第192話 表彰式
猫の手カップ最終日。
水龍ちゃんとトラ丸は、朝からハンターギルドへとやって来て、朝ご飯にと屋台グルメを食べていました。
今日の朝食屋台グルメは、焼き魚とかぼちゃの煮物、みそ汁、漬物、ご飯の組み合わせです。
「お魚、おいしいわね~♪」
「な~♪」
美味しく朝ご飯を食べていると、ソレイユ工房のサラさんとニーナさんが、屋台グルメをトレーに乗せてやって来ました。
「おはよう、水龍ちゃん、トラ丸」
「きゃー! ご飯を食べるトラ丸ちゃん、かわいいー!」
「おはようございます」
「なー!」
サラさんの挨拶と、ニーナさんのトラ丸推しに、水龍ちゃんとトラ丸は、笑顔で挨拶を返します。
「一緒にいいかな?」
「もちろんです」
「やったー! トラ丸ちゃん、一緒にご飯食べようね!」
「なー!」
サラさんの相席の申し出に、水龍ちゃんが、にっこり笑顔で答えると、ニーナさんが嬉しそうにトラ丸へ声を掛け、トラ丸も嬉しそうに返事をしました。
さっそく、サラさんとニーナさんは席に着き、一緒にご飯を食べ始めました。
ニーナさんが、楽しそうにトラ丸へおかずのおすそ分けをすると、トラ丸も嬉しそうです。
「納品ですか?」
「ああ、それと、明日からの納品分のお客さんへの引き渡しをハンターギルドにお願いしてきたところだよ」
水龍ちゃんの問いに、サラさんが答えます。猫の手グッズの大半はソレイユ工房を中心に受注生産をしていて、ハンターギルドがお客さまの対応を一手に引き受けているため、サラさんはハンターギルドの職員達と密に連絡を取っているのです。
「猫の手カップも最終日ですもんね」
「そうだな。水龍ちゃんは猫の手カップをかなり楽しんでいたようだな」
「えへへ、ハントラリーとかグルメラリーとか、とっても楽しかったですよ」
「ふふっ、グルメラリーは私も納品後に楽しませてもらったよ」
水龍ちゃんとサラさんは、これまでの猫の手カップの日々を楽しそうに話します。その傍らでは、ニーナさんによるトラ丸の餌付けが着々と行われていました。
「今日は、最終日グルメというのを出している屋台があって、ひととおり食べてみる予定です」
「そ、そうか、食べ過ぎてお腹を壊さないようにな」
水龍ちゃんが本日の予定を話すと、サラさんは、ちょっと呆れ顔で食べ過ぎに注意してくれました。水龍ちゃんは、既にハントラリー番外編も終えているので今日はグルメ三昧の予定なのです。
朝食を終え、サラさん達と別れた水龍ちゃんとトラ丸は、最終日グルメを出す屋台をチェックしながら食べ歩きを満喫します。そんなにたくさん食べて、どこへ入るのかと不思議に思いますが、最終日限定と聞くと止まりませんでした。
お昼になり、猫の手カップ対象素材の納品が締め切られ、最終ポイントが集計されます。ポムさん達のパンプルムースもぎりぎり納品に間に合ったようで、やり切った顔をしていました。
ハンターギルド職員達が交代で昼休憩を取った後、猫の手カップの表彰式が行われるとあって、特設ブースの前には、かなりの人が集まってきました。
特設ブースのランキングボードは、一度すべて外されており、その前には小さな舞台が設置されていて、いよいよ結果発表の時がやって来ました。
水龍ちゃんとトラ丸は、プリンちゃんと一緒に舞台脇のスタッフサイドに陣取って見物です。
『第1回、猫の手カップ優勝は、白虎隊!!』
ハンターギルドマスターにより優勝パーティーが発表されると、場内は大歓声に沸きました。
ランキングボード1位には白虎隊の名前と獲得ポイント数が掲げられ、白虎隊のメンバーが舞台に上がると、割れんばかりの拍手が送られました。
そして、ハンターギルド職員により優勝メダルが送られ、ハンターギルドマスターより、優勝カップと優勝賞品としてヒールポーション1ケース(12本)および毒消しポーション1ケース(赤毒ポーション6本、青毒ポーション6本)が贈呈されると再び大きな拍手が送られました。
その後、2位、3位と順番に発表され、それぞれのパーティーに順位に応じたメダルや賞品を授与してゆきました。
ちなみに、2位の賞品はポーション詰め合わせ1ケース(ヒールポーション6本、赤毒、青毒の毒消しポーションを各3本)で、3位の賞品はポーション詰め合わせ1ケース(ヒールポーション4本、赤毒、青毒の毒消しポーションを各4本)です。もちろんポーションケースは猫の手印が付いたものです。
さらに4位から8位までを入賞としていて、賞状と賞品が贈られます。ちなみに、4位から8位までの入賞賞品は、すべて等しくポーション詰め合わせ(ヒールポーション1本、赤毒、青毒ポーションを各2本を箱詰め)です。
『第8位は、ルージュアイ、および、パンプルムース。同一ポイント数獲得により第8位は2パーティーの受賞とする』
なんと、8位は同点で2パーティーが受賞することとなり、会場からはどよめきの声が上がりました。賞品については、こんなこともあろうかと、水龍ちゃんが密かにバックパックに忍ばせておいた予備を当てて事なきを得ています。
舞台に所狭しと並び立つ2つのパーティーの中には、瞳をキラキラ輝かせたポムさんの姿もありました。
「猫の手カップも大成功だなー!」
「うふふっ、とっても嬉しいわ。だけど、こんなに大きなイベントになるなんて思ってなかったわ。プリンちゃんがいろいろ動いてくれたおかげね」
プリンちゃんの言葉に、水龍ちゃんは正直な気持ちを伝えました。
「ふははははははー! 商人達を動かすほどの集客があったからなー! 水龍ちゃんとハンターギルドが、それだけの企画を作って実行して見せたからだぞー!」
「それでも、会場の移転やたくさんの屋台が出店したのに、たいしたトラブルもなかったのはプリンちゃんたち商業ギルドのおかげだわ」
プリンちゃんと水龍ちゃんは、猫の手カップの企画から規模拡大までのことを思い出すように語りました。
「表彰式が終わったようだぞー! あとは、後夜祭だなー!」
「そうね、プリンちゃんも一緒に楽しみましょ!」
「なー!」
表彰式が終わると、屋台を中心に皆お祭り気分で賑わいます。まだ昼間だと言うのに酒を飲み始めるハンター達もいました。
そして、夜になると後夜祭が始まり、花火が打ち上げられるなど、いっそうの盛り上がりを見せました。
水龍ちゃんとトラ丸もプリンちゃんと一緒に後夜祭の花火を楽しみます。後夜祭には、おばばさまやマーサさん、美発部のお姉さん達やソレイユ工房のみんなもやってきて、楽しいひと時を送るのでした。
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