劇場版 文化祭の破壊者(デストロイヤー)②
「そんな…… 酷い。酷いですわぁぁ!」
メオちゃんはその場で泣き崩れました。これは『ヒロイン崩れ落ち』という高度な技です。
このままではハオちゃんの主役の座が危険です。
「メオちゃん、泣いている時では無いんだよ。ヨクボウをまだ倒していないんだよ。このままでは文化祭の危機だよ」
そう言って、スッと手を差し伸べるハオちゃん。(覇王モードは解除されています)
主役の劇場版補正が入りました。これで、ひとまず安心ですね。
「はにわハオちゃん。一体……何が起こったんだ?」
今回初登場の上にファインプレーをかましたユウトくんは、肩を摩りながらハオちゃんに詰め寄ります。
変身する瞬間を見られたハオちゃんは、仕方なくユウトくんに真実を告げました。
「貴様が見ていたのは残像だ。よ」
「そんな訳があるか!教室はめちゃくちゃだし、ハオちゃんはマッチョになってたし!」
…… 誤魔化せませんでしたね。まったく
そんな中、ハオちゃんを庇う様にメオちゃんが喋り始めました。
「ええ、私たちは魔砲少女。この学校を裏で守っているのですわ。 だからお願いですわ。 私たちの正体は心の中にしまっておいてほしいのですわ」
ユウトくんもその圧に押されてか、無言で頷きます。空気を読む素直な男子は好感が持てますね。
「わかったよ。でも…… 僕にも協力させてくれ。教室をこんなにしたヨクボウが許せない!」
熱い展開です! まあ、一般人は足手纏いになるのが関の山ですが、ワンチャン身代わりにでもなるでしょう。
「でも、どうしたらいいんだよ? ヨクボウの居場所がわからないんだよ?」
そんな八方塞がりの中、埴輪の髪留めがエクセレントな声を絞り出しました。
『おおお…… ハオよ。そこら中からヨクボウの気配がするぞぅ。 その中でも…… 地下のボイラー室がヤバいぞぉ」
これは、中々のご都合主義です。ですが、見当違いに他の学校に乗り込んだり、あわよくば異世界転生に飛んでハーレムする事は防げました。
「ハオちゃん、行きましょうですわ。私達の手で文化祭を守るのですわ!」
メオちゃんの声で、三人は廊下に駆け出します。しかし!そこにはヨクボウに支配された男子生徒が待ち構えていたのです!
『ここから先は行かせねぇぜ!』
なんと、彼の手には消化器が握られています!
これは…… 消化器を発射したいヨクボウです!
それだけではありませんッ!!
『ここで終わりだぁ!魔砲少女ども!!』
ハオちゃん達の背後にプロジェクターを持った生徒が!!
挟み撃ちです!! ハオちゃん! 絶体絶命よ!
「ヤバいんだよ。これはラスボス前の中ボスラッシュだよ。でも……」
ハオちゃんは怒りを抑えながら、毅然とした態度で言い放ちました。
「アッシはわかったよ。お前達は、今まで出てきていないんだよ。つまり………
『没ネタ』だよ! 『ボツラッシュ』なんかに負けないんだよぉ!!」
ハオちゃんの口から放たれた『魔砲』がヨクボウを打ち砕きました!! そして作者の没ネタも成仏しました!
『く、くそう、、せめて道連れに……』
ああッ!!危ない!!
虫の息のヨクボウが、背後からプロジェクターのレンズをハオちゃんに向けています!
『死ねぇ!魔砲少女ぉ』
刹那、放たれた閃光。映し出されるのは『ホモサピエンス』というタイトルです!
このプロジェクターに当たってはいけません! タイトルが『ホモサピなアッシはハオちゃんだよ』になってしまいます!!
–––– その時でした。
「馬鹿野郎!!」
そう言って、ハオちゃんを突き飛ばしたのはユウトくんでした!
そうです。ユウトくんは伏線通り身代わりになったのです。
「うわぁああああ!!」
ホモサピなユウトくんは苦しみながら絶叫します。その恥辱の中で、彼は声を絞り出しました。
「はにわハオちゃん…… あとは、頼んだ……ぞ」
「ユウトくん!! 今、助けるよ!」
ハオちゃんは、ユウトくんに駆け寄ろうとしますが、その行手をメオちゃんが塞ぎました。
「ハオちゃん!! ユウトくんの覚悟を無駄にするつもりッ?! 私たちは振り返ってはいけないのですわ!」
––– そう、どんなに辛くても振り返ってはいけません。今、ユウトくんはホモサピな猿人のスライドと顔が一体化しています。
彼を見た時、きっと笑ってしまうでしょう。 彼の黒歴史を見てはいけません。
「ユウトくん、アッシは…… 必ず仇を取るんだよ!」
そう言ってハオちゃんとメオちゃんは崇高な犠牲を胸に走り出しました。
目指すは地下ボイラー室。
そこに待ち構える凶悪なヨクボウに、彼女達は勝つ事が出来るのでしょうか?
–––– 決戦の時は近づいています。
–––– つづく
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