第018話 歌詞の漢字とルビが全然違うのはアニソンあるある

(side:日記)

4/12

最初の2日間は問題なかったが、木曜日は地獄だった。そんなわけで、土曜だが叔父さんの会社の秘書業は休みにさせて貰った。今日は久し振りにカラオケに行った。1人カラオケの予定だったが、篤人が急に部活が休みになったらしいから一緒に行く事になった。僕も篤人もサブカル系の曲が好きだから、割と盛り上がる。一世紀近く前の古いアニソンから現代のアニソンまで幅広い。もちろん、アニソンだけではない。ゲームソングや西方、ボ○ロなどなど。そして、時折出てくる面白系のご当地ソングや空耳系の洋楽まで歌えば時間はかなり経つ。

今日はカラオケ店の近くで晩御飯をして帰ったが、土曜でも満員電車はあり、やっぱり嫌だなって思ってしまった。今度からは上手く時間をズラそうと誓った。


(side:リアル)

いつもよりも少し早い目覚めと取り切れない疲れ。叔父さんには悪いが、休みを貰って正解だったかもしれない。まぁ、休みを貰うと言っても家で出来る物なら少しはやろうとは思っているが、出社せずに済むのがありがたい。特に、社員IDがタイムカードと紐付けされているから、作業時間が可視化されて時間給をキッチリと貰えるのも助かる要因だろう。

それはさておき、土曜のいつも通りの朝を過ごし、片付けることの出来る作業だけは今日の内に済ませる。

そうして、そろそろ10時が近づいてきた。たまには一人でカラオケも良いかなと思っていると電話が鳴る。


「篤人、おはよう。今日は部活じゃなかった?」


『春、おはよ。いや、急遽休みになった。それで、昨日は仕事は休みにするって言っていたから、暇なら遊びに行かないかって誘おうって思ってな。どうだ?』


僕は少し考えるが、篤人とのカラオケは存外盛り上がる。


「今日はカラオケにしようって思っていたんだけど、篤人も行く?」


『お、良いな、それ。なら、俺も行く』


こうして僕たちはカラオケに行くのを決定した。昼御飯は互いに早めに済ませて、よく行くカラオケ店で合流することになる。


「すまん、春。待たせた!」


「篤人、遅いよ...電車遅れてた?」


僕は珍しく遅れた篤人に聞くと頷いていた。そう言うこともあるかと思ってそこまでにした。そうして、カラオケ店に入るとサブカル好き二人は盛り上がり始めた。一世紀ほど前のアニソンから現代のアニソンまで選びつつ、ゲームソングを選び、ボ○ロや西方に今も昔もある空耳の洋楽や面白系ご当地ソングまで幅広く歌った。時折知らない曲があるとどの動画の曲かを情報交換したりもした。実に素晴らしいオタ活と言えただろう。

僕たちはそのまま店を出て晩御飯の相談をすると篤人が近くのファミレスの割引アプリを持っていたので、そこに決めた。普段は自炊だからか、たまに外食も悪くないと思った。

僕たちは晩御飯も終わり、電車で帰ろうとすると珍しく満員電車となっていた。僕たちは同じ車両に乗り込んだが、どうも分かれてしまったようだ。僕は仕方がないかと思って、窓の外を眺めていると妙にくっついてくる男が居た。体をズラして位置を入れ替えても同じことをする男...推定は痴漢。何にしても不愉快きわまりないので次してきたら思いっきり足を踏みつけてやると思っていたが、案の定近づいてきたが、今度は臀部に手を当ててきた。あまりの気持ちの悪さに手と足が動く。まずは男の顎に裏拳を食らわせてから足払いで捕まえようとした。しかし、僕のされていた事に気づいたらしい篤人がそいつを捕まえようとしたのが連動したようだ。まず僕の裏拳が男の顎を捉えてバランスを崩して、そのまま足払いで背中から男を落とすが、こちらに慌てて近づく篤人の膝が男の後頭部を直撃して、男は顎と後頭部の痛みでのたうち回り、篤人は涙目で膝を押さえていた。

こうして、満員電車で起きた痴漢は撃退された。余罪を見ると痴漢の常習犯で僕の見た目に近い歳の少年少女に行為をして、それを盗撮していたようだ。丁度、僕に仕掛けていたのも撮影中だったらしく、これが決め手となっての逮捕だった。


「...それで、膝は大丈夫そう?」


「おう、問題なし!この通りな」


そう言って元気に足踏みしてみせる篤人。僕たちは最終電車になる前に解放されて無事に帰ることが出来た。


「それは良かった。...全く、楽しい1日だったのに最後が悪いと気分も悪くなる!」


「そりゃ、完全に同意だな」


「...それじゃ、僕はこっちだから」


そう言って僕は帰り道を指差す。


「そうだな。それじゃ、次は月曜だな」


「...篤人、助けようとしてくれて、ありがと。それじゃ、また月曜日!!」


僕はそれを言い残して走って帰る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る