第六話「苦っ禁愚」
ユウと元クマは森へ戻ると、女神の指示を参考に薬を作り始めた。
と言っても、実際に作業していたのはユウ一人で、
「クマクマーッ!(訳:火、怖ーい!)」
「ボフッ!(訳:今は人間なんだから、怖くないだろ?!)」
「クマクマーッ!(訳:茶葉熱ーい!)」
「ボフッ!(訳:素手で触るからだ! ヤケドになるから、気をつけてくれ!)」
「クマクマーッ!(訳:あっ! シカだ! 獲ってくるクマね!)」
「ボフッ!(訳:お、今日の夕飯候補だな。頼むわ)」
という具合に、元クマは戦力外だった。代わりに、食料となる獣や植物を狩りに行ってもらった。
薬は一日かけて完成した。レシピどおりに作ったはずだが、ドブのような……緑がかったヘドロ色の液体が出来上がった。
作った本人のユウも、そばで見ていただけの元クマも、不安そうに顔を見合わせた。
「……ボフゥ?(訳:本当にこの色でいいわけ?)」
「クマァ……(訳:臭いもドブみたいクマ。飲んだら、お腹壊しそう)」
「まぁまぁ、ぐいっと一杯! 飲むのは一瞬ですから!」
女神は酒でも勧めるテンションで、ユウと元クマを急かす。自分は飲まないので、気が楽らしい。
ユウと元クマは意を決し、薬が入ったコップを手に取った。
「クマクマ(訳:じゃ、いっしょに)」
「ボフ(訳:あぁ)」
女神に言われたとおり、同時にコップを傾ける。
なんとも言えない苦味と青臭さとヘドロ臭が、鼻と舌へ一気に襲いかかる。ユウも元クマも吐き気をこらえ、なんとか飲み切った。
次の瞬間、ユウの視界がぐにゃりと歪んだ。元クマもフラフラと目を回している。
「ボフボフゥ?!」
「クマクマァ?!」
彼らはそのまま意識を失い、草むらへ倒れた。
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