本編
第001話 バレンタインデーの終わりと告白と
(side:日記)
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世界中のリア充が嫉妬される日。僕は...いわゆる勝ち組だろう。何故なら、学校に行けばチョコレートが貰える立場だからだ。その中には友チョコや義理チョコも本命チョコも色々アリだが、貰えるものは貰う。まぁ、貰ってばかりだと悪いから、中等部時代にこちらから準備した時は大きな騒ぎになったので、それ以降は準備していない。
それはさておき、クラス委員の仕事を済ませて帰ろうとしたら、同じくクラス委員を共にした相手から告白されてしまった。友人としてしか意識していなかったから流石に動揺したが、告白は断った。でも、諦めずに惚れさせると宣誓布告されてしまったから、受けて立つと答えてしまった。少年マンガっぽくて少し盛り上がってしまった。さて、クラス委員の仕事も落ち着いたので、ソシャゲをやろう。バレンタインイベントの周回を本気でやる。
(side:リアル)
バレンタイン当日。僕はクラス委員の仕事を終わらせ、帰り支度をする。今日は直帰すると決めている。何故なら、ソシャゲイベントの周回をすると決めているからだ。まぁ、ソシャゲイベント以外にも貰ったチョコを入れた袋で両手が塞がっているから買い物にも行けないのが現実だけど。そんな僕が学校の玄関で靴を履き替えていると、僕を追いかけてきたのか同じクラス委員で友人の仲本 篤人(なかもと あつと)がやってきた。
「春!!待ってくれー!」
春こと、四月朔日 春希(わたぬき はるき)。それが僕の名前だ。名字を初見で当てられる人が少ないのが残念だが、読みやすいと名前で呼ぶ人が多い点では親しまれて良いかもしれない。
まぁ、色々考えて待っている内に篤人がやってきた。篤人は篤人で両手に紙袋を持って沢山のチョコを貰ったようだ。篤人はサッカー部の若きエースで、未来のキャプテン候補。そして、よくモテる。それはさておき、折角待ったのだから一緒に帰るとしよう。話すことは色々とあるから退屈にはならない。そして、いつもの分かれ道。いつも通りの別れと思ったが、呼び止められた。
「なぁ...春」
「どーした、篤人?」
さっきまでと違って話が進まない。しかし、何かを決意したのか篤人は口を開く。
「俺、お前が好きだ、春!」
こうして、僕は意識も何もしていない友人から告白されたのだった。
「...え、マジ?」
「あぁ、本気だ」
「...マジ?」
「何度も言わせるなよ...春が好きなんだ」
流石に篤人から、そういう感情を向けられているのは想像もしていなかった。ここでの返事で今までの関係が変わるかもしれないと考えると答えを出しづらい。しかし、それでもだ。何も答えないのは間違っている。そう思った僕は一つの答えを出した。
「ごめん、篤人。僕は君をそういう風には見れないし、見たこともなかった。だから、ごめん」
篤人は一瞬下を向く。しかし、飲み込んだか顔をすぐに上げる。
「春の気持ちは分かった。でも、そういう風には見たこともなかったって事は今日の告白で、俺がお前をそういう風に見ていると分かって貰えたってことだ」
そう言って、僕に指さす。
「だったら、俺はお前を惚れさせてみせる!そして、俺たちの卒業式の日までに、もう一度告白する!」
そうキメ顔で言ってきた。僕は思わず笑ってしまう。
「ちょ、笑うなって!これでも本気で言っているんだぞ!?」
「ごめんごめん。でも、本気だって気持ちは伝わってきたよ。単純に、この告白の答えで関係が変わるって思ったら、答えを出すのに迷った僕が馬鹿だったなって思っただけだよ。まぁ、キメ顔は面白かったけどね」
そう言って、今度は僕がポーズを作る。
「君の気持ちは分かったよ。なら、その時まで待つよ。でも、惚れさせられなかったら、遠慮なく断るから覚悟しておいてよ」
そんな僕に、今度は君が笑う。これでお互い様だ。
「今思ったけどさ、篤人...」
「どうしたよ?」
「二人ともバレンタインデーのチョコを大量に持ったまま告白したりされたりって何か面白い絵面じゃない?」
僕の言葉に、その絵面を想像したのか思わず吹き出す篤人。その体は笑いを堪えきれないのかプルプルしている。
「それじゃ、篤人、また明日!」
「お、おう、また明日な、春!」
こうして僕と君は家に帰った。
これは高校一年のバレンタインデーに告白された僕と告白してきた君の物語。
P.S. 何だかんだで中等部からの仲の良い友人に告白されたのに動揺したせいか、ソシャゲの周回が上手く行かないので、今日はふて寝する。今日の分の日記の書き直しも無しにする。相当テンパっているのは自覚しているが、思った以上に書いている内容も変だと思うが、ある種の戒めにしよう。もちろん、ふて寝は宿題をやってからだが。
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