第3話 仇
「ここが私たちの本部だ」
そう言われて少し小さめの建物に案内さされた。
木造の二階建てで外は洋風なのに一歩中に入ると畳の綺麗な和風の部屋であった。
ここで俺はもう一度詳しくことの経緯を説明
され、綿密な計画を教えられた。
決行は来週の水曜日。
息子夫妻と祠堂大将は同居していて、
息子夫妻は来週の水曜日に予定があるとの情報を手に入れている。
息子夫妻が出かけるのを見計らって
家に侵入し、祠堂大将を暗殺するという計画
が大雑把な感じだろう。
コハルは暗殺後、夜中帰る途中に保護するらしい。
「では頼んだよ、武藤」
木城少佐が笑いかける。
後始末は全て少佐がしてくれるそうだ。
「待っててくれコハル…!」
ポケットのお守りを見る。
コハルの綺麗な黒髪がゆらゆらとなびいた。
決行の日。
その日は朝から雨がしとしと降っていた。
「嵐が起こりそうですが…」
「視界が遮られるな……」
誰かの話し声が聞こえる。
「動いた!」
息子夫妻が馬車に乗り込む。
妻らしき人物も出てくるが雨で顔は見えなかった。
雨の勢いが増す。
「入るぞ!後は作戦通りに!」
どこだ!
どこへ行った!
祠堂!祠堂!祠堂っ!
殺してやる!殺してやる!!
長い廊下を足音を立てずに駆けていく。
ごうごうと風が強く吹いてきた。
胸にある短刀を手に持ち替える。
バンッと襖を開けるとそこには藍色の着物を着た祠堂がいた。
「…お前は……っ」
祠堂が目を見開く。
「祠堂ぉっ!よくもコハルをっ!」
キラリと鋭い短刀を祠堂の腹に突き立てる。
「うぐぅ…っ!」
小さいうめき声をあげる祠堂の腹を短刀が
貫通した。
赤い血がどくどくと溢れでる。
短刀が赤くギラギラと光る。
「クソ…私に恨みを持つ者か……!」
「どうしてコハルを利用したんだッ!」
「コハル……?」
「知らないとは言わせないぞッ!!」
もう一度腹に短刀を突き刺した。
あたり一面が真っ赤に染まる。
「貴様……っ!」
「まだ知らないふりをするのかッ!」
再度短刀を突き立てようとしたその時だった。
「何やってんだ!?」
声が聞こえた方に顔を向けるとそこには
かつての仲間である間宮がいた。
「武藤だよな…どうしてここに……?」
「お前こそなんでこんな所に?」
顔を合わせて暫く驚いていると静かになった
祠堂が最後に絞り出すように言った。
「お前は誰だ」
「はあ?まだ言うか。俺はお前の妾の子の
武藤セイタだ。覚えていないか?」
すると祠堂がハッとした顔をした。
「そうか。彼女とは子供ができていたのか…。
知らなかった。すまない…」
「知らないだと?ふざけるな!俺からコハルを
無理やり離したお前を俺は許さない!」
「さっきから…コハルとは誰だ?」
「は?何を……!」
「待て!落ち着け武藤!!」
間宮が割って入ってきた。
すると間宮の口から衝撃的なことを聞く。
「コハルって確か武藤の言ってた人だよな?
祠堂大将殿とコハルさんは何の関係もないぞ」
「……は?」
とてつもなく大きな雷が降った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます