買って、イイワケ？【宵越し番外編】

本当にあったさっきの話

　諸君、元気に散財してるだろうか。

　私はというと、だな。

「母上、このKCON（K-POPアイドル合同コンサート）チケット、三日間全通で買っていいでござるか？」

　それは毎年恒例イベントである、KCONのチケッティングが始まる。三日間様々なアイドルたちと会える楽しいイベントだ。(幕張という地獄の会場ではあるが)

　るんるんといつも一緒に行く母親に、私は声をかけた。

「うん、買っていいワケあるかバカ娘！！」

　しかし、返ってきた言葉は思ったよりも辛辣だ。

　何故こんなこと言われるのか、それにはちゃんと理由がある。

「あんた、最近デビューした推しとのテレビ電話イベント（ヨントン）するのに、CD三十枚買うんじゃなかったの？」

「テヘッ、来月やるよ多分、多分だけど」

「しかも、今月デスク買って、財布買って、しかもヨントンの特典トレカほしいからって、八枚CDすでに買ってるって言ってたじゃない」

「テヘッ、推しが猫耳着けてるらしくて買うしかないよね」

「しかも、研修費立替えカツカツって言ってたわよね、来月どうすんのよ！？」

「テヘッ、なんとかなるって、もやしと卵とバイトで」

「忘れてるかもしれないけど、ゴールデンウィークにあんたの長年の推しのライブもやるんでしょ！？　その金は！　ソウルでもコンサートあるのよ！！！」

「テヘッ、大丈夫、頭の片隅にはあるよ」

　母親に詰められる三十路イズ私。ただひたすら、しょうもない言い訳を重ねる。

　情けないが、仕方ない。これが私だ。ギリギリでいつも生きてるクソドルヲタなのだ。理性的な買い物をしたいが、推しの前では無力。

　そんな理性、塵（ちり）ほどの価値もない。

　それが、母親もわかってるのだろう、呆れたように息を吐くとジロリと私を睨む。

「まあでも、あんたがいないと困るから。頼んでおいて」

「さすが母上〜私よりもK-POP愛してる〜」

　でも、結局は母親一人で行くのは寂しがる。私はそれをよく知っている。

　私はニコニコと明後日の予定に、そのライブのチケッティングを組み込む。明日は出演者の発表だ。まあ、基本的に誰が出ようとも買うのだけども。

「今回も楽しむぞー！」

「はいはい」

　財布の中身的に買ってイイワケ（良いわけ）ではないけど、推しに会えるってだけで買ってイイワケ（良い訳）なのだ。

　そうイイワケ（言い訳）をして、私はまた宵を越す。