第28話 一秒クッキングの弱点と克服
【一秒クッキング】に弱点が一つあるとするなら、それは使う素材を分別できないことだ。
例えば、コーンラビットを丸々一体料理するとして、いつも僕が行ってきた通りにやると、一体で一人前しか作れなかった。
実はこれにはカラクリがあって、僕がコーンラビット一体を一人前と認識してしまったせいだ。
つまり、本来コーンラビット一体で作れる焼肉は一人前ではない。だってコーンラビットって大きさだけで五十センチはある大型兎だ。そんな兎から一人前分のお肉しか取れないはずもない。
だから僕としては冒険者ギルドで大銅貨一枚で買い取ってくれるのが不思議だった。
そこで【一秒クッキング】をより深く理解するために色々試した結果――――意外なことに【一秒クッキング】の弱点が存在していた。
それは材料を全て一人前としか認識しないことだ。
コーンラビット一体につき一人前の焼肉と認識されるため、丸々【一秒クッキング】で焼肉にしてしまうと一人前しか作れないのだ。
これは非常にコストパフォーマンスが悪く、材料を無駄遣いしていることになる。
そこで、無駄にしない方法が二つある。
一つはコーンラビットを解体してお肉に変換させて、一人前のお肉を【一秒クッキング】で焼肉にする。
これをやるとすると解体に時間と手間がかかるデメリットがある。あるいは、冒険者ギルドで解体を依頼してもいいが、別料金がかかってしまう。
ではもう一つの方法というのは何か――――それこそが【異空間冷蔵庫】だ。
【異空間冷蔵庫】の利点は三つ。
一つ、
二つ、入れた食材の時間を止める。腐らせず保管が可能だ。
三つ、入れた食材から最適量だけ取り出すことができる。ただし、これで減った食材を外に持ち出すことは出来なくなるデメリットがある。
例えば、コーンラビットを一体入れておいて、焼肉一人前に変換した場合、そのコーンラビットは取り出せなくなる代わりに、使い切るまで料理に使うことができるのだ。
ということでコーンラビット一体で作れる焼肉の量は――――何と四十食である。
つまり大銅貨二枚のコーンラビットから四十食なので、焼肉四十食が売れたら銅貨二百枚となり、大銅貨二十枚になる計算になる。たれありなら二倍だから大銅貨四十枚だ。
正直、ぼろ儲けである。
本来なら手間賃がかかるけど、僕ならかからないからでもある。
と、以上が【一秒クッキング】の弱点と、それを補完できる【異空間冷蔵庫】だ。
屋台の前に設置された臨時テーブルでは、香ばしい匂いを放つたれ焼肉を美味しそうに頬張るセレナ。
それを見ていた多くの人が、一組、また一組、屋台に入って来た。
「「いらっしゃいませ~」」
ライラさんとミレイちゃんの挨拶が聞こえてくる。
次々注文が来て、すぐに【一秒クッキング】を使って焼肉を作っていく。
いずれメニューを沢山増やして、より多くのお客様を楽しませるそんな屋台を作れたらいいなと思う。
意外にも焼肉は全てのお客様がたれ焼肉を注文してくれて、すぐに「うめぇ~!」と声を上げてくれる。
後は僕達が何かをしなくても、お客様の声がお客様を呼び、初日ながらお客様が並ぶまでになった。
調理に時間が掛からないので回転も速く、大きいコッペパンを食べ切れなかった人は持って帰る人もちらほら見えた。
パンも異世界では固いものが主流なので、ふわふわのパンに感動する人が多くいた。
そんな中、屋台を遠くから見つめる大勢の視線があった。
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