第201話 やってみる?
青色掻き混ぜ棒で錬成
調合室で、水龍ちゃんは白樺茶ノ木の葉を加熱し、青色掻き混ぜ棒を使って錬成焙煎を始めると香りが立ち始めました。
「ほら、紅茶の香りがするでしょ?」
「ほうほう、確かに紅茶の香りじゃのう」
「青色掻き混ぜ棒で錬成焙煎すると、こんな風に変わるなんてビックリだわ」
「これほど劇的に変わるとは、面白いものじゃな」
そんな会話を楽しそうにしながら、水龍ちゃんは、青色掻き混ぜ棒へ魔力を流してゆっくりと白樺茶ノ木の葉っぱを掻き混ぜます。
「ばばさまもやってみる?」
「んん? わしがかの?」
「うん、おもしろいわよ」
「ふはははは。それじゃぁ、わしもやってみようかのう」
「なー!」
水龍ちゃんに誘われて、おばばさまは、予想だにしていなかったのでしょう少し驚いた顔をみせましたが、すぐにやる気になりました。トラ丸も応援しています。
水龍ちゃんは、切りの良いところで魔導コンロを止めて茶葉を冷ましている間に、おばばさまへ錬成
「ふむ、これが、ヒールジカの角で作ったというやつじゃな」
「そうよ。ミスリルと違った反応があっておもしろいわ」
おばばさまが、青色掻き混ぜ棒を手に呟くと、水龍ちゃんは今までいろいろ試してきた経験から面白さがあると笑顔で話します。
「これに魔力を通して……、むむぅ?」
「ん? どうしたの?」
「思ったよりも魔力が通りにくいのじゃ……」
「そう? そんなに気にならなかったけど?」
眉間に皺を寄せて魔力が通りにくいと唸るおばばさまに、水龍ちゃんは、あっけらかんと返しました。
「むぅ……、まぁ、とりあえず試してみようかのう」
「ばばさま、がんばって!」
「なー!」
唸りながらも試してみようと意気込むおばばさまに、水龍ちゃんとトラ丸は声援を送りました。
水龍ちゃんが、錬金釜の中のほどよく冷めた茶葉を布に乗せて、新たな白樺茶ノ木の葉を量って錬金釜へと入れたら準備完了です。
おばばさまは、魔導コンロのスイッチを入れて錬金釜の加熱を始め、やや緊張した面持ちで温度上昇を確認すると、青色掻き混ぜ棒へ魔力を流しながら白樺茶ノ木の葉っぱをかき混ぜ始めました。
「ばばさま、がんばって!」
「なー!」
額に汗を滲ませ、一生懸命に魔力を流すおばばさまに、水龍ちゃんとトラ丸は声援を送ります。
しかし、錬金釜の中は、ほとんど光を発することもなく、普通に白樺茶ノ木の香ばしい香りが立つばかりでした。
「むむむ……、やはり厳しいのう……」
おばばさまは、そう呟くと、青色掻き混ぜ棒へ魔力を流すのをやめて、魔導コンロのスイッチを切りました。
「ばばさま?」
「なー?」
水龍ちゃんとトラ丸が、どうしたのかという顔でおばばさまへ声を掛けるも、おばばさまは、じっと手にした青色掻き混ぜ棒を見つめて思案顔です。
「ふむ、もう一度、試してみても良いかの?」
「もちろんよ!」
「なー!」
何を思ったか、もう一度チャレンジすると言うおばばさまに、水龍ちゃんとトラ丸は嬉しそうに答えると、新しい白樺茶ノ木の葉を準備します。
錬金釜の白樺茶ノ木の葉を入れ替えると、おばばさまは、魔導コンロのスイッチを入れて錬金釜を加熱します。
ほどよく温度が上がったところで、なんと、おばばさまは、ミスリル製の掻き混ぜ棒と青色掻き混ぜ棒を束ねて錬金釜の白樺茶ノ木の葉を掻き混ぜ始めました。
すると、錬金釜の中の白樺茶ノ木の葉っぱが、ぽわぽわと淡い光に包まれて、しばらくすると香ばしい紅茶の香りが立ち始めました。
「ばばさま、紅茶の香りがするわ!」
「なー!」
水龍ちゃんとトラ丸は大興奮で、とても嬉しそうに声を上げました。
「うむ、予想通りじゃ。このヒールジカの角で出来た棒は、錬成
「錬成
「ぅな?」
おばばさまが、納得顔で見解を示すと、水龍ちゃんとトラ丸が小首を傾げました。どうやら錬成触媒という言葉が引っ掛かったようです。
「錬成
おばばさまによると、錬成触媒というのは、錬金術において錬成に影響する物質であるけれども、素材と違って錬成によって減少したり変化したりすることのない物質だそうです。
ちなみに、錬金術以外においても
錬成触媒には、素材との組み合わせで、錬成がものすごく速くなったり、少ない魔力で錬成できるようになる物のほか、今回のように、全く違った錬成結果が得られるようになる物もあるといいます。
「つまり、錬成するときに、錬成
「ふはははははは、面白い事になるときたか。まぁ、そんな感じの理解で構わんじゃろう」
水龍ちゃんが、なぜか瞳をキラキラ輝かせ、ざっくりと錬成
------------------------------------------------------------------------------
※本作品中の錬成
化学の世界では、「
本作品中では、錬成
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます