第191話 残り3日

 猫の手カップは、後半戦も特設会場の賑わいが衰えることはありません。水龍ちゃんとトラ丸は、ハントラリー番外編や日々変化するグルメラリーを毎日楽しんでいます。


 そして、エンジェルパックやウルつや化粧水、各種イベントグッズの売れゆきは日を追う毎に増してゆきました。




 今日も水龍ちゃんとトラ丸は、朝から特設会場へとやって来ました。ヒールポーション作りの仕事はお休みです。


 朝食に、から揚げと天ぷらそばを購入して、水龍ちゃんとトラ丸は、フードコートで美味しく食べ始めました。


 美味しく朝食をいただいていると、会場にアナウンスが流れました。


『猫の手カップ投票券の販売は、本日で終了となります。夕方以降は混雑が予想されますので、なるべく早めにお買い求め頂きますようお願い致します』


「今日で、投票券販売が終了のようね」

「なー」


 水龍ちゃんとトラ丸は、フードコートで天そばを食べながら、のんきにアナウンスについて話します。


 猫の手カップ本戦で、優勝パーティーを当てる優勝投票券のほか、1位と2位を当てる連勝投票券、そして10位をズバリ当てる10位投票券の3種類が販売されています。


 そして、猫の手カップ最終日の3日前の本日、とうとう投票券の販売が終了するのです。


 水龍ちゃんは、あまり興味がないようですが、猫の手カップ本戦の方は、上位パーティーの獲得ポイントが拮抗していて、どこのパーティーが優勝してもおかしくない状況なのです。


 おかげで、今日まで投票券の購入を控えていた人たちがランキングボードを前にして頭を悩ませているのですが、水龍ちゃんとトラ丸は、全く気にするようすもありません。



 朝食を済ませた水龍ちゃんとトラ丸は、ダンジョンで食べるお昼ご飯を買うために屋台を巡りました。もちろん、グルメラリーの紙は忘れていません。


「おや? 水龍ちゃんじゃありませんか」

「おはよう、水龍ちゃん、トラ丸」

「ポムさん、フランさん、おはようございます」

「なー!」


 そこへ声を掛けてきたポムさんとフランさんに、水龍ちゃんとトラ丸は、挨拶を返しました。


「ここで会ったが、おはようございます。そして、見ていてください。必ずやヒールポーションを手に入れて見せますからね」

「あと2つ以上順位を上げないとだけどね」


 ポムさんが、なんの脈絡もなくヒールポーション獲得宣言をすると、フランさんが軽く突っ込みを入れました。


 ポムさん達のパーティー、パンプルムースは、現在ランキング10位で、8位入賞を果たすとヒールポーションが手に入るところにいるのです。


「ふん、8位と9位の差など、微々たるものです。残り3日で必ずや追い抜いて見せますよ!」

「ポムさん、気合十分ですね。頑張ってください」

「なー!」


 ポムさんが、鼻を鳴らして意気込みを見せると、水龍ちゃんとトラ丸が、応援の言葉をかけました。


「10位でも十分実力以上の力を発揮しているんだけどね」

「何を言ってるのですか? そんなことではヒールポーションは手に入りませんよ」


 フランさんが、パンプルムースの実力的には十分だと零しますが、ポムさんは、どうしてもヒールポーションを手に入れたくて仕方がないようです。


「そうね、最後のひと踏ん張り、ポムのためにも頑張りますか」

「さぁ、食料を買い込んだら出発しますよ!」


 フランさんも最善を尽くそうと気持ちを前向きに示すと、ポムさんに促されて屋台グルメを買い込みに向かいました。屋台グルメは、おそらく今日のご飯にするのでしょう。


「ほかのパーティーもあんな風に気合が入ってるんだろうね」

「なー」


 水龍ちゃんが、ポムさんとフランさんの背中を見送りながら呟くと、トラ丸が、そだねー、とのんきに答えました。


 そこへ、アーニャさんが現れました。


「水龍ちゃん、トラ丸、おはよう」

「アーニャさん、おはようございます」

「なー!」


 アーニャさんと水龍ちゃん、トラ丸は、陽気に挨拶を交わします。


「そういえば、レア素材の納品状況は、どんな感じなの?」

「猫の手カップの対象素材のこと?」


「ええ」

「うふふっ、どこのパーティーも頑張ってくれて、予想以上に納品されているわよ」


 水龍ちゃんが尋ねると、アーニャさんが嬉しそうに教えてくれました。


「そっか。今ね、ポムさんとフランさんに会ったんだけど、ポムさん、すっごく気合が入っていたから、みんな頑張ってるんだなぁって」

「そうね。パンプルムースは特に頑張っているわね。そのおかげなのか、上位パーティーのみんなもうかうかしてはいられないなってやる気になっているみたいなの。おかげで、各種レア素材の納品数も勢いが止まらないのよ」


 どうやら、パンプルムースの頑張りが刺激となり、ほかのパーティーも俄然やる気になって、競うようにレア素材を採ってくるようになっているようです。


「猫の手カップ本来の目的が達成できそうで良かったわ」

「ええ、既に当初の見込み以上のレア素材が納品されているもの、猫の手カップは大成功だわ」

「なー!」


 アーニャさんの大成功発言に、なぜかトラ丸が、ドヤ顔で声を上げるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る