キヨラコへの言い訳(月光カレンと聖マリオ18)

せとかぜ染鞠

第1話

 自害した爆弾過激犯四宮しのみやから俺の日記を預かる中国人が殺され,彼を手にかけた女賊の娘も射殺された。狙撃手の大男を追跡し,オールナイト球場に来た俺は八百長を企てる軍人集団を倒し,ピッチャーと彼の息子を窮地から救ったが,VIPルームに気をとられる隙に胸を刺された。

 軍人集団の残党の腕をねじあげてジャックナイフを捨てさせる。命を守ってくれた7冊の日記が革ジャン内側から落ちた。

「見ぃつけたぁ!」記憶障害で7歳児に戻っている三條さんじょう公瞠こうどう巡査がマイク片手にVIPルームのベランダから手を振る。俺を叔母だと思って呼ばう三條にスポットライトの集まる背後で,ライフル銃を構える例の大男が慌てて姿勢を低めた。

 異変を察した観客たちが球場スタッフを呼ぶなど混乱が起きはじめた。

 口封じされると残党の軍人が震える。彼らに八百長依頼したのは,IT企業社長の魔導まどう招鬼まねきだという。VIPルームにいる男だ。狙撃手の雇い主も魔導らしい。祖国に軍資金をもたらすために魔導ととりひきしたと弁明する軍人を逃がし,先を急いだ。

 非常階段途中で足をとめて感極まる。

 意識のない三條を担ぐ大男の後方に,魔導に手びきされる色つき眼鏡をかける女がいる。

「四宮さんに日記を売らせたのは私をおびきよせ,爆死させるためですか」俺は語りかけた。「四宮さんが日記を預けたかたを殺させたのは彼が秘密を知ったせいですか。そして彼を殺した娘さんを狙撃させたのも彼女の口から事情が漏れぬようにするためですか。私への憎悪が多くの犠牲を生みました。全て私の罪です」後退し,踊り場でひざまずく。「決して捨てたのではありません。私がそばにいれば不都合が生ずる。ですから身をひいたのです。盗人が親になるべきではなかった。でも小さなあなたはかわいらしくて到底放置しておくことなどできませんでした」

 言い訳を連ね,18年間手塩にかけて育てたキヨラコへ申しひらきした。

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