第013話 休日は遊戯かバイトか

(side:日記)

3/11

土曜が卒業式だったため、今日は振替休日だ。テスト前やイベント前なら選択肢は狭いが、そうでもないので、選択肢は広い。と言うものの今日は既に決まっていた。だから、そっちに行くのだが、今日は夕方まで拘束されたので、残り時間はソシャゲを頑張った。


(side:リアル)

土曜が卒業式だったため、今日は休みになった。こう言う時、大体は遊ぶかバイトかで迷うものだが、今日は予め予定が入っていたので、遊びの誘いは全て断った。そんなわけで、スーツでバッチリ決めて、結構大きめのビルに入る。『社長室』...僕が向かう先だ。


「失礼します」


「お、よく来たね、春希。今日はよろしく頼むよ」


そこには及川 秋文(おいかわ あきふみ)さん。この人は僕の叔父に当たる方だ。ここは『㈱オータムブックス』。所謂、出版会社だ。まぁ、書籍関係もそうだが、ゲーム関係も出していたり幅広く手掛けている会社ではある。ここの親会社がこの秋文さんの実家であり、母の実家でもある。要するに、縁故採用で秘書としての仕事をしている。まぁ、学生だから第二秘書だから、割と雑用が多めだ。家に持ち込んで良いものを中心にやらせてもらっている。ここでの経験を生徒会書記に持ってきていたので、糧にはなっている。


「試験は終わったとは聞いたけど、どうだった?」


「全教科パーフェクトで同率で学年一位でしたよ」


すると秋文さんは苦笑いをする。


「いやはや、進学校で満点が二人はいる学校とはなかなかに凄まじいね。義兄さんと姉さんを思い出すよ...」


そう言いつつも、本日のスケジュール表を取り出し、見せてくる。


「まずは、広報の会議だね。後、今日は満には県外に行ってもらっているから、議事録等は頼むよ」


満...及川 満(おいかわ みつる)。秋文さんの弟であり、僕の叔父であり、第一秘書だ。とても楽しい人で、休憩時間にゲームに誘ってくれる人だ。よくボコボコにしてしまうが、いつも一緒に笑ってゲームをやっている。

取り敢えず、僕は仕事モードに意識を切り替える。


「かしこまりました、社長」


僕は社長の若干後ろを付いて歩き、会議室に着く。社長が着く事で室内の空気が張り詰めた緊張感が漂う。僕は社長の隣に座り、議事録を取る。今回の議題はテレビCMとネット広告のどちらを優先させるかのようだ。なかなか進まない様子だ。すると社長が僕にどちらが良いかと聞いてきた。仕方がないので、僕は立ち上がり、自身の考えを言う。


「私が思うに、どちらにも需要があると思います。ただ、テレビCMについては良いとして、ネット広告の話題は動画サイトのCMだけですが、ゲームアプリなどはどうでしょうか?」


僕がそう言うと頭に疑問符を付けていた。


「少々失礼します」


そう言って、よくやるソシャゲのCMガチャを見せる。


「最近のソシャゲはこのようにCM視聴でガチャを回せます。こういったゲームのスポンサーとなってCMを出すのもネット広告の一つだと思います。...私からはこれぐらいですね。テレビもネットもどちらにも需要がありますので、一概にどちらを優先すれば良いと言うものでもないと思いました」


そう言って、一礼して席に座る。僕の意見も参考にして話が進んでいく。最終的にはネット広告の方に予算を多めに割くことになった。


「みんな、ご苦労。それでは広報会議を終了とする」


社長はこう言って解散となった。次は取引先との会合だ。そう言うわけで、僕と社長は一緒に外へと出る。

着いた場所は鉄板料理の店。おそらく、ドラマで見た人もいるであろう店だ。僕は学業では失敗してないが、このドラマの人は医療だ。重さが違う。それはさておき、そのドラマの重鎮の方が会合に使うような鉄板料理の店だ。会合相手を見ると非常に見覚えのある顔。というよりも、手を振られた。彼の名前は木島直樹。お隣さんだ。


「社長?私はどうすれば...?」


「春希、ここからはオフで良い。ナオが春希の隣に住んでいるのは昔から知っているから、何の問題もない」


「はっはっは!!一応は会合だが、普段通りで良いさ」


僕は一息つき、仕事モードを解除する。


「と言うより、驚きでしかないですよ...父さんや母さんとは仲が良かったのは知っていますが、急すぎはしません?」


僕はいつもの態度に戻ると、愚痴を言う。彼方さんが琥珀のマネージャーをしているのは知っていたが、琥珀の所属企業の社長が直樹さんとは完全な初耳だった。琥珀の所属企業は知っていても、社長までは調べない。

会合そのものは短時間で終わった。単純な契約更新ぐらいだったようだ。

そこから、いつ僕に対してネタバレをしようとしたかの浅い歴史が語られた。何でも、僕がオータムブックスに所属した年度の契約更新日に狙っていたらしい。どうやら、オータムブックスに所属するのは大前提だったようだ。僕は大人達の手のひらで転がされていたので不貞腐れて高めの肉を頼む。

まぁ、そこまで見抜かれていたのが現実だった。


ランチ会合が終わると、会社に戻り、書類整理が始まった。元々は事務バイトとして雇われたはずなのに、先輩社員から教えることがないと社長に投げられたのが第二秘書の始まりだったと思い返す。


「四月朔日さん、決算書類です」


「第二秘書さん、先月の営業成績です」


「春さん、これ美味しいけど食べます?」


「四月朔日君。いつも助かるよ」


...第二秘書だが、完全な雑用係。これ如何に?まぁ、叔父さんからは会社に所属する時間は他者より少ないから出来ることを増やして将来に備えてもらうため聞いているし、糧になっているので文句はない。いや、多すぎるけど。僕は片っ端から片付けると、退社時間前。時間内に無事に終わった。


「...流石、第二秘書さん。スーパーワーカー...」


「お疲れ、春さん。コンビニ限定チョコ菓子だよ」


「ありがとう、四月朔日君。君がいると本当に助かる」


雰囲気も良い会社なのも良い。仕事が多すぎるのは玉に瑕と言えなくもないが、仕事がないよりは良いだろう。


「皆さん、お疲れ様でした。それでは私はこれにて」


そう言って、社長室に戻って本日の報告を行う。


「うん...うん。ご苦労、春希。相変わらずの仕事の良さで助かるよ。だから、後は任せてくれ」


僕は秋文さんの言葉に仕事モードを解除した。


「それじゃ、秋文さん。お先に失礼します」


「おう、お疲れさん~」


こうして、久しぶりの出社は終わったのだった。


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