ドーナツの穴を開ける仕事をしているが俺はもう限界だ

狗法眼 春

ドーナツの穴の向こうに未来はない

ドーナツはビタミン、脂質、動物性タンパク質に富んだ理想の生物だ。

円盤状の身体の外周には肉が詰まっており、中心をくり抜くだけですぐに食肉加工出来る手軽さで愛されている。

俺たちは毎日こいつに穴を開ける仕事をしている。


コンベアから流れてきたドーナツの脚をカットし、殻を開き、口吻と内臓の詰まった中心部をくり抜く。

穴の空いたドーナツをコンベアに戻す。その繰り返しだ。

三十年も同じことを続ければ手際も良くなる。

脚を切断せずに脚の付け根、口吻、甲殻の硬い部分をまとめてくり抜く。

一撃で抜かないとドーナツ肉が傷むので限られた人間しか出来ない。

ただし上には報告しない。ノルマを増やすほど熱心じゃないんだ。


単純作業の8時間は恐ろしく長い。

何かを考えて気を紛らわせないと狂ってしまいそうだ。

手を動かしながら、小さい頃になりたかったものを思い出す。

何だったっけなあ。思考がぼやけたまま何も出てこない。

随分妄想にふけっていたはずだが、昼のチャイムも鳴ってないことに絶望する。


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ドーナツの穴を開ける仕事をしているが俺はもう限界だ 狗法眼 春 @poteto_tabetai

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