第022話 黄金週間 The Second-1
(side:日記)
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今日は昨日に続いて映画館。篤人に悪いが、奏と恋愛アニメの映画を見に行った。映画特典...ブログで日記を書くなら載せないが、アニメキャラコスの特典スチルだった。完全なスクショ案件。しかも、通常プレイで使える全キャラ対応の着せ替え衣装付き。一人一人に合わせ(以下ソシャゲ内容だけにつき省略)
(side:リアル)
昨日の夜に緊急で奏に連絡した。まさかの毎日遊んでいるソシャゲと恋愛アニメ映画のコラボは想定していなかった。奏に聞くと行こうと思っていたが、一人で見に行く度胸がなかったらしい。そこで誘えばオッケーが出た。篤人を誘おうか迷ったが、サブスクで見る約束をしているし、連日映画というのも悪いので、同じソシャゲを愛好する奏を誘う方を優先した。
今日は見る映画が決まっていることもあって、朝一番の上映を見ることにした。昨日も来た映画館の前に着き、携帯を触っていると声をかけてくる存在。
「先輩、おはようございます!」
「おはよう、奏。...無事に起きられたようで良かったよ」
どうやら、普通に着いたらしい。昨日...というよりも、今日も遅くまでゲームをしていたから、少し心配していたが杞憂だったらしい。
「お、起きられないと困りますので、目覚ましと携帯アラームとお母さんアラームの三段構えです!」
どうやら、ギリギリの戦いを興じていたらしい。
「それじゃ、行こうか」
「はーい」
そう言うわけで映画館に入った。僕と奏は無事に入場者特典シリアルコードを受け取ることが出来た。今日のミッションの一つが無事に完了した。そして、ここからが大事なことだ。何と映画連動ミッション。どうやら、僕らのやるソシャゲをしている主要キャラがいるらしく、そのキャラを答えることで課金石の配布が来る。実質半額キャッシュバックである。こういう所が憎い部分だ、最高!!
そんなわけで、上映開始。どうやら、アニメ二期の情報が出たばかりだから、ある意味での期待はあった。しかし、序盤から主人公に声をかける謎の女子。この初っ端から分かる駄作の香り。一期はゴタゴタからの両想いとなり付き合うまで行き、二期の範囲は原作で言うところの甘々の糖度爆上がりの所だ。僕が見たかったのは、唐突に現れる三角関係ではなく、付き合ってから少し時間が空いて始まるシーンの空白部分だ。原作を読んでいる人達からは二人が休日イチャラブを見せろと言うシュプレヒコールが如き応援コメントが8ページ続いていた。僕を含む原作ファンは付き合ってから学校の始まる空白の4日間を映像で見たかったのだ。焦れったい二人の関係が終わり、ようやく来たイチャラブを待っていたのに、フラグなしの唐突な幼馴染み女子の登場。悪夢の三角関係。後味の悪い幼馴染みとの決別。そして、申し訳程度の主人公とヒロインのイチャイチャ。
これは駄作の香りではなく駄作だった。
地獄の二時間半が終わり、ようやく外へと出られる。奏もこの作品のファンだったらしいが、ガッカリした顔をしていた。正直、映画サイトでは嘘は書いていなかったが、持ち上げられた期待を一気に叩き落とされた気分だ。まさに製作陣の最近の流行りに乗り掛かった自己満足的な内容だったと思う。これは本当に原作者への意向を確認したのか疑問に思える出来だった。SNSを見るとアニメファンは問題なかったが、原作ファンからの不満が多かった。僕も同じ気持ちだ。こんなのだと、二期への期待が薄まってしまう。
何ともやるせない気持ちになりながら映画館を出て、昼ご飯を何にするか奏と相談していると警察官が一人の男を取り囲んでいる場面に出くわした。
「君たち、近づかないように!!」
どうやら危険人物がいるようだ。僕たちは遠回りしようとしたが、非常に聞き覚えのある声が聞こえた。
「...からよォ...何度も言わせんじゃねェよ!」
僕は警察官に取り囲まれている人物をよく見ると八坂師匠だった。僕は頭が痛くなった気がした。
「奏、悪いけど、少し首を突っ込んでくる」
「知り合いですか?」
「料理の師匠だよ...」
僕はそう言って八坂師匠の所へと向かう。
「あ、危ないから離れて...」
「八坂師匠、何しているんですか?」
「あァ...?...よォ、ハルキ。見ての通り、職質中だな」
見れば分かることを言ってくる八坂師匠。
「君、知り合いかい?しかし、近づかないでくれないかな?彼は包丁を持っているんだ...」
包丁...包丁?
「もしかして、あそこに向かう予定でした?」
「そうなんだがよォ...この通りでどうにもならねェわけよ。携帯は潰れているから、電話番号も分かんねェしな」
僕は思わず天を仰ぐ。仕方がないので、八坂師匠が手伝っている料理教室の先生に連絡を入れる。
『おや、春希ちゃんかい?済まないけど、手が離せなくてね...あ、そうだ。衛ちゃんと連絡が付かないんだけど、探すのを手伝っては貰えないかな?』
「八坂師匠、携帯が潰れた上で職質を受けています。包丁を持っているせいで連行直前です」
『すまないね、春希ちゃん。警察の方と代わって貰えないかい?』
僕はその頼みを了承し、警察官へと電話を代わった。アレコレと説明をすることで納得して貰えたらしく、八坂師匠は無事に解放された。
「すまんなァ、ハルキ。助かった」
「いえいえ、無事に解放されて良かったですよ」
「いや、本当に助かった。そうだ、昼飯はまだか?ハルキ達が良いなら、俺の師匠の所で飯を出すがどうだ?」
魅力的な八坂師匠の提案だ。だからこそ、奏に相談する。
「奏、八坂師匠の料理は店レベルで美味しい。前に食べたから分かると思うけど、僕の料理よりも段違いに美味しい。僕は断然有りだよ」
「先輩のオススメなら、否はありません!私も是非食べてみたいです!」
「よし、決まりだね。八坂師匠、よろしくお願いします!」
「おゥよ、任せろ」
そんなわけで、僕たちは八坂師匠の師匠がやっている料理教室を目指すのだった。
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