第144話 部長就任?
薬師ギルドのお姉さん達に強引に美発部部長を押し付けられそうになったミランダさんは、彼女たちの勢いに負けることなく、冷静に部長の話はお断りだと告げたのでした。
「「「「ええーっ」」」」
「ミランダさんしか、美発部をまとめられる人はいないですよぉ」
薬師ギルドのお姉さん達が、ブーイングにも似た声を上げ、そのうちの1人が、皆の思いを代弁しました。
「あのなぁ、倶楽部活動を始めたから参加しないかと誘ってくれたのはいいが、どんな倶楽部なのかの説明も一切ないままで、いきなり部長就任とか言われて、はい、そうですかと引き受ける訳がないだろう」
しかし、ミランダさんが、呆れたようすで腰に手を当て、お説教とばかりに至極真っ当なことを言うと、お姉さん達は、しゅんとして何も言い返せませんでした。
「ふはははは、お前さんの言うことももっともじゃ。こ奴らは、ちとやり過ぎたようじゃのう」
「おばばさままで……。ミランダさん、ごめんなさい」
「「「「ごめんなさい」」」」
おばばさまにもやり過ぎと言われ、お姉さん達は、素直にミランダさんに謝罪しました。
「まぁ、部長の話は置いといてじゃな、お前さんも薬師ギルドをクビになって暇じゃろう。我々の倶楽部活動に参加してはどうかの?」
「取りあえず、どんな倶楽部で、どのような活動をするのか、詳しい話を聞かせてもらいたいな」
おばばさまが改めて誘うと、ミランダさんは、先ほどまでのことは水に流したようで、引きずることも無く詳しい話を求めました。
まだ、発足間もない美発部について、おばばさまの提案から始まったことや『ゆるく楽しく美しく』をモットーに活動しようと決めたことなどを話しました。
「本当に始めたばかりなんだな……。だが、大丈夫なのか? 商品開発なんて簡単にいうが、勝算はあるのか?」
「えーっとぉ……」
「どうかしら?」
「根性?」
話を聞いて、ミランダさんが、真面目な顔で勝算なんて口にするものですから、お姉さん達は、困った顔をしたり、あまり気にしてなかったり、挙句の果てには根性論が出てきたりと、まともな答えは返ってきませんでした。
「ふはははは、お前さんは真面目じゃのう。倶楽部活動なのじゃから、楽しめれば良いのじゃよ。勝算も何もいらんのじゃ」
「しかし、それでは……。いや、そうか。だから倶楽部活動なのか……」
おばばさまの言葉に、ミランダさんは、一瞬反論しようとしたようですが、すぐに何かに気付いたみたいで、少し考える仕草で小さく呟きました。
「そういうことじゃ。緩いくらいのノリで楽しむのが、この倶楽部活動の醍醐味なのじゃよ」
「なるほどな……」
おばばさまが、微笑みながら美発部の本質を分かり易く述べると、ミランダさんも得心がいったようです。
「それで、どうじゃ? 息抜き程度にちょうどええぞ」
「ふふっ、息抜きか。悪くないな。私も参加させてもらおうか」
再度、おばばさまに誘われて、ミランダさんは、軽く笑みを浮かべて参加を決めました。お姉さん達からは、やったー、と歓声が上がり、水龍ちゃんとトラ丸も嬉しそうです。
「それでは、部長を決めたいと思いまーす」
「はい! ミランダさんを推薦します!」
「「「「賛せーい!」」」」
すぐに部長を決める流れとなり、お姉さん達が一丸となってミランダさんを推しました。
「おい、お前ら!」
「わしも賛成じゃな」
「私も賛成よ」
「なー!」
ミランダさんが、抗議の声を上げるも、おばばさまと水龍ちゃん、そしてトラ丸までもが賛成の声を上げました。
「んなっ!?」
「全会一致で、ミランダさんの部長就任が決まりましたー!」
「「「「わー」」」」
パチパチパチパチ!!
ビックリ仰天するミランダさんに、お姉さん達の畳みかけるような宣言と歓声が上がりました。
「どうしてこうなった?」
こうして、見事、美発部部長に就任することとなったミランダさんが、小さく呟く傍らで、なんだかんだと脱線しがちなお姉さん達は、これで安心して部活動に励むことができると喜ぶのでした。
そして翌日。早起きした水龍ちゃんとトラ丸は、昨日作ったヒール草のポーションを保管したポーションケースを開けてみました。
「あ! まだ、キラキラが残ってる!」
「なー!」
水龍ちゃんが、嬉しそうに声を上げると、トラ丸も わーい! と喜びました。ポーションケースの中の半分くらいが、キラキラ感が残っているようです。
今まで、いくつもの素材を使って、ヒール草のポーションを作って来ましたが、いつも翌朝にはキラキラ感が消えていたので、これは大きな変化といえるでしょう。
「どれも美肌ポーションを混ぜて作ったポーションね。ふふっ、これなら、きっと治癒効果が残っているに違いないわ」
「なー」
水龍ちゃんが小さな拳をきゅっと握りしめて、嬉しそうに呟くと、トラ丸も そだねー と、相槌を打ちます。
「ふふっ、俄然やる気が出て来たわよ! さぁ、新しいポーションの完成に向けて、今日もがんばるわよ!」
「なー!」
ふんすとやる気を漲らせる水龍ちゃんに、トラ丸は、がんばれー! と声援を送るのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます