第149話 評価結果

 中央病院の魔道具を使わせてもらい、美肌ポーションの毒性評価を行っている間、水龍ちゃんは、ほかの魔道具についてマーサさんに簡単に説明してもらいました。


 マーサさんの分かり易い魔道具の説明に、水龍ちゃんとトラ丸が、うんうん、なーなーと、適度に相槌を打ちながら聞き入っていると、美肌ポーションの毒性評価をしていた魔道具から、ピロリロリ~ンと音が鳴りました。


「うふふっ♡ 美肌ポーションの毒性評価結果が出たようねん♡」


 水龍ちゃん達が、ワクワクしながら毒性評価魔道具へと向かうと、おばばさまと話をしていた職員の人達も含めてみんな集まって来ました。


「これが、結果よん♡ 予想通り、まったく問題なかったようねん♡」


 マーサさんが魔道具の隣にある四角い箱から出て来た紙を取って皆に見えるように机の上に置きました。そこには、評価項目と評価結果がずらりと並んで記されています。おばばさまも毒性評価の結果をみて満足そうです。


 そして、世話好きなマーサさんが、水龍ちゃんに、評価結果の見方を丁寧に教えてくれました。


 マーサさんの説明も終わり、今日の目的である美肌ポーションの毒性評価が問題なく終了したところで、水龍ちゃんが、口を開きました。


「えっと、これも毒性評価をしたいんだけど、いいですか?」


 そう言って、バックパックから取り出したのは、ヒール草から作った黄色いポーションです。


「んまぁ♡ これって、ハイポーションかしらん♡ だったら既に研究データがあるはずよん♡ 改めて毒性評価する必要はないわ♡」

「ハイポーションじゃなくって、私が作った研究中のポーションよ。まだ完成してないけどダメかしら」


「んまっ!?♡ これを天使ちゃんが作ったの!?♡」

「そうよ。怪我を治す効果があるのは分かってるんだけど、毒性がないか確かめておきたいの」


「怪我を治すって……♡ いいわ!♡ 毒性評価してみましょう♡」

「やったー!」

「なー!」


 色合いからハイポーションと勘違いされたようですが、ちゃんと水龍ちゃんが作ったものだと説明して、毒性評価をすることになりました。水龍ちゃんとトラ丸は大喜びです。


 おばばさまと職員達の注目を浴びながら、水龍ちゃんはマーサさんと一緒にヒール草から作った黄色いポーションを試験管に入れて、毒性評価の魔道具へとセットしました。


「ポーションセット良し!」

「なー!」


 水龍ちゃんが、ちゃんと試験管をセットしたことを指を差して確認すると、トラ丸も水龍ちゃんを真似るように猫手を指して鳴き声を上げました。


 そんな仕草を皆が微笑ましく見つめる中、水龍ちゃんは、そっと魔道具の引き出しを閉めました。


「さぁ、天使ちゃん♡ ぽちっと押しちゃってん♡」

「はーい。ぽちっと!」

「なー!」


 水龍ちゃんが、魔道具の起動ボタンを押すと、緑色のランプがつきました。あとは結果を待つだけです。


「それにしてもハイポーションにそっくりなポーションよねん♡ 怪我を治す効果があるって言ってたけど、まさか、自分で試したりとかしてないわよね?♡」


 魔道具が正常に動き出したのを確認して、マーサさんが、ちょっと心配そうに尋ねてきました。


「ん? 怪我した魔獣で試したのよ。あと、ダンジョンで死にそうになってた人に研究中ですけどって、伝えてから使ってもらったかな?」

「えっ!?♡ 魔獣は分かるけど、人間で試したの!?♡」


 水龍ちゃんが、黄色いポーションを試した話をすると、マーサさんは、ぎょっとした顔で驚きの声を上げました。聞いていた職員さんも目を見開いて驚いていました。まさか、毒性評価もしていないポーションを人に使ったとは思わなかったようです。


「研究中だから何が起こるか分からないと言ったんですけどね、——」


 水龍ちゃんは、ダンジョンでパンプルムースというハンターパーティーに出会った時のことを話しました。彼らは、回復魔法を使えるフランさんが瀕死の重傷を負っていて、ポーションを使い果たしてしまって焦っていたです。水龍ちゃんは、仕方なく研究中の黄色いポーションを渡し、フランさんは元気に回復したのでした。


「そういう事情があったのねん♡」


 水龍ちゃんの説明に、マーサさんは、ほっと胸をなでおろしたようです。


「瀕死の重傷から元気になったって、やっぱりハイポーションなのでは……」

「ハイポーション並みの治癒効果か……」


 後ろで話を聞いていた病院の職員達が、小さな声で呟いていて、なぜかトラ丸が胸を張ってドヤ顔をしていました。


 そんな話をしているうちに、毒性評価の魔道具から、ピロリロリ~ンと完了を告げる音が鳴りました。


 水龍ちゃんは、魔道具と接続されている隣の箱から出て来た紙を取って結果を確認します。


「どうかしらん?♡」

「うん、毒性はないみたい」


 マーサさんが、優しく尋ねると、水龍ちゃんはにっこり笑顔で答え、結果の書かれた紙を手渡しました。マーサさんを筆頭に病院の職員達も順に確認してくれました。


 良い結果を得られて上機嫌な水龍ちゃんは、マーサさんと使った試験管を取り出して後片付けを始めました。


「あのう、よろしかったら、その黄色いポーションの治癒効果について我々の方で調べさせてもらえませんか?」

「えっ?」


 ちょうど後片付けが終わったところで、中央病院の職員の1人から思わぬ話を持ち掛けられ、水龍ちゃんは、きょとんと呆けた声を漏らすのでした。

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