劇場版 文化祭の破壊者(デストロイヤー)③

『ウヘヘヘ。魔砲少女ぉ。おで、ねり消しのヨクボウ。おで、強い』


「邪魔ですわ! 悪•鬼•殲•滅! メオ☆クラッシュ目 潰し!!」


『もぶぶぶぅぅ!!』


 地下ボイラー室に向かう途中、更なるヨクボウが二人を襲います。 しかし、悲しみを乗り越えた魔砲少女達の敵ではありません。


「次から次へと…… 作者の没ネタはキリが無いんだよッ!」

 

 そう、彼女達が進むのは荊棘いばらの道。されど、魔砲少女の宿命さだめが脚を前へと突き動かします。

 一説には、皆様が休み明けで会社に向かう足取り。アレと同じという噂があります。


 そうこうしているうちに、二人は地下への階段に辿り着きました。その陰湿で不気味な闇は、まるで誘っているかの様にポッカリと口を開けています。

 

「ハオちゃん!見えましたわ。地下ボイラー室ですわ! ……ハオちゃん?!」

 なんということでしょう!!

メオちゃんが振り返った時、そこにハオちゃんの姿はありませんでした!

 まさか、ヨクボウの罠に、そんな……


「お待たせだよ。トイレに行ってたんだよ」

 ––––トイレタイムでした!!

『お花摘み』や『お化粧直し』など隠語を使わないのは、ヒロインの正々堂々とした気概の表れですね!

 トイレのジェット水流の様に、物語は加速していきます!!


「メオちゃん、行くんだよ。覚悟はいいかだよ?」

 ハオちゃんはラスボスの前に現れる、あの名言をマイルドに尋ねました。


『ここから先は戻れません。進みますか?』

 はい

 いいえ

▶︎やっぱり給食食べてセーブしてからだよ


『ふざけるなですわ』

▶︎はい

 はい


「ええ、よろしくてよ。行くのですわ!」

 しかし…… 意を決してドアノブを回すメオちゃんの表情が凍り付きます。

「か……鍵がかかっていますわ!!」


 何という事でしょう! 

施錠しているとは、なんて防犯意識高い系の学校なのでしょう!

 しかし、それが生徒を守ると同時に、ヤンチャな生徒の冒険心をへし折って来たのです!

 ですが、彼女達は魔砲少女。これしきの困難などお茶の子さいさいです!


「スットコドッコイヤァ!」

ハオちゃんは、『デストロイヤー』っぽい魔砲をブッ放し、扉を吹き飛ばします。

 これが古の魔砲。『アバカム』だと、一部界隈で囁かれています。


 刹那、ボイラー室から溢れ出す瘴気。

その重苦しい重圧に、奥に潜む敵の強大さが伝わってきます。

「メオちゃん…… アッシが先に行くよ?」

「いいえ、私がいきますわ」

「アッシがアッシが」

「私が私が」

 いけません!この伝説のネタは三人でなければ成立しません!! 物語も進みません!! そんな物語の危機的状況の中、福音が舞い降りました。


  『早よ、進めんかい!!』

 

 これは読者の声に他なりません。

ですから、ボイラー室には二人同時に踏み込みました。


 –––– そこに、待ち受けていたのは……


『待っていたよ。魔砲少女たち。 なかなか入って来ないから、帰ったらどうしよう?と、心配していた所だ!』


 強大なヨクボウが不安を覚えていた様です!

パイプに腰掛け、顔の部分だけ影が掛かっているヨクボウの姿がそこに! お馴染みの演出がラストバトル感を盛り上げます!


 ヒロインのハオちゃんは、そんな恐ろしいセリフに臆せず言葉を返しました。

「女の子は準備に時間が掛かるんだよ!」

 デリカシーの無いヨクボウは、『くっくっくっ』と、余裕を見せますがその心境は穏やかではありません!


 そんなラスボスとの挨拶の中、メオちゃんが真剣な眼差しをヨクボウに向けて言いました。

「やっぱり…… だったのですわね。ヨクボウのボス…… 『仲間ユウト』!!」


 なんですってぇ?!

確かに劇場版で出てくる新キャラは重要な役割を担っていますが、ユウトくんがボスだったなんて!

 一部読者は気付いていたであろう、その伏線をメオちゃんは淡々と回収していきます。


「ユウトさん、あなたの目的は…… つまり、私を見つける事だったのですわ」

 メオちゃんは『ビシィ』と指をユウトくんに向けました。

「今までハオちゃんのピンチを救ってきた者。つまり、魔砲少女が二人いると思ったアナタは、教室に紛れ込んだ。そして、私を探していたのですわ」

 なんだかとっても無理矢理感がありますが、ここは黙ってメオちゃんの推理を聞いてみましょう。

「そして、私がアナタの正体を見破った方法。それは、アナタが私達と行動を共にした時に口にした『ヨクボウが許せない』という言葉。私達は『ヨクボウ』の存在を伝えてないのに、アナタは知っていたからですわ!」


 –––– 華麗に決まりました!

その様子にハオちゃんは、ポカーンとしています。頑張って話についていきましょう。


「くっくっくっ。なかなか頭が切れるじゃあないか。女庭メオ」

 そう言って、ヨクボウは二人に歩み寄ります。

 顔の影が露わになり、正体を現したのは、やはり『ホモサピなユウト』でした!!


『ホモサピ言うなぁぁああ!!』

ヨクボウ=ユウトの咆哮がボイラー室に響きます!

 遂に、戦いの火蓋は切って落とされたのです!


           –––– つづく

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