5.水龍ちゃん、猫の手カップ大成功に大喜びです

第185話 投票券販売

 猫の手カップが開催されて数日が経ちました。水龍ちゃんとトラ丸は、毎日ハントラリーやグルメラリーを楽しんでいます。そして、お仕事の方は2日に1度、美肌ポーションとヒールポーションを作りにダンジョンへ通っていました。


 今日も、お仕事を済ませた水龍ちゃんとトラ丸は、猫の手カップを楽しむために特設会場へとやって来ました。


 猫の手カップ特設ブース中央では、ちょうどランキングボードの更新が行われていて、ハンター達で賑わっていました。


「水龍ちゃん、猫の手カップを楽しんくれているかな?」

「ギルマス、こんにちは。毎日、すごく楽しんでるわ」

「なー!」


 ハンターギルドマスターに声を掛けられた水龍ちゃんは、にっこり笑顔で楽しそうに答えました。トラ丸も元気に答えます。


「うんうん、トラ丸も楽しんでいるようで良かったよ」

「ランキング更新ですね」


「ああ、概ね予想通りのランキングだが、パンプルムースが、かなり頑張っているようだぞ」

「ポムさんのところね」

「なー……」


 ギルマスの話では、ポムさんとフランさんのいるパンプルムースが頑張っているようで、現在、10位にランクインしていますが、トラ丸は、だいじょうぶかなぁ…… と心配顔です。


「パンプルムースは、10位当ての投票券で人気が急上昇しているぞ」

「ふぅん、そうなのね」


「どうだ? 水龍ちゃんも投票券を買ってみないか?」

「いらないわ。はずれたら大変じゃない。そんなお金があるなら、おいしい物を買って食べるわ」


 ギャンブルの誘いをすぐに断られてしまい、ギルマスは苦笑いなのでした。


 投票券には、普通に優勝パーティーを当てる優勝投票券のほか、1位と2位を当てる連勝投票券、そして10位をズバリ当てる10位投票券の3種類が販売されています。


 『なんで10位なの?』との問いには『面白いから』との回答でしたが、意外と売れ行きが良いそうで、大穴狙いのギャンブラーが好んで買っているとのことでした。


 ちなみに、現在、ランキング1位は、『アックスボンバー』というパーティーで、僅差で『白虎隊』、『クロレンジャーズ』が続いています。


「う~ん、そろそろ投票券を買った方が良くね?」

「いやいや、もう少し後の方がいいだろ」

「後になればなるほど、手数料が高くなるじゃねぇか」

「でも、後で買う方が、それだけ新しいランキング情報が手に入るんだよな」

「う~ん、いつ買うのがいいのか、悩ましいなぁ……」


 ランキングボードの前にいた若者たちから、そんな話が聞こえてきました。彼らは投票券をどのタイミングで買おうか決めかねているようです。


 実のところ、投票券の販売は、猫の手カップ開催3日目までは手数料を取らないのですが、4日目以降は購入手数料が掛かるのです。


 ランキングボードに順位や獲得ポイントが表示されていて、日々情報が更新されるため、締め切りに近い日に買う方が当たり易いに決まってます。すると、投票券販売の最終日に購入する人が殺到してしまうため、購入日を分散させるために日を追うごとに手数料を増やしていくのが慣習となっているのです。


 手数料を多めに払ってでも当てるために投票券販売の締め切りぎりぎりまで待つことも出来ますが、払い戻し倍率が低い場合には、ほとんど儲けが出なかったり、赤字になってしまうこともあるため、買い時の判断も大切になってくるのです。


「優勝パーティーを予想するのが楽しいのだろうけど、そんなことにお金を掛ける気にはなれないわね」

「なー」


 水龍ちゃんの呟きに、トラ丸が、そだねー、と同意すると、ギルマスはちょっと寂しそうな顔をするのでした。




 水龍ちゃんが、新たに企画されたオレンジ色のグルメラリー用紙をもらって、対象グルメを探していると、サラさんの姿を見つけました。


「サラさんもグルメラリーですか?」

「ああ。イベントグッズの納品を済ませて、ちょっと息抜きにな」


 軽く挨拶を交わしてから水龍ちゃんが尋ねると、サラさんは、手にした青色グルメラリー用紙をかざして微笑みながら答えてくれました。


 そして、一緒に屋台を回り、それぞれ屋台グルメを買って、新たに整備されたフードコートに陣取りました。


 ちなみに水龍ちゃんは、トレーを家から持ってきていてドーナツとワッフルにフレッシュジュースを購入しました。やはりトレーがあると便利です。


「イベントグッズの売れ行きはどうですか?」

「絶好調だよ。思いのほか、ぬいぐるみの受注がすごくてな。既に2ヶ月待ちの状況だよ」


 水龍ちゃんが、ドーナツを食べながら問いかけると、サラさんが、ハンバーガーを手に嬉しそうに話してくれます。


 ぬいぐるみは、可愛いものをというニーナさんとミリアさんの意見に水龍ちゃんも賛同して、猫、狼、兎、鳥、トカゲの5種類を用意しました。


 どのぬいぐるみも、胸元に猫の手印を名札のように付けていて、とても可愛らしく作られていますが、モフモフ感や肌触りを追及していてクオリティーが高く、その分値段も高いのです。


「ぬいぐるみ達が売れてよかったですね」

「ああ。正直、こんなに売れるとは思わなかったからな」


 水龍ちゃんの言葉に、サラさんは正直な気持ちを話してくれました。


 ぬいぐるみ達は、イベントグッズ売り場に華やかさが出ることを期待したもので、お値段が張る分、あまり売れるとは思っていなかったため、多くの注文が入ってビックリなのです。


 猫の手印入りのメモ帳やポーションケースなど、ほかのイベントグッズも予想以上に注文が入っているそうです。


「イベントグッズの受注販売、大成功だな」

「ふふっ、商売繁盛で嬉しいわ」

「なー!」


 サラさんが満面の笑顔で言うと、水龍ちゃんとトラ丸は、素直に嬉しさを伝えるのでした。

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