第52話 新たな戦い方

 ミレイちゃん達が卵を温めている間、僕とセレナはティス町の外にやってきた。


 ポンちゃんはミレイちゃんの護衛だ。


「二人で歩くって久しぶりだね」


「うん!」


 ティス町の外は東と西に街道が繋がっていて、北側に広いトーモロ畑が続いている。


 僕達がやってきたのは南側に続いている広大な森だ。


 ここには主にゴブリンが生息しているので、僕達以外の冒険者も時々見かける。


 森の中を歩いていると、数体のゴブリンを目撃した。


「セレナ。危なくなったらよろしく」


「うん! すぐに助けるからね!」


 本当なら逆なんだろうけど、戦いともなれば、セレナには敵わないからな。


 エリナさんから教わったレンジャーとしての技術を身に付けたセレナは、気の配り方が普段より鋭いものになっている。


 ゴブリン達に向かって石を投げ込むと、こちらに向かって一斉に飛び掛かってくる。


 最初のゴブリンが棍棒を振り下ろして、それをギリギリの距離で避けて頭を右に足を左にずらして倒させる。


 仲間が障害物になったことで、後ろのゴブリン二体が同時に飛び上がる。


 魔法や特殊能力がない限り空中で方向転換はできないので、ゴブリンはそのまま僕に向かって飛ぶことになる。


 二体のゴブリンが同時に棍棒を振り下ろす所で、右に避けて振り下ろされる棍棒を蹴り飛ばすと、二体のゴブリンが着地できずにくるくると回って倒れ込んだ。


 後ろのゴブリンと倒れたゴブリンがこちらに向かってくるまでに、目が回っている二体のゴブリンを蹴り飛ばして仲間達に命中させていく。


 レベルが12になって、中級武術家でもあるので、こういう戦いはわりと得意なのかも。


 それに僕は騎士道的な戦いより、こういう荒っぽい戦い方が好きのようだ。戦いが初めて楽しいと思えるから。


 両手両足に気を纏わせれば、ゴブリンのような重量あるものすら簡単に蹴り飛ばせる。


 ゴブリン六体を転がすように倒した。


 すると、後ろからパチパチと拍手が聞こえる。


「ノア! 凄いよ!」


「そ、そうかな? ブレインさんに教わった戦い方を使ってみたけど」


「うんうん! 凄くいきいきしてて、倒すよりも圧倒しているのが凄くかっこよかった!」


「あ、あはは……ありがとう」


「えへへ~」


 セレナに応援されたから――――というのもあって、その日は夜になるまで、ゴブリンを倒し続けた。


 僕が持つ才能【アプリ】でインストールした才能系アプリは、僕自身のレベルの影響を受けるようで、【中級武術家】のレベル12同等のことができるようだ。


 これってもし、他の才能アプリをインストールしたら……ステータスって加算されるのだろうか? もしそうなったら、この才能ってとんでもないチートだな。


 まあ、そんな戦うよりも、美味しいものをセレナに食べてもらうことができる時点で、どんな才能よりもチートなのは間違いないけど。


 三桁に近いゴブリンを倒して、宿屋に帰還した。


《レベルが13になりました。才能【アプリ】の最大容量が1GB上昇しました。》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る