第4話 謎


 「祠堂とコハルは関係ないって…どういうことだ……?」

頭が真っ白になった。

間宮はそのまま話を続ける。

「何を勘違いしているのか知らないが少なくとも祠堂大将殿とコハルさんは一切関係ない」

「は…?どういうことだよ……」

そばで転がっている祠堂にふと目を向けるが

もう彼は事切れていた。

「とにかく!来い!このままじゃお前

祠堂大将殿の暗殺で逮捕されるぞ!」

そう言って間宮は俺の腕を掴んで引っ張る。

急に力が抜けた俺はずるずると連れて行かれた。

雨は一向に止む気配はない。



「どうしてあんなことをしたんだ!」

連れられる道中間宮にしつこく聞かれた。

「そもそもなんであそこにいたんだ武藤!」

「…お前こそ……」

ようやく頭が色を取り戻し始めてきたので

この謎について考えてみよう。

「俺は木城少佐殿にコハルは祠堂大将の息子の妻にさせられた、と聞いたんだが…」

「木城少佐殿に?」

間宮が驚いた。

「木城少佐殿はどうしてそんな嘘を……?」

「待て!嘘……なのか…?」

まさか!

「確かに祠堂大将殿のご子息は最近ご結婚なされたけど…お相手は大蔵大臣である奥山って人の娘だよ。詳しいことは知らないけど」

嘘だ…!

本当に?

ならコハルはどこへ?

「じゃあどうして木城少佐殿は俺に嘘なんて

ついたんだ………」

頭を抱える。

意味がわからない。

どうして嘘ついたんだ?

「…とにかく今は何も考えずに休んでろ」

「……すまん、間宮。申し訳ない………」

「謝るな。俺とお前の仲だろう?」

間宮が歯をだして笑う。

雨がやみ始めてきた。

太陽の光が雲の間から差してくる。

「……眩しいなぁ…………」

久しぶりに光を浴びたからか。



数日後。

天気のいい日だった。

「久しぶりだね武藤。元気だった?」

「…落合大尉殿⁈」

間宮に連れてこられたのは陸軍病院。

そこで小さい怪我の治療をしていると意外な人に声をかけられた。

「元気だった?」

「…ええ!元気でした!はい!」

「それはよかった」

あまりに意外な人物の登場に驚きを隠せない。

落合大尉は俺がいた師団の中隊長である。

「戦地では大変お世話になりました。大尉殿こそお元気でしたか?」

「そうだね。ところで何故武藤はあそこにいたのかな?」

落合大尉は終始にこにこと笑っている。

でも彼の大きな瞳には光がない。

「それは…話すと長くなります」

俺はことの経緯を全て大尉に説明した。

「木城少佐殿がそのようなことを…」

大尉が首を傾げる。

「大尉殿はコハルについて何か知っていますか?」

何か少しでも知っていればいいが。

「知らないね。調べてみようか」

やっぱり知らないか…。

落胆が顔に出たのだろう。

「何か分かったら教えるね」

気をつかわれてしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る