第005話 モテる青年と青黄赤の三連星

(side:日記)

2/21

今日の登校する時は神がかっていた。いつもなら、どこかで止まっているのに全部青信号で進めた。これは凄まじく運気が高いのだろう。しかし、あくまでも道中のトラブルが影響しての時間調整の結果とも見えなくもないが、前向きに考えることにした。そんなわけで、今日は珍しく学校でガチャを回した。この間と違って運気爆発状態だ。11連ガチャで最高レア3つが未所持とか最高すぎた。普段なら、調子に乗って追加で回すが、僕はこの間の大爆死で学んだ。調子に乗りすぎるとドツボに嵌まると。だから、運気を保持してコンビニで一番くじを買うのだ。今日の運気なら良いのが引けると信じて。

そんなわけで、放課後に篤人と一緒にコンビニ行った。今日はクラス委員も卒パの準備も生徒会も休みだった。今日の運気なら最低でもB賞は狙えると信じて。結果は落ち込まずに日記を書けているので答えは分かるだろう。奇跡のA賞とB賞だった。しかも、五回以内で。まぁ、普段やらない篤人が一回引いたらラストワン賞とか言う僕の神引きを上回る事象を引き起こしていたのには嫉妬しかなかったが。やっぱり、運気上昇も大切だけど、無欲が強いってはっきり分かるんだね。


(side:リアル)

いつも通りの通学光景。しかし、学校まで後半分ぐらいになったとき、中等部の制服を着た女子生徒が蹲っており、声をかけると顔が青くなっていた。話を聞くと浮気をされたらしい。篤人と二人で話を聞いていくうちに気を立て直せたのか、表情は良くなっていた。失恋は別で補うのが良いらしいと話していると、趣味がゲームでどうやら僕と同じソシャゲをしているみたいだ。彼女は加藤 奏(かとう かなで)というらしい。結構、意気投合したので、フレコとSNSのIDを交換した。


「四月朔日先輩が同じゲームしてたのってビックリしました。先輩のファンって沢山いるので、まさかフレコとかIDを交換してくれるなんてある意味ラッキーです。まぁ、彼氏に浮気されて別れたので総合したらマイナスですけどね」


「あー...そりゃ、マイナスだな。俺が恋人に浮気されたらショックのあまり、寝込むかもな」


「やっぱり、仲本先輩もそう思いますよね!!...って、あれ、どうしたのですか、四月朔日先輩?」


「いや、加藤さんのラッキーって言葉に何か引っ掛かるんだよねー...」


「え、私、何か言っちゃいましたか?」


「加藤、こいつの場合は、絶対に面白くもなくつまらない事だ。中等部からの付き合いだから分かる。間違いない」


「そりゃないよ、篤人...」


学校までの最後の信号を渡りきると後ろから嘆きの声が聞こえた。


「あー...ラストが渡りきれなかった!!」


その声に僕と篤人は反応する。


「「あ、信号で止まらなかった」」


「え、もしかして、七連続の魔の信号をノンストップですか!?」


七連続の魔の信号。それは学校の正門から真っ直ぐの道に連なる七基の信号。その全てが時差信号で、ノンストップで渡れた人間には幸運が舞い降りるという曰く付きで、願掛けをする生徒はこの通りを駆け抜けようとするほどである。


「お二人ともおめでとうございます!」


「あははは、サンキューな!」


「うーん...もしかしたら、違うかもしれないよ?」


僕は一つの懸念を口にする。


「今日は加藤さんが蹲っていたときに話を聞いたりして、その場で止まっていたから...ね。それが時間調整扱いになればダメかもしれないよ」


僕たち三人は頭を悩ますが、加藤さんが復帰する。


「そこは人助けのバフでセーフ扱いです。今日は私が助けてもらいましたので、何がなんでもセーフ!きっと、助けてもらわなくても、七連続ノンストップの星の下なのです」


僕と篤人は顔を見合わせて笑う。


「まぁ、願掛けぐらいで考えてたら良いしな。今日一日がラッキーだから全部通れたって思っておくよ」


「篤人と同じく前向きに考えてみるね」


二人とも笑顔で加藤さんにそう言って笑いかける。


「そうですよ、前向きが一番だと先輩達が教えてくれたんですよ。あ、私の靴箱はあっちなので、ここで。では、四月朔日先輩、ゲームしましょうね!」


そう言って、加藤さんは手を振って去っていった。


「大分と打ち解けていたな」


「そりゃ、一番楽しんでいるゲームのガチプレイヤーなんだから話していて楽しいよ」


そう言って、僕たちも靴を履き替えて教室に向かうのだった。教室に着いた僕は七連続の魔の信号効果にあやかって11連ガチャを回すと神引きだった。魔の信号効果はマジだったと加藤さんにSNSで伝えると魔の信号にチャレンジしますと返事が来た。浮気して別れたのが今日だとは思えないぐらいに前向きになっていて嬉しく思った。後、運を使い切らずに放課後に使おうと決意した。


昼食後、トップ5に入るぐらい嫌な授業。それが体育...食後は脇腹が痛くなるからだ。多少は嫌だなーって表情をしていると早川先生がやってきた。どうやら、女子の体育の先生は緊急で授業が出来なくなったらしいので、男子と同じく体育館でやることとなった。競技はバスケ。チーム分けをして、試合が始まった。僕がボールを持つと周囲が少し静かになる。僕はドリブルをして相手に近づき、緩急で躱してゴール下まで近付きレイアップシュートを決める。その瞬間、盛り上がる声と黄色い歓声が聞こえる。決めた後の僕はゴールの下にすぐに戻り、ディフェンスをする。そして、一進一退の攻防の末、僕のチームが勝った。僕は篤人を見つけてグッドポーズをすると篤人も同じくグッドポーズを返してきた。ちなみに、篤人は篤人で勝っていた。今度は篤人が僕にグッドポーズをしたので、そのまま僕もグッドポーズを返した。


放課後、今日は、試験期間に近付いてきたので、クラス委員の仕事も卒パの作業も生徒会関係もないので、篤人と一緒に帰る。最近は帰る時間も遅かったので完全に暗くなっていたが、今日はまだ夕日が見える。僕たちのいつもの分かれ道のすぐ近くにコンビニがあるので立ち寄る。七連続の魔の信号効果に期待して一番くじを引くのだ。篤人はあまりこの作品には興味がないのかスイーツを眺めていた。僕は今日の運気を信じて五回引く。結果はA賞とB賞。明日が怖いと思ってしまった。


「お?大きいの抱えてるけど、当たったのか?」


後ろから篤人が声をかけてきたので、自慢気に見せつけた。


「これが、魔の信号効果だよ。あの願掛けはマジ物でヤバい」


僕はニヤケ顔が隠せないぐらいにニヤついていた。


「へぇ...凄えな...俺も一回引いてみよっか」


そう言って、スイーツと一緒に一番くじを買っていた。そして、まさかのラストワン賞。これが魔の信号と無欲の相乗効果かと戦慄した。


「お、ラストワン賞とか神がかっているな、マジで。あの願掛けに頼りたくなる気持ちは分かってしまうわ」


僕は悔しいという感情に支配された。八つ当たりとして、篤人が食べようとしていたチョコ菓子を横取りして食べた。


「な、な、な」


「あ、これ、美味い。どこのやつ?」


そう言って、篤人の食べていたチョコ菓子のパッケージを覗き込む。


「ちょっと買ってくる」


僕は急いでコンビニ戻って同じものを二つ買う。篤人のもとに戻ると篤人はさっきと同じ体勢だったので、横取りした分を口に突っ込む。すると再始動した。


「横取りしてごめん。って事で僕の買ってきた分で返したからチャラで良い?」


そう聞くと無言で首を縦に振ってきた。コンビニに入る前と違って暗くなり一層寒くなってきた。近くにある鏡を見ると少し耳が赤くなってきた。


「結局、暗くなったし、冷えてきたなぁ...よし、今日は帰るか。それじゃ、また明日!」


「お、おう。また明日な」


そう言って、二人は耳を赤くして帰っていく。


P.S.家に帰って、加藤さんに一番くじの結果を伝えると、毎日魔の信号チャレンジすると言ってきた。その姿は押しキャラを完凸させてガチャで爆死した暴走する僕を彷彿とさせる物だった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る