! 決まりだなー、あー楽しみになってきた!」


 嬉しそうに笑う真田くん。も、もっと違うことかと思っていたのに、カラオケ……?

 あ、あれ? でも、なぜか嬉しくなってきた自分がいる。おかしいな、なんだろうこの気持ち……。

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