第3話「バイト」

(あー、マジやってらんない、あの男最っ低、ムカつくなー)


 心の中ではこんなことを考えながら、私はバイトで接客をしていた。ここは駅前にあるハンバーガーショップ。高校が近いからかお客さんは高校生を中心に若い人が多い。まぁ私もまだ二十歳になったばかりだけど。


(だいたい何なの、デート当日になってドタキャンなんて、ありえないわよ。二時間も待った私がバカだったわ)


 そう、昨日はデートの予定だったのだが、彼がすっぽかした。そのことがイライラして顔に出てしまいそうになる。いけない、今はバイト中、笑顔にならなきゃ。

 そう思っていると、お客さんが来た。高校生の男女だ。


「いらっしゃいませー、店内ご利用でしょうか?」


 私は一生懸命笑顔を作って接客する。心の中はイライラしつつ笑顔になる選手権なら勝てそうな気がした。


(高校生のカップルかな……それにしても二人とも背が高い……男の方は爽やかでイケメンね、あ、女の方もアイドルかモデルみたいに綺麗……くそ、なんか負けた気がする)


 笑顔を崩しちゃダメだ、そう思うとなんだか変な笑顔になっている気がする。だ、大丈夫かな、さっきまでの自信はどこへやら。


「――準備しますので、右のカウンターの前でお待ちください」


 注文と支払いが終わると、男の方が「お願いします」と言った。くそ、カッコよくて礼儀正しいとか反則かよ、誰かさんに見習ってほしいくらいだ。


「――お待たせしました、ごゆっくりどうぞ」


 私がそう言うと、今度は女の方が「ありがとうございます」と言った。くそ、女も美人でいい子なのかよ、イライラしている私がバカみたい。

 仲が良さそうな二人を見て、私は羨ましかったのかもしれない。

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