第17話 刹那の風景5:メイキング対談:家族愛4
――<アメジストセージ 家族愛:◇6ラギ 137頁>
薄 : ここからは、ラギ視点での建国祭の日の話になります。午前の部分の話はWeb版『幕間 : ラギとアルトの建国祭』で、午後の部分の話は完全新規書き下ろしです。
緑 : 午前は、ほぼ変えてない。
薄 : 基本的には、そのまま使ってるのだけど、でもまあ、それだけだと建国祭足りないよねっていうのは思ってて、4巻の執筆時から書き足す気満々だったから、読者の皆さんも期待していたのではないかと。
緑 : まぁ、ここは書き下ろしくるって、絶対思ってたと思うよ。
薄 : ただ、その予測はおそらく、建国祭2日目に加筆という予想が多かったと思います。でもね、お祭りに初日に参加しないというのは、お祭り好きとしては、ないんですよ。
緑 : 薄浅黄がお祭り好きなんていう、どうでもいい話と結びつけないで。まぁ、建国祭の話を書くなら初日にしたいし、それはアルトとラギとの物語にしたいってなる気持ちはわかるけど。
薄 : 少し誤解が生じてるかもだから、ちょっと丁寧に言うけど、Web版でも建国祭の初日の話は書いてあります。午前の話でリペイドの町中、午後の話でリペイド城中という感じで作っています。
緑 : 町と城の両方の様子を書いたというのがWeb版で、でも城の中にはラギはいられないから、あの形になっています。
薄 : まぁ、その町中と城中をそれぞれ見せるというコンセプトは間違っていなかったと思うんだけど。
緑 : 書籍化にするときに、読者としてみたいのは、絶対にセツナとアルトとラギの三人でお祭りの町中を回る話だろうなと。
薄 : で、それを二日目でやって、初日にセツナが他の人と建国祭を祝った後の翌日にやって、盛り上がるのかと。
緑 : そうだね。
薄 : ということを考えた結果、王城での酒盛りの話をなくしました。その部分が好きだった人にもごめんなさいなんだけど、こちらもWeb版は変えないので、ご容赦ください。
薄 : またその副次効果で、色々なところで建国祭の話を展開できたよね。
緑 : そうだね。ドラゴンノベルスの5周年記念のショートストーリーとゲーマーズの有償特典の読み切りはすべて建国祭だね。
薄 : いつも読み切りの話があるときに、物語中のカレンダーとにらめっこして、どこの時点の話を書けばいいんだろうとか悩むんですよ。この物語のあたりで、こんな話を作ろうかなって考えたと時に、この時点でセツナ達の滞在日数忠の行動はすでにうまっているから、追加で物語を書けないよねとか。
緑 : 本当に厳しい。
薄 : でも今回は、酒盛りをなくしたことで、お祭りを回る時間に余裕ができたから、色々とここの部分活用できてよかったです。更に二日目も残っているしね。
緑 : そうね。日程に余裕があったもんね。でもこれ、全部読んでやっぱり王城の酒盛りの方が良かったなって思われるとちょっとショック。
薄 : ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
薄 : で、実際に建国祭を回っているときの話を見ていくけど、最初の部分。これ今まで、リペイドにラギさんがどうして引っ越してきたのかっていうところの話がなかったから、これを書き足そうと思ってたんだ。リペイドのこの建国祭を結びついているっていうのは、当初からあった話なんだけれども。
緑 : それで、まず新規で書き下ろされていて、ああそうなんだ、だからリペイドなんだ、みたいなところを共感してくれると嬉しいです。
薄 : サガーナという故郷は南の弟大陸にあって、そこからこの北の姉大陸に渡ってきたラギさんが、どうして移住してきたのかっていうところを、今まで明かされなかったけれども、そこら辺を追求した話になっています。
薄 : で、その後に、ここは完全にぶち切れ案件ですね。緑青ぶち切れ案件。緑青に内緒で、リペイド城辺りの話を入れました!
緑 : ぶち切れ案件です。
薄 : ぶち切れ案件なんだけど、私としては良かったなと思っています。
緑 : 僕は、お城から王妃の投げた焼き菓子を取ってるセツナとアルトをすっごい楽しみにしてたのに、なんか上がってきたのを見たら、全然違うことになっていて、「はっ、何これ」みたいな。
薄 : とってると思うけど?
緑 : 王妃が焼き菓子投げてそれをアルトが受け取るという話が、真ん中の話だと思ってたのに、違うんだ。
薄 : そういうわけで、緑青が侍女のマーガレットさんっていうのを登場させた時に、私は、閃いて内緒で、話を書きました。
緑 : 騙されたんだ。楽しみにしていたのに。読むの。ししょー焼き菓子っていうシーンを楽しみにしてたのに、全然違うものになっていた。
薄 : 王妃が焼き菓子を投げて、アルトが受け取っている。問題ない。うん。問題ない。
緑 : 大事なことじゃないのに、2回もいうな!
薄 : もう、マーガレットさん大活躍だよね。二度と出番ないかもしれない、マーガレットさん。
緑 : いや、あるんじゃない次巻出たら。
薄 : まあ、で、なぜ5巻のお城周りが、ああいった話になったかという説明なんだけど、王妃が危なくなった時に、魔法で逃げられるように、魔導師が一人ついてるだろうっていうところからがあって。
緑 : 王妃様を連れて逃げるために、風使いが必要だってことね。
薄 : 風使いは、リペイドにいる風使いの話は3巻でやっていたんだけど、王妃にも一人ついてるだろうなっていうのは前から思っていたんだけど、マーガレットさんが登場したときに、彼女が使える!ってなったんだ。
緑 : それで?
薄 : じゃあ次の段階で、どうやってこの風の魔法を使えるよっというのを効果的に見せられるかなって考えて、この話になったわけです。私、頑張った!
緑 : まあ、面白かったから、許すけど。
薄 : 許された。まあ、なのでちょっとマーガレットさんは役得だよね。
緑 : そうだね。結構いいところを持っていってるよね。
緑 : ぽっとでのキャラなのに。
薄 : 勝手に作りました。了承を得てなくて作りました。笑える。
緑 : 「はっ」読んだ時、「はっ」みたいな。「はっ」違うじゃん話が。
薄 : ちょっとラギさんが親近感持っちゃったくだりが、自分で書いていてツボでした。
緑 : こんな話の作り方してる小説家、いないだろうね。
薄 : なんで?
緑 : だってさ知らないんだよ、お互い知らない話を作って押し込んでくるんだよ。一冊の本に作っている間に、お互い「はっ」とか言い合ってんだよ。なんでこんな文章入ってんだ、みたいな。
薄 : あとで、ぶち切れ案件っていうんでしょ。
緑 : そうそうそう。ないよね。
薄 : そういうわけで、この新しく描き起こした話の半分ぐらいは、マーガレットさん絡みです。
緑 : そうだよ。なんでマーガレットなのさ。薄浅黄が、このお城で焼き菓子を受け取るシーンとこのもうちょっと後に出てくる建国祭の締めの話を書く事になってて、それを楽しみにしていたのに、焼き菓子配るシーンは、期待していたのと全然別のものになってて、マーガレットさんのページが増えたことで締めの話は短くなってるんだ!
薄 : ここの話、面白かったっていったよね、さっき。それに締めの話は、あの分量が最適だと判断したの。
緑 : まぁ、いいよ、もう。しかたないし、面白かったから。
薄 : じゃぁ、次、いこうか。まぁ、このあとノリス達と会う話を挟んで、締めの話に移ります。
薄 : 実のところ、この締めのアイデアは、3巻執筆時に浮かんでいました。ただ、そのときは建国祭の町中の風景を書き足すか不明だったため、緑青にはいわず、寝かせていました。
緑 : ということは、4巻で僕が建国祭の見せ物を何しようかな、何しようかな、何しようかなって、考えてるときに、もうこれ考えてたってこと?早く言ってよ。それなら考えなくてよかったのに。
薄 : いやいや。それは別のいい考えが浮かんできたら、私の案を没にすればいいだけだから。
緑 : そんなことないよね。その考える分の時間が減ったら、そのリソースを僕は違うところに回せたんだよ?
薄 : でも、もっといいものができるかもしれないからね。効率とかの問題じゃないんだ。
緑 : そして、僕の没が増えていくのか……。
薄 : しかたないんだ。
緑 : イツカ、オボエテロヨ。
薄 : それで、3巻の時に何を思いついたかというと。まぁ、その前に前提として火薬による花火はないだろうなって考えてはいたんだけど。よくある感じのお祭りにはしたくなかったんだよね。
緑 : まあ、ちょっとこうなんか、目新しいお祭りの催し物を考えたかったというのは、僕も思ってた。この世界のなんていうのかな、その世界に適した、お祭りとか遊びっていうのを考えることができないかなっていうのは、ずっと思っている。
薄 : そうだね。
薄 : で、そんな中で、3巻で洞窟のシーンを考えて書いていた時に、あーって、全て繋がっちゃったわけですよ。魔導具で移動してきて、金に困るようになったらうっちゃうよな。でもこの魔導具売ったところで、買い手は何に使うのかな。普通に洞窟探検で使うのかもしれないけど、面白い使い方とかあるかな。ああ、それならって、もう筋道が出来上がってしまったという。でも、さっきも言ったけど、建国祭の日の町の描写を追加するかは未定だったから、寝かせていました。
緑 : 忘れてたんですね。
薄 : いや、忘れてないよ。で、まあ実際、こうやって書ききれて、アイディアが生かせて、良かったです。
緑 : よくないだろ。僕の時間返して!(笑)
――建国祭初日の午後のお祭りの部分は、緑青は相当楽しみだったため、それだからこそ、
――自分で書くのではなく私に書き下ろしてといってきました。
――それで、王妃の投げる焼き菓子を、ふらふしながらラギに肩車をされたアルトが、数回のチャレンジでキャッチするというような、
――私の偽情報を信じた結果、対談のような激おこプンスコ丸になっています。
――すごく目を輝かせて待っていました!(笑)
――<アメジストセージ 家族愛:◇7ユージン 158頁>
薄 : まあそんな感じで、建国祭の初日は終わりました。でもアメジストセージ、実は終わっていいよねってことにならなかったんだよね。この後の部分を、新規でまた書き下ろしてもらいました。今回、本当にすっごい書き下ろしてるよね。
緑 : だってさ、ユージンの話が終わらないから、しょうがないじゃん。
薄 : ユージンの親子関係とともに、彼の仲間関係がどうなっていくのかなという話がなければ、終われないと言うことで。
緑 : そうそう。
薄 : それで、この話のプロットで苦労したのが、実は一つだけあって、ユージンの部屋にいるのは誰かな問題。
緑 : (笑)
薄 : 本当に困っちゃったんだよね、ここね。
緑 : (笑)
緑 : ここって、校正の時に差し替えたところだよね。大きく。
薄 : うーん、そうだね。このまま、このキャラ出してても、ちょっと違うんじゃないっていうことになって、差し替えたんだ。
緑 : だって最初違うかったよね、ここにいたの。
薄 : ヤームスです。
緑 : そうそうそうそう。ここに最初にいたのは、ヤームスさんだったんだ。キースさんの第二騎士、いや第三騎士かな。
薄 : そうそう。キースさんの第三騎士が、いたわけですよ。なんで、ヤームスなのかって言ったら、そもそもキースの護衛は誰がいなきゃいけないんだってなって、えっとサイクルが……。
緑 : 後衛のね
薄 : そうそう、後衛のつくサイクルがね、どうなっているんだと。フレッドが、前日キースについていたじゃないかと。
緑 : じゃあ、休ませないとだから、フレッドいないよね、みたいな。
薄 : まあ、ずっとキースのにフレッドがついていたら、休んだのいつだよって話になるよね。
緑 : あんなに、精神的にボロボロにされたのにね。
薄 : そうそう。だから、ここで代わりの騎士が必要だよねって言って、ヤームスを出そうとしました。それで、都合良くここだけヤームスだしても、読み手には「ん?」となるでしょう。だからトルコキキョウのジョルジュのところでも、ヤームスさんを出しました。
緑 : 実は、あそこでもう少しヤームスとキースは話をしていた。
薄 : これで、このユージンの話で登場しても、唐突感ないよねと思ったんだけど。
緑 : だめだったね(笑)
薄 : いや、でもなぁ。
緑 : でもなぁ。
薄 : でもなぁ。でもなぁ、ヤームスはなかった。だって、絶対無理だよ。なので、急遽、変えたんですよ。しょうがないよ。だって説得力ない。あそこにいて話にまざるの。
薄 : 確かにさユージンやキースにとっては、第一騎士、第二騎士、第三騎士(etc)って、繋がっているから、彼らの人間関係的には、問題ないですよ。当然、物語に起こしていないところでの人間関係は、常識としてはあるんだから。
薄 : でもね、彼らとしては何も問題なくても、読者にとって見れば、読んでる側からすれば、4巻まで見たことのない第三騎士があそこにいて、うんそうだねって会話をしてるのを見て、ああなるほどねって感じにはならないでしょう。
緑 : 力説しているところ悪いんだけど、それ考えたの薄浅黄だよ。
薄 : 黙って聞いて!それで、物語には出てこない護衛のローテーションを変えて、なんとかなるよねっていうことで、フレッドにしました。確か、建国祭の初日はフレッドは夕方まで護衛するはずだったんだけど、あんなことがあったから護衛を外れることになって、翌日の夜番に変更されたということにした。本来というか変更前は、あんなことがあってもフレッドは職務遂行だといって、夕方まで頑張る予定だったんだけど。
緑 : なんか、見えないところでフレッドが弱体化したね。
薄 : いや、最初の設定の方がむしろ、鬼だ。セツナの魔法で被害受けているんだから、配慮が足りなかった。
緑 : 鬼上司、薄浅黄。
薄 : 6巻も書き下ろし一杯頼むね、緑青。
緑 : 極悪鬼、薄浅黄。
薄 : まぁ、冗談はさておき、魔法で精神的苦痛を受けているのは皆一緒だけど、サイラスとフレッドはその中、さらに前に進まないといけない、重圧もあったから、護衛をやめるのは妥当だよね。
緑 : それはそう。最初っからいたわってあげて。
薄 : そうします。
薄 : それで、なんでジョルジュのところでヤームスなんていう名前が出てきたのかな、このあと登場しないのに不思議だな、この人だけなんで名前あるんだろうと思ったひとにこたえです、それはここの名残でした。
緑 : ひどい、色々ひどい、本当ひどい、マジひどい。
薄 : でもそれで、騎士達の誓いが説得力持ったと思うから、これでいいと思います。というところで、『アメジストセージ 家族愛』は終わります。
――校正に出したあとでこの修正なので、本当に申し訳なく思っています。対談中ではそんな雰囲気を感じられなかったと思いますが。
――本当に今回は、いや今回もプロットが駄目過ぎです。反省してます。
――『アメジストセージ 家族愛』は、Web版を脇に置いて、再作成という感じになりました。それがどのような経緯だったのかが、少しでも伝えられれば、対談の意義があったかなと思います。それでは、次回もお付き合いくだされば、嬉しいです。
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