3.水龍ちゃんと黄色いポーション
第141話 久しぶりのお花畑
水龍ちゃんとトラ丸が、久しぶりにダンジョンにあるヒール草のお花畑にやって来ると、ヒールジカちゃん達が元気よく集まって来ました。
「みんな、久しぶりねー」
「な~♪」
水龍ちゃんが、寄って来た3頭のヒールジカちゃん達を順に撫でると、ヒールジカちゃん達は、トラ丸と一緒に辺りを楽しそうに跳ねまわります。
「ふふっ、トラ丸も嬉しそうでなによりだわ」
水龍ちゃんは、楽しそうに遊ぶトラ丸とヒールジカちゃん達を優しく見つめながら呟くと、バックパックを下ろし、敷物を敷いてポーション錬成の準備を始めました。
「むふっ、今日はとっておきの素材を持ってきたのよ。どんなポーションができるのか楽しみだわ」
水龍ちゃんは、ポーションバックから取り出した美肌ポーションを手に取り、むふふと不敵な笑みを浮かべました。
「さぁ、始めるわよ!」
久しぶりにヒール草のポーション錬成を行うので、水龍ちゃんは、ふんすと気合が入っています。
水龍ちゃんは、ヒール草を採取してみじん切りにすると、錬金釜へ投入し、魔法で水を出して注ぎ入れます。
そこへ、計量スプーンを使って美肌ポーションを少量入れると、水の温度をゆるりと上昇させながら、青い掻き混ぜ棒に魔力を込めて、ゆっくりと掻き混ぜてゆきました。
すると、錬金釜の中の水がだんだんと黄色く染まってゆき、ぽわわと淡い光を放ち始めました。
「ん? なんだか以前と違う感じね。ふふっ、楽しくなってきたわ」
水龍ちゃんは、そう呟きながら、さらにポーション錬成を続けます。しばらく掻き混ぜていると、錬金釜の中のぽわわとした淡い光が消えてゆきました。
「う~ん、ポーション錬成が終わったみたいね……」
水龍ちゃんは、ポーション錬成の手を止めると、青い掻き混ぜ棒を取り出して、錬金釜を敷物の上に置きました。
そして、ポーションケースから空のポーション瓶を2つ取り出し、蓋を開けてそのうち1つを手に持ちました。
それから水龍ちゃんは、水流操作で錬金釜の中のポーションをヒール草が混ざったまま空中に浮かせると、人差し指をピッと立てて、ひょいひょいっと動かしました。
すると、空中に浮かせたヒール草混じりでキラキラ感のあるポーションから、細い水の流れが立ち上り、くるくると螺旋を描きながら降りて来て、手にしたポーション瓶の中へと、きれいにろ過されたポーションが注がれてゆきました。
2つのポーション瓶へとろ過したポーションを注いで、蓋を閉めれば完了です。
「うん、なんだか以前よりもキラキラが増したような気がするわ」
水龍ちゃんは、ポーション瓶を手に取り、まじまじと見つめながら呟きました。出来立てのポーションは、きれいな透き通った黄色をしていて、光の反射でしょうか、全体にキラキラして見えます。
そんな水龍ちゃんのところへと、ヒールジカちゃん達がトラ丸と共に寄って来ました。お目当ては、ろ過して残ったヒール草のようで、キラキラした目で見つめています。
「ふふっ、ちょっと待っててね」
水龍ちゃんは、そう言うと、空中に浮かんだままにしてあったポーションをたっぷり含んだヒール草を水流操作で3つに分けて、ヒールジカちゃん達の口先へと差し出しました。
「はい、食べていいわよ」
「なー」
水龍ちゃんとトラ丸の声で、ヒールジカちゃん達は、一斉にパクっと小さなヒール草の塊へ食いついて、むしゃむしゃと美味しそうに咀嚼します。
「美肌ポーション入りだから、あなた達のお肌も綺麗になるかもしれないわね」
「なー」
水龍ちゃんが、ヒールジカちゃん達を撫でながら呟くと、トラ丸も、そだねー、と声を上げました。
「さぁ、また出来たら食べさせてあげるから、トラ丸と一緒に遊んでおいで」
「な~♪」
水龍ちゃんの声に、ヒールジカちゃん達は再びトラ丸とお花畑を駆け回ります。
それからしばらく、水龍ちゃんは、美肌ポーションの分量を変えたヒール草のポーションをいくつか作り、さらには、まだ試していなかった素材を使ってヒール草のポーション研究を続けました。
もちろん、ろ過して残ったヒール草は、ヒールジカちゃん達が、喜んでむしゃむしゃと食べました。
お昼ご飯に、早朝屋台で買ったサンドパンを食べてから、水龍ちゃんとトラ丸は、またね、とヒールジカちゃん達に挨拶をして、お花畑を後にしました。
お昼からは、美発部向けの素材探しをして、帰る頃合いに見つけた大きなクマの魔獣を捕まえてダンジョンを出るのでした。
水龍ちゃんは、大きなクマの魔獣を頭の上に持ち上げたまま、魔物ショップを訪れました。
「あ! ようやく見つけました!」
魔物ショップの前にいた魔法使い風の少女が、水龍ちゃんを指差し、大きな声で叫ぶびました。少女の隣には、白いローブを纏ったお姉さんがニコリと笑顔で水龍ちゃんを見つめています。
「ん? 誰?」
「なぅ?」
水龍ちゃんとトラ丸は、行く手を遮るように仁王立ちする魔法使い風の少女の前で立ち止まると、小首を傾げるのでした。
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