第八話「言い訳させてください」
ユウは日が落ちる前に、はじまりの村にたどり着いた。
クマとの別れは寂しかったが、これから本当の異世界転生が始まるのかと思うと、ワクワクした。
(クマと魂が入れ替わったのは、ただの序章……この一歩が、新しい人生の始まりだ!)
ところが、村へ一歩踏み入った途端、村中から怖い顔をした大人達が集まってきた。ユウは瞬く間に囲まれ、逃げ場を失った。
「良かったよ、生きてて」
「クマに食われたかと思って、心配してたんだよ?」
言葉とは裏腹に、恨みのこもった眼差しを向けてくる。
ユウは「えっと……」と転生者お得意の、あのセリフを口にした。
「俺、何かしちゃいました?」
「したね」
村人達はおのおの、穴だらけになった家の壁や屋根、畑、肥溜めなどを指差した。
突き刺さっていた冒険者達がいなくなった分、村の被害がより分かりやすかった。
「このとおり、アンタが暴れたせいで村はめちゃくちゃさ! どうしてくれるんだい?」
「横暴な冒険者共を成敗してくれたのは助かったけどね? うちの壁と屋根の修理、頼んだよ!」
「うちの畑もだ! 直すまで、この村から出さねーからな!」
全て、クマがユウの体でしでかしたことだ。ユウは慌てて、魂が入れ替わっていたと説明した。
「それ、俺じゃないです! クマと魂が入れ替わっててですね……」
「嘘つけ! そんな馬鹿げた話があるか!」
村人達は怒り、ジリジリと詰め寄ってくる。
ユウは後ずさりながら叫んだ。
「言い訳を……言い訳をさせてくれぇ!」
「「「良いわけあるかぁー!!!」」」
「うわあぁッ! クマ、戻ってこーい!」
(終わり)
【KAC2023お題全部】"いいわけ"だらけの異世界転生 緋色 刹那 @kodiacbear
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