劇場版 不条理なる愛国者(パトリオット)②

『タケシ! しっかりしてッ!』

 ここはタケシの部屋。室内のベットの上に寝かされたタケシの肩を、少女が不安そうに揺すっていた。

 残念なのは目覚めないタケシの容態か、膝枕されていない事かは、読者の判断に委ねるとする。

『そんな…… あの魔砲少女達、タケシになんて酷いことを。許せないわ』

 少女は自分の無力さに唇を噛み締めていた。


「う……うん?」

少女の想いが通じたのか、タケシはうっすらと瞼を開く。そして彼女を見て言った。

「君は……誰なんだい? 僕は……?」


 今までの激闘による反動か? 神の悪戯か? タケシの記憶は徐々に消えゆく定めにあるようであった。


『タケシ! ああ、なんてこと。アナタは悪と戦う正義の…… いいえ、私のヒーローよ!

…… 私の名前も思い出せないの? 私は………』

 少女は堪らず嗚咽を漏らしはじめた。

この悲劇はいつ終わるのか。 誰が止めるのか?

 この不条理なる物語は、いつまで続くのだろう……



「やあ、アッシだよ。ハオちゃんは給食を食べるよ。白ごはんと牛乳の組み合わせは最高だよ! でも……」

 これは酷い。ハオちゃんは大好きな給食に手をつけていません。それ程に昨日の戦いは辛いものだったのでしょう。

 心が傷付いた魔砲少女。彼女を救うには、皆さんのコメントが必要です!

 さあ!コメントするのです!!


「いいんだよ。アッシは魔砲少女になった日から心に決めているんだよ。孤独な戦いと、自給1000円貰うって」

 強欲です! そんなお金ウチには無いよ!って言葉が、作者の脳内リフレイン中です。


「はにわハオ? どうした、体調が悪いのか?」

 担任の先生は「辛いなら帰っていいぞ」と、ハオちゃんに語り掛けます。

 そんな忖度が跋扈ばっこする中、ある生徒がグラウンドを指差し叫びました。


「わあ! 他校の生徒がグラウンドに何か書いてるよ!! カチコミならぬカキコミって訳だね!」

 ふん、上手く言ったつもりでしょうが魔砲少女のギャグには到底及びません。

 さて、その不審な他校生徒は何を書いているのでしょう?


「あ……アイツは、昨日のカメンマイダーだよ!!」

 そうです!その不審者は昨日、激闘を繰り広げたカメンマイダーのタケシだったのです。

 彼は白線引きを駆使して、グラウンドにメッセージを残しました。


【はにわ怪人ハオに告ぐ 16じ 弥生公園で待つ カメンマイダーのタケシより】

 なんて事!! 白線引きでここまで高度な漢字を書けるなんてッ!


「ハオちゃん! 奴ですわ。 これは絶対に罠ですわ!」

 ハオちゃんの隣に駆け付けたメオちゃんは真剣な表情です。

「うん、メオちゃん。きっとそうだよ。でも、アッシは一人でも行くよ。この事件にはきっとヨクボウが絡んでいる気がするんだよ」

 今回も劇場版、ヒロイン上方修正が入りました! これで一件落k……

「行かせませんわ! タケシと名乗るあの男、普通の人間ではありませんわ」


 そんな心配をするメオちゃんに、ハオちゃんは微笑み掛けました。このショットは未来永劫に語り継がれる名シーンになる事でしょう。

「埴輪なアッシはハオちゃんだよ。心配いらないよ」

 –––– タイトル回収ですって?!

ま……まさか! 終わらせると言うの!

 魔砲少女の闘いをッ!


「わかりましたわ。なら、私も一緒に行きますわ」

 メオちゃんは呆れた様子ですが、その瞳の中には熱い友情が宿っていました。



 –––– そして、訪れた決戦の舞台。

            弥生公園。


『来たか……埴輪怪人ハオと、その仲間。正々堂々と勝負だ』

 そう始めに口を開いたのはタケシでした。

その後ろ、木の影では少女が祈りのポーズを気取っています!


「タケシくん、とっても顔色が悪いんだよ。きっと誤解しているんだよ、話し合うんだよ!」

 ハオちゃんの声に耳を貸さないタケシは、『問答無用!』と、変身しました。


「わからずやだよッ!」

ハオちゃんも埴輪の髪留めに触れました。

 そして、「私も加勢しますわッ!」メオちゃんも赤い首飾りに触れます。

 変身する二人の魔砲少女を眩い光が包みました!


「ハオちゃんはワトスンだよ」

「メオはホームズですわ」

 最強のコンビが爆誕です!


『さあ、行くぞッ! マイダーパンチッ!』

カメンマイダーは拳を大きく振りかぶります。そのオーバーリアクションが、熱血の証明と弟が言ってました!


「ワトスンくん。あの軌道は君を狙っているみたいだね。ですわ」

「ホームズ先生。しかるに回避を行います。だよ」

 見事な連携プレーがカメンマイダーのパンチを空振りさせました。これはチャンス!大きく態勢を崩した彼は隙だらけです。


「ワトスンくん。思うに君の攻撃は85%の確率で命中する。躊躇わず打つがいいですわ」


「ホームズ先生、承知しましただよ。でも、アッシの攻撃は……」


 なんと!ハオちゃんはカメンマイダーを正面から抱きしめました! これはッ!掟破りの背骨折りバックブリーカーでしょうか?!

 いえ、違うようです。 ハオちゃんは優しく抱きしめて呟きました。

 ハオちゃんの姿が、中年オヤジのワトスンである事が悔やまれます!


「カメンマイダーのタケシくん。君とは戦いたくないんだよ。 だって、君からも正義の気持ちが伝わってくるんだよ。それに、このヨクボウの気配……… それはタケシくんじゃなくて……」

 ハオちゃんは鋭い視線を背後に向けます。

「ホームズ先生!お願いしますだよ!!」


 おっと、ここで原作通りにホームズ先生に華麗な推理のパスです!

「承知しましたわ。 今回のヨクボウの正体…… それは、アナタですわ!!」

 メオちゃんは『ビシッ』と指差します。

その先には………

       –––– つづく と書いてます。

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