第2話②

薄暗く、埃っぽく、じめじめしたがらんどうの中、我々は鬱屈した感情を抱えて、ある者は膝を突き合わせ、ある者は一人背を向けて、話し、笑い、少しの酒を舐め、賭け事に興じ、膝を抱え、横たわって毛布に包まり―――各々の過ごし方で、その胸の内側の黒いものを振り払い、慰めようと足掻いていた。


椅子や、机や、ふかふかだった絨毯、厚ぼったいカーテン、ゆらゆら垂れ下がって不気味だったタペストリー。その他祭具や、装飾の数々など、燃えそうなものはほとんどいつかの機会に薪にしてしまって、屋内は本当に空っぽだった。

そのおかげで、部屋の中央近くに大きな焚火を設けられはしたのだが、星明りさえ遮られ、べったりと黒い夜の闇が満ちてくると、フランチェスカなどはこう言った―――“まるで獣の腹の中みたい”と。


冷たい石の床の上には、それぞれ持っている支給品の毛布以外敷くものがなく、それも長く使い古していてだいぶ薄っぺらになっていた。雨は心底冷えるものと忘れ切っていた私は、自分の分を敷物替わりにフランチェスカに貸してしまい、私物の毛皮で暖をとったが、炎症のために熱を出し、寒気を訴え始めた彼女にそれも与えてしまった。仕方なく焚火の側に寄ろうとしたが、兵士たちの誰一人として火の明かりの届くところにいなかった。


よく目をこらせば、近くの壁際や床に幾人かの影が確認できたが、中には凍え、震えている者もいて、私は訝しみながら彼らのほうへ近づいた。

その際、灯りが床に丸く弧を描く辺りを踏んだのだが、瞬間何者かの手にブーツの足首を掴まれ、つんのめって転んだ。私は驚き、柄に手を掛けさえしたが、何のことはなく、ただそこに寝ていた兵をひとり見落としていただけだった。

何か用があったが、周りで寝ている者に気を遣ったつもりなのか、或いは彼自身寝ぼけているのか、後者なら少しばかり蹴飛ばしてしまおうかと思い、その兵士の側へ寄った。


何事か、と問おうとすると、影は自ら後ずさった。“遮らないで”彼は私の背後を指さし、退けというように手振りした。声の主はクリストフだった。私が言う通りにすると、彼は火の灯りの照らす弧に添うようにして、奇妙な体勢に寝直った。

火に背を向け、肩越しに振り返るようにして視界に灯りを捉えようとした。“寒いんです。でも乾くようで、どうしても近くにはいたくない”私はよほど嫌な目で彼を見たのだろう、彼は言い訳のように付け加えた。“けれど暗闇は怖いから。離れていたくもないんです”


私には彼は寧ろ火を恐れているように見えた。暗闇に不安を覚えていたのは、我々のほとんど皆がそうだったし、寒さも生半には耐え難いものだった。空気は嫌になるほどじっとり湿気ていて、だというのに、乾燥するのが嫌だとは?まるでカエルか―――その時はそうとしか思わなかったが、今になれば、ああ、その通り蚯蚓のようではないか!湿り気がなければ死ぬ癖に、ずぶ濡れになると窒息するから雨を嫌う、あのうねうねと蠢く環ムシのようだ―――!

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