第014話 学生の一年の真の終わりは3月の終業式
(side:日記)
3/12
振替休日明け。今日は卒パの後片付けだった。卒パ明けの一番の悲しみの深い時間とも言えるが、特出して書くこともないのも現実。そして、各三年生がいないことで、より雰囲気が静かになった学校は物悲しさを感じるものだった。
明日は終業式のため、段取り確認をした。こちらも特出するものはない。
3/13
他所の学校よりも早いが、終業式。今年度最後の生徒会活動であり、今日の放課後で完全に引き継ぎが終わる日。この面々での生徒会活動が最後なのは非常に残念ではある。
今日は通知表を配られる。これに関しては、あまり争うことはなかったりする。今年も一位だったみたいで、満足だ。
放課後は引き継ぎと打ち上げを兼ねた会をする。今回は八坂師匠が料理を作る豪華版。そして、サプライズゲストに小鳥遊先輩で大いに盛り上がる会となった。
(side:リアル *3/13)
今日は普段よりも早めに家を出る。部活を頑張る生徒から声をかけられつつ学校に向かう。体育館に着くと、何人かはまだだが、概ね集まっているようだった。
「四月朔日 春希。君は...まぁ、大丈夫だろうからアレコレ言わないが、頼んだぞ」
田中先輩からそう言われて、昨日の段取りを思い出す。僕の担当は、司会進行。これは来年度の生徒会副会長としての練習を兼ねたものだと言われると断りづらかったりする。
時間は経ち、終業式が始まる。教頭や生徒指導の早川先生は話が早くて良いが、校長の話は長い。ありとあらゆる段取りを無に還しそうになる予感が出たところで、教頭がチョークスリーパーをかけている。タップしているが離さない。早川先生が素早く校長の話は終わりと告げることで、教頭は脇から手を入れ、早川先生は足を持って校長を連れ出す。校長は抵抗しつつも、シ○ワちゃんで有名な機械人が如き台詞を発しているが、戻ってくることはないだろう。途中、トラブルがあったものの、無事に終業式が終わったので、解散となる。
裏では話し足りない校長とそれを妨害する教頭の闘いは始業式と終業式の風物詩のため撮影されており、『校長 vs 教頭』シリーズは大好評だ。未だに卒業生が買いに来るほどでもある。これの編集は生徒会で行うため、生徒会の活動費の追加はコレの収益だ。意外と真面目に取り組んでいるため、映画研究部の協力がある。彼らも一枚噛むためか、割とズブズブの関係ではある。見返りが各イベントの視聴覚室の独占契約となるのは公然の秘密で、映画研究部以外が映像作品を作っても、プロジェクターは借りれても視聴覚室は借りられないはこの学校特有の格言でもある。
それはさておき、終業式が終わり、取り敢えずは解散となったため。各位、自身の教室に戻り通知表を貰うこととなる。試験では花園さんと闘いになるが、実は通知表ではならない。実は内申点が微妙に低いからで、理由は単純。通知表をそっちのけでイラストを描く姿を見れば分かるだろう。実は試験結果が良いだけで、提出物や授業態度でマイナスを食らっているからだ。とは言え、大体の提出物はやっているし、注意をされたら授業中でも止まるため、平均したら三位ぐらいだ。
「春、どうだった?」
篤人が自分の通知表と一緒にやってくる。僕は一位と書かれているもの見せる。
「やっぱりかー...俺は過去最高だった」
そう言って見せてくるのは17位の文字。
「中等部の頃から大幅な成長だよね。思わず、親目線になりそう」
「ちょっ!?確かに、勉強面では世話になってはいるが、親目線は止めろよ?」
僕はニヤリと笑う。
「まぁ...篤人ちゃんったら頑張ったわねー?」
「やーめーろ!?マジで母さんみたいなことを言うのは止めろよ!?」
僕は篤人とそんなやり取りをしていたが、ハッとして花園さんの方を見る。下手したら、ネタにされる危険性があった。しかし、こちらを気にする素振りはなく、ほっとした。しばらく話してLHRの時間が終わった。
こうして、今日の...いや、今年度の学校生活はこの時間で終わった。生徒会がなければ、僕も一緒に終わるところだったが、最後の引き継ぎのために生徒会室に向かう。生徒会室の書類などの片付ける場所を確認したり、各イベントごとの進行の決まりを伝え直す。まぁ、ほとんどは役職が変わるだけで続投するので困ったときには聞き直せば済む話とも言える。無事に引き継ぎが終わり、打ち上げをすることになる。今日は八坂師匠が振る舞ってくれるとのことで、楽しみだ。
「八坂 衛。連絡通りの時間通りだ。そちらは?...あぁ、分かった。それでは、そちらに向かう。皆、向こうの準備は終わっているようだから、向かうぞ」
田中先輩が八坂師匠の方に確認を取ると問題ないとのことらしい。僕達は実習棟の第一調理室に向かう。
「生徒会だ。入っても良いか?」
「おーけーだよー」
田中先輩が聞くと、非常に聞き覚えのある声が聞こえた。田中先輩以外は困惑しているが、皆で中に入ると小鳥遊先輩もいた。
「皆、お疲れ様。」
「ひーちゃん先輩?何故ここに?」
夏奈が聞くと
「そりゃ、今年度後期の生徒会長はこの人だろォが。お前らが打ち上げの企画をした段階で呼んだ」
八坂師匠がそう言うと、田中先輩は良い笑顔に話し始める。
「卒業したばかりの小鳥遊 陽葵先輩を呼ぶのは心理的抵抗があったが、今年度後期の代表は先輩だ。呼ぶに決まっている」
「卒業したばかりの私が言うのも何だけど、私にとっての卒業は打ち上げが終わるまでってね?だから、今日は私も料理を手伝ったんだよ」
そう言って、学習教室に案内されると八坂師匠と小鳥遊先輩が作ったと思われる料理の数々が並んでいた。
「お前らが時間通りに動くタイプの連中で助かる。温けェ料理は温けぇ内に食うのが一番だ。さっさと席に着けよ?」
そう言って八坂師匠は調理室に戻る。
「さぁっ!食べちゃおうよ!私だって手伝ったんだから、美味しい内に食べましょう」
小鳥遊先輩の言葉で全員が食べ始める。最後の最後に先輩と打ち上げが出来たのが凄く嬉しかった。後、八坂師匠特製スフレパンケーキも美味しかった。デザートはあまり挑戦していなかったので、春休み期間で練習しようと決意した。
「さて、正式に、この時間を以て私は生徒会長の退任となる。後期の間、楽しかった。だから、ありがとう。君たちのリーダーとして会長を出来て良かった。だから、来期の皆、頑張ってね。大学からにはなるが、応援しています」
こうして、小鳥遊先輩の生徒会長は真の終わりを迎えた。
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