第20話 作戦開始

 その日はミレイちゃん達を部屋に泊めることにした。


「せ、セレナ? 狭くない?」


「だ、大丈夫……だよ?」


 シングルベッド二つ。片方にはミレイちゃんとライラさんが眠っているので、こちらには僕とセレナが一緒にベッドに入った。


 もし大人の体なら厳しかっただろうけど、子供二人なら十分な大きさだ。


 セレナの暖かい体温が伝わってくる。僕の顔も熱くなった自信しかない。


 アラフォーのおじさんなのに……娘のような年齢の女の子に緊張してしまうのは、辛い部分もある。前世では女性と一緒に眠るなんて経験がなかったから、やっぱり緊張してしまう。


 暫く緊張して心臓の音を聞いていると、セレナの静かな寝息が聞こえてきて、眠る我が子を見ているかのような幸せな気分になった。気が付けば、僕もいつの間にか眠りについた。




 次の日。


 早速行動を開始する。


 一度昨日捕まえたコーンラビットを全て冒険者ギルドに卸した。


 七十体で且つ十割買取によって一体ごとに大銅貨二枚になるので、大銅貨百四十枚になった。これなら暫く滞在しても問題ないくらいの稼ぎだ。


 ただ、僕達がこれから目指すもののためにお金が必要なので、その買い物に向かうことにした。


 大銅貨が大量に入った袋をポーチに入れて、ポンちゃんの背中に括り付ける。


 ポンちゃんの強さなら、一番安全だから預けておくことにする。


 まあ、これもあと少しの辛抱だけどね。


 次に向かうのは、大工屋である。


 お店の中に入ると、「いらっしゃいませ~!」と元気のよい声で出迎えてくれる女の子がいた。年齢は僕達と同じくらいで、赤い髪を三つ編みに纏めていて、頬には少しそばかすがある元気な女の子だ。


「初めまして。作って欲しいものがあって相談に来たんですけど」


「かしこまりました~小型でしょうか、大型でしょうか」


「小型から大型まで一式全部をお願いしたくて」


「これは大口契約の雰囲気ですね……少々お待ちください!」


 そう話した彼女が奥に消えて少しすると、奥から大柄のムキムキのスキンヘッドおじさんが出て来た。


「いらっしゃい」


「どうも。色々作って欲しいものがありまして、その見積りをお願いしたいんです」


「小型製作から大型製作と聞いているが、かなりの量になるのか?」


「ええ。恐らくは」


「分かった。メイナ! 紙を持ってきてくれ」


「もう持って来たよ~」


 受付の女の子は両手に大きな紙を持っていた。


 早速テーブルに紙を広げる。


「今回お願いしたいのは、外でお店を開きたくて、その屋台を作って欲しいんです」


「屋台? ふむ…………」


 顔色が変わるのも無理はない。屋台用の荷車は恐らく普通に売っているはずだ。なら、それを買った方が早いからだ。


「そこら辺で売っている荷車じゃないんです」


 それから大工さんに色々説明をすると、「なるほど」と納得してくれた。


 通常の屋台ではなく、僕が欲しているものを色々伝えると、慣れた手つきで紙に色々描いてくれた。


 とても分かりやすい絵で僕の想像通りに進み、他の必要品も色々伝えて作って貰うことになった。


「しかし、これだけ大掛かりとなると、高額になるがいいのか?」


「どれくらいの見積もりになりますか?」


「ふむ。期間は大体四週間。料金は――――銀貨五十枚は超えそうだが」


「それなら問題ありません。百枚でも問題ないので最高品質をお願いします。ただ今は持ち合わせがないので、毎日十枚ずつ持ってきます」


 大銅貨百枚を先に支払って、毎日持ってくる方向で話がまとまった。


 大工セビルさんと正式な契約書を交わして、着工をスタートさせた。


 大工屋での契約が終わり、僕達はまた森に向かい、狩りを始める。


 僕もレベルを上昇させる必要があり、必死にコーンラビットを倒していく。


 ライラさんとミレイちゃんもこれからのお仕事のために、体力づくりがてら一緒に森に来て貰った。意外にも獣人族は狩りが得意とのこともあって、二人とも狩ったコーンラビットの下処理をしてくれて非常に時間効率がよくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る