第4シーズンだよ

階段の怪談

「やあ、アッシだよ。ハオちゃんが学校の階段から第4シーズンをお届けするよ」


 遂に第4シーズンまで来ました。

果たして、ここまで精神崩壊せずに読み続けてくれる読者もののふはいるのでしょうか?

 ですが、後少しの辛抱です!

だって、このシーズンがファイナルシーズンになりますので。

 皆んなには内緒ですよ?


 それは置いておいて、何故ハオちゃんは階段を一人で彷徨ってるのでしょう?


「この階段には恐ろしい噂があるんだよ。ヨクボウの仕業かもしれないんだよ」

 我らがヒロインは、今日も皆んなの為に身を粉にして働きます。それにしても、恐ろしい噂ってなんでしょう?


「マイちゃんも言ってたんだよ。黒い影が、人間離れした速度で移動するのを見たって…… この学校の七不思議のひとつ、『階段の徘徊者』だよ」

 きゃあぁ! ジャンルを『ホラー』にしなければいけません! そんな恐ろしい展開の中、ハオちゃんは堂々と階段で踏み台昇降を繰り返しています!!


 –––– その時! ハオちゃんの視界を横切る黒い影が!!


–––––––––––––––––––––––––––––––––––––

以下、グロテスクな表現を含みます。

苦手な方と食事中の方はブラウザバックを

推奨します。

–––––––––––––––––––––––––––––––––––––





…… いいですか?




……後悔する準備は出来ましたか?




……では。





 横切る影、その人智を超えた加速性能。

それを実現する低重心と、大気の摩擦を抑えるべく計算し尽くされた空力抵抗ボディ。

 また、目を見張るのは尋常ではない旋回能力と縦横無尽の機動力。

 極め付けはツヤツヤに煌めく黒い外観。

そう、奴です。『G』です。


「ぴぃやぁぁああああ!!!!」

階段にハオちゃんの絶叫が轟きました。

 ヒロインの絶叫シーン。皆様、今がシャッターチャンスです。


 しかし、不幸中の幸いで、ハオちゃんの絶叫は魔砲となり『G』を跡形も無く消滅させたのです。

「G•退•散んんんんんだよぉ!」


 こうして、今日も古墳中学校の平和を……

おや?おやおや? ハオちゃんに忍び寄る黒い影がいますね? なんだかモヤのように揺らめいている人影です。

『うらめしや〜〜』

 その人影は、おかしな事を言いますね?

学校のうら飯屋めしやではありません。スポーツ用品店があるはずです。

 ハオちゃん、間違いを正してあげましょう!


「裏はチャウチャウ専門店だよ?」

ニッチです! ニッチな産業にはビジネスチャンスがあると、古本で買ったビジネス書に書いていました!


『チャウチャウ。あ、チャウチャウとちゃうで? 『恨めしや』って事やで?』

 なんだ、ただのフレンドリーな幽霊のようです。

 –––– 幽霊が出ました!!!


『おおおおお? ハオよ。ヨクボウの気配がするぞう』

 これには流石に埴輪の髪留めもガクブルがノンストップです。

 それに対して毅然と立ち向かうハオちゃんの勇ましき姿は感涙モノですね!


 ……いや、ハオちゃんは立ったまま気絶しています! これがピンチってやつです!


「ハオちゃん!どうしたのですわ!?」

 おっと、ここでメオちゃんの登場です。

我らの、ご都合主義上等の現代ファンタジーが戻って来ました!


『恨めしや〜〜』

幽霊は同じ言葉を繰り返しています。

 そのボキャブラリーの無さに戦慄すら覚えます!

「なるほどですわ。これが『廊下の徘徊者』の正体ですわね? いきますわよ! 変身ですわッ!」

 オカルトマニアの皆さま、お待たせしました! メオちゃんの変身はきっと萌える巫女さんとか…… はぁ?!

 なんですって?! メオちゃんは音響測定士に変身しました!! これは一体?


「やっぱり、この数値……19Hzの音が発生してますわ。つまりは、これが幽霊の正体ですわね。……隠れていないで姿を見せるのですわ! 真の黒幕、ヨクボウの生徒!!」

 ああ、メオちゃんは幽霊を無視して階段の上を指差します。そこには男子生徒の姿が!!


『やるなぁ、魔砲少女ぉ。何故気づいたんだぁ?』

 その男子生徒は何やら機材を弄りながら不敵な笑みを浮かべています。

「簡単な事ですわ。昼間から幽霊は不自然、それに近代科学で分かった事がありますわ。

 幽霊をよく目撃する場所には19Hzの音が発生している事が多いと」

 ヨクボウの男子生徒は『チッ』と舌打ちします。どうやら図星だったようです。


「人の聴力で聞き取れるのは20Hz〜20000Hzですわ。その範囲外の音は聴き取れなくても、脳は認識している。これが幻覚を生むのですわ」

 論破です!流石はメオちゃん! 頭脳派キャラが確立する瞬間に、我々は立ち会っているのです!


『魔砲少女め、生意気なぁ! 俺は科学部なんだ。素人に負けるものかよ!』

 科学部ヨクボウのプライドは風前の灯火です! メオちゃん、やっちゃって下さい!


「ヨクボウ、喰らいなさい! 魔砲!『アイプチ二重のアルティメット極み!!」


『うわぁぁああ! 俺の19Hz発生装置がぁああ!!』

 メオちゃんの魔砲でいかがわしい機械は破壊されました。

 こうしてヨクボウの野望は打ち砕かれたのです。

「悪•鬼•殲•滅!」

 メオちゃんの勝利宣言の中、ハオちゃんが固まっていたのは、共振による行動不能という事にしておきましょう。


 こうして、今日も古墳中学校の平和は守られました。


            –––– つづく

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