第190話 2倍です

 さて、エンジェルパックの生産についてですが、おばばさまの家で必要な素材や瓶の在庫を確認しながらみんなで話し合った結果、とりあえず、1日の生産量を予定していた量の2倍に増やすことになりました。


「2倍とは言わず、3倍でも5倍でも作ってみせるわよん♡」


 マーサさんは、不服ととばかりに鼻を鳴らして言いました。


「3倍も5倍も作ってる時間はないだろー!」

「病院の仕事を辞めれば、余裕だわよん♡」


「午後からの半日勤務にしたばかりだろー! それに素材の手配も追い付いていないではないかー! 生産を増やすにしても段階を踏むべきだぞー!」

「むぅぅん♡ 仕方ないわねん♡」


 プリンちゃんの指摘に、マーサさんは、少し面白くなさそうに口先を尖らせて渋々承諾しました。


 マーサさんは、中央病院でフルタイムで働いていたのですが、エンジェルパックの発売に伴い半日勤務(残業込み)に勤務時間を短縮したのです。本当は、病院勤務を辞めたかったマーサさんですが、病院側の引き留めからのプリンちゃん采配で半日勤務に落ち着いたのでした。


 打ち合わせが終わると、マーサさんは、さっそくエンジェルパックの生産を始め、水龍ちゃんとトラ丸は、プリンちゃんと一緒に家を出ました。


 もう夕方ですが、今日の晩ご飯は屋台グルメにしようということで、水龍ちゃんとトラ丸は、買い物かごを持って猫の手カップ会場へ買い出しに向かうのです。


「美肌ポーションの使用量が増えるけど、大丈夫かー?」

「ふふっ、今日ね、新しい水くらげ草の群生地を見つけたのよ。だから、もっとたくさん使ってもらっても平気だわ」


 ハンターギルドへの道すがら、プリンちゃんは、美肌ポーション不足の心配を口にしましたが、水龍ちゃんが洞窟の群生地の話を持ち出して自信満々に大丈夫だと答えました。それを聞いて、プリンちゃんも安心したようです。


 ハンターギルドの猫の手カップ会場へ着くと、水龍ちゃんとトラ丸は、プリンちゃんと別れて晩ご飯の買い出しを始めました。


「あら? 水龍ちゃんとトラ丸じゃない」

「やっほー」

「ふふっ、屋台グルメを買っているのね」


 美発部のお姉さん達が、水龍ちゃんとトラ丸を見つけて声を掛けてきました。美発部のお姉さん達は、猫の手カップが始まってから屋台グルメを晩ご飯にすることが定着していて、彼女たち3人は今日の買い出し組のようです。


「ばばさまと相談して、今日は屋台グルメにしようってことになったんです」

「ふふっ、それじゃぁ、今日は、みんなで屋台グルメパーティーね」

「なー!」


 水龍ちゃんが肯定すると、お姉さんは嬉しそうにパーティー発言をして、トラ丸が大喜びです。


「そうだそうだ、水龍ちゃん、見て見て~」

「あっ、猫の手グッズのハンカチ!」


 お姉さんが嬉しそうに見せてくれたのは、小さな猫の手印の刺しゅうが入ったハンカチです。


「注文してたのが、今日、ようやく出来上がったの。猫の手の刺しゅうが可愛らしくて気に入っちゃったのよ」

「私達も色違いで買ったのよ。素敵よね」


 お姉さん達3人は、色違いのハンカチを出して嬉しそうに話します。


 イベントグッズは、ハンカチやリボン、ポーチなどの布製品に猫の手印の刺しゅうを入れた小物がいくつかあって、色違いも用意してバリエーションを増やしていたりします。ハンター向けかどうかは別として、値段も手ごろで結構注文が入っているようです。


 ちなみに、ハンター向けと言ってよさそうなイベントグッズとしては、革手袋や革袋などの革製品に猫の手印の焼き印を押したものや、刀身に猫の手印の刻印を入れたナイフなどがあり、かなり注文が入っていたりします。




 水龍ちゃんとトラ丸は、お姉さん達と一緒に屋台を巡り、晩ご飯としては十分な量の屋台グルメを買い込んで帰宅しました。


 テーブルいっぱいに屋台グルメを載せて食事の準備完了です。水龍ちゃんが買った分もお姉さん達が買った分も全部並べて好きなものを取って食べるスタイルです。


「「「「「「いただきます」」」」」♡」

「なー!」


 さっそくみんなでグルメパーティー?が始まりました。もちろん、おばばさまもマーサさんも一緒です。世話好きのマーサさんは、あっちこっちへ屋台グルメを配り歩いているほどです。


「マーサさんのエンジェルパック、もう売り切れたんですってね」

「そうなのよん♡ ウルつや化粧水の評判もすごく良くって、お客様は、すぐにエンジェルパックに興味を示してくれたのよん♡」


 お姉さんがエンジェルパックの話を切り出すと、マーサさんは嬉しそうに発売時のようすを教えてくれました。


「やっぱり同じ猫の手シールを貼っているのが良かったのかな?」

「そうね、猫の手シール可愛いし」

「ウルつや化粧水が、発売からこんなに売れてるのも猫の手印の効果があってのことだしね」

「猫の手ブランド効果ってやつ?」

「そうねん♡ 猫の手ブランド効果は絶大だわん♡」


 お姉さん達とマーサさんは、猫の手ブランド効果だと言って盛り上がります。


「ふふっ、今日、エンジェルパックを買って試した人は、ビックリするわよ」

「そうよね。私もこないだサンプルとしてもらったエンジェルパックを使ったら、お肌がぷるっぷるのつやっつやになって驚いたもの」

「うんうん、パックの前と後で、お肌が別物みたいだったわね」

「一度、使ってしまったら、もう手放せないわ」

「うふっ♡ みんな嬉しいこと言ってくれるわねん♡」


 お姉さん達とマーサさんが、楽しく食事をしながら、そんな話をしていました。実のところ、お姉さん達は、マーサさんからおすそ分けとしてエンジェルパックを貰っていて、既にその効果を確認済みなのです。


 楽しく食事を終えると、マーサさんはエンジェルパックの生産を再開し、お姉さん達もウルつや化粧水の生産を頑張るのでした。

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