技術教室より生まれし者

 皆さんご機嫌いかが? 女庭メオですわ。

前回は背筋も凍る展開でしたわね。でも、まさかハオちゃんが行動不能になるなんて……

 音響という弱点が露呈してしまいましたわ。

 と、いうわけで今日はローテーションを考察しますわ。


【ローテーション】

 和訳すると、交代や循環を意味しますわ。

野球でチームの投手を起用する順序を指したりもしますわね。

 そろそろ、本作のメインヒロインもローテーションするべきですわ。


【ローテーション】

 語源はラテン語での『車輪』ですわ。

漢字は似ていますが、埴輪は関係ありませんわ。


【ローテーション】

 木の周りを走り回って、バターになる虎の物語を思い出しましたわ。

 元はヘレン・バンナーマンが、自分の子供たちのために書いた手作りの絵本だったのですわ。

 タイトルを明かさないのは、この絵本が販売中止になったからですわ。

 表現の自由が、表現の規制に負けた歴史的瞬間ですわ。


 それでは皆様、本編スタートですわ。



「やあ、アッシはハオちゃんだよ。埴輪な魔砲少女だよ。今日は技術教室でラジオを作るよ」

 我らがヒロインは、はんだごてを手にしています。それは、魔法の杖を操るが如く軽やかに舞います。


「コラ、はにわハオ。はんだごてを振り回すと危ないぞ」

 これは危ないですね。ハオちゃんの超絶技巧に先生が魅了されるところでした。


 そんな中、隣の男子生徒はを一心不乱に動かしてニヤニヤしています。

 溶かした『はんだ』で何か作ってますね?


 –––– これはッ?! いけません!

男子生徒が作っているもの…… それは立派なメタルス◯イムです! 商標パテントを侵害する狂気の沙汰です!


『おおお…… ハオよ。 ヨクボウが溢れているぞぉ』

 安全第一、埴輪の髪留めがヒヤリハットな声を上げました。


「マズイよ。あんなもの完成させると、賠償金請求される可能性があるよ。 ハオちゃん変身だよ!」

 さあ、埴輪の髪留めにタッチして、ハオちゃんが逆光に包まれます!

 今日は、何が出るかな?何が出るかな?


「ハオちゃんはスポ根アニメの主人公だよ!」

–––– 熱血漢ねっけつかんです! 略して『血漢ちかん』です!

 そのほとばしる情熱に潜むのは瞳の中の炎か? コートに包まれた裸体かは皆様の想像にお任せします!


『出たな、魔砲少女。俺はメタ◯スライムを完成させて、この物語を打ち切りにしてやるぜぇ』

 なんと恐ろしいヨクボウなのでしょう!

でも大丈夫!パクリと言わなければいいのです。そう! オマージュです!!


「ヨクボウ、その技術…… お前には才能があるんだよ! 一緒にインターハイを目指すんだよッ!」

 熱っついですね! でも中学生はインターハイに出れません。あと3年待ちましょう。


『な…何?! お、俺は敵なんだぞ! お前…… わかって言っているのか?!』

 ヨクボウの男子生徒は照れています。

誰しも認められると嬉しいものです!


「そうだよ。で……そんなに美しい芸術を作れるのは君だけだよ! 見事な『う◯こ』だよ!」


『う◯こじゃねぇぇええええ!!!』

 彼の顔は真っ赤になっています。そんなに照れなくてもいいのにね♡ ウブな中学生男子はカワイイものです。


『絶対に許さん、魔砲少女め! お前のラジオをメチャクチャに付けしてやるッ!』

 ああっ!ハオちゃんのラジオがピンチです! ヨクボウの魔の手はんだごてが迫ります!!


「このッ!…… わからず屋だよおぉぉっっっ!」

 刹那、ハオちゃんの熱い友情の拳がヨクボウに炸裂しました!

「アッシは…アッシは!! お前と一緒に輝く夢を見たいんだよッ!!」

 激アツです。その温度は183℃を超えました!! そう!はんだの融解温度です!!


『な!何ィ?! 俺のメタル◯ライムが…… 溶けていくッッ!!』

 しかし、そこにはハオちゃんの熱血的な愛情が隠されていたのです。それに気がついたヨクボウは『はっ!?』と声を上げました。


『魔砲少女…… これは、『はぐれメ◯ル』じゃないか! 俺の作品のレベルを…… 経験値を上げたのか? …… 何故!敵に塩を送るような真似を?!』

 ヨクボウの問いに対して、ハオちゃんは微笑みました。そして熱く語ったのです。

『う◯こは表現規制が掛かるけど、ゲロだったら大丈夫だよ!!」


『ゲロじゃねぇえええ!! 信じた俺が馬鹿だったぁぁああ!!』

 はんだのヨクボウは断末魔と共に消滅しました。

「悪•霊•退•散!!」

 ハオちゃんは勝利宣言と共に、の成れの果てを拾い上げます。

「ヨクボウ…… この作品、よく見たらカレーみたいだよ」

 その弔いの言葉は、きっとヨクボウに届いた事でしょう。

 こうして今日も、魔砲少女は古墳中学校の平和を守りました。


           –––– つづく

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