第140話 美発部発足
おばばさまが、薬師ギルドのお姉さん達に、美容商品開発を倶楽部活動でやってみるかと提案すると、お姉さん達は驚きの声を上げました。
「それって、私達が美肌ポーションの研究をするってこと?」
「じゃなくて、美肌ポーションを使った美容商品開発をするってことでしょ?」
「なんかおもしろそう!」
「でも、出来るかなぁ……」
お姉さん達の反応は様々です。
「なぁに、みんなでアイデアを出し合って実験をしてみるだけじゃよ。むろん、失敗することも多いじゃろうが、倶楽部活動じゃ、気楽にやってみるとええ」
おばばさまは、微笑みながら、お姉さん達の背中を押すように、気楽にやるよう促しました。
「う~ん、おばばさまが、そう言うならやってみたいかな」
「私もー」
「失敗してもいいなら私もやるわ」
「なんか楽しそうよね」
「ワクワクするわ!」
お姉さん達もみんな乗り気のようです。
「待って! 開発するのにも素材が必要よ。私、そんなにお金掛けられないわ」
「「「「あー……」」」」
冷静なお姉さんの指摘に、盛り上がっていた他のお姉さん達も一気にテンションが下がってしまったようです。
「うんうん、良い指摘じゃのう。ちゃんと金勘定が出来るようでなによりじゃな」
おばばさまが、そう言って上機嫌で頷くと、お姉さん達はちょっと苦笑いしていました。
「水龍、お前さんもこやつらと一緒に倶楽部活動をしてみてはどうじゃ?」
「ん? わたし?」
突然、話を振られて、水龍ちゃんは目をパチクリさせました。
「そうじゃ。倶楽部活動では、単なるポーション作りとは、また違った面白さが味わえると思うのじゃよ。どうじゃ? 試しにやってみんか?」
「う~ん、どうしようかなぁ……」
おばばさまの話に、水龍ちゃんは、ちょっと悩み気味です。お姉さん達も固唾を飲んで見守ります。
「水龍ちゃん、一攫千金のチャンスかもしれないわよ!」
「一攫千金!? やるわ!」
目を金貨のようにしたお姉さんの言葉に反応して、水龍ちゃんも、目を金貨のようにして即決しました。
「お前さん、十分稼いでおるじゃろうに……」
「はっ!? そうだったわ! つい反射的に……」
「まぁ、やる気になったのならば良いがの」
「えへへへへ」
おばばさまは、ちょっと呆れたようでしたが、水龍ちゃんが倶楽部活動に参加するのなら良いようです。水龍ちゃんもちょっとはにかみましたが、発言を撤回するそぶりはありません。
「水龍が参加するならば、素材の心配はいらんじゃろう。なにせ、毎日のようにダンジョンへ入って素材を採って来るからのう」
おばばさまは、ニヤリと口角を上げ、薬師ギルドのお姉さん達へ向けて、そう言いました。
「つまり、素材を購入するお金の心配はしなくていいと?」
「水龍ちゃんが採って来る素材次第ね」
「水くらげ草を採って来るくらいだから、かなり期待できるんじゃない?」
「これはもう……」
「やるしかないわね!」
お姉さん達は、素材の心配もしなくて良いとなると、俄然、やる気が出て来たようです。結局、全員一致で、倶楽部活動をすることになり、倶楽部の名前や目標とか活動時間などについて、大いに話は盛り上がりました。
「じゃぁ、私達の倶楽部名は、美容商品開発倶楽部で決まりね」
「略して美発部ね」
「うんうん、なんかいい感じ」
「そして、『ゆるく楽しく美しく』をモットーに、ガチになり過ぎないよう適度に活動するわよ!」
「「「「おー!」」」」
なんやかんやで、お姉さん達が帰る頃には、倶楽部名とスローガン的なものが決まって、みんな楽しそうに盛り上がったのでした。
お姉さん達が帰った後、晩ご飯を食べながら、水龍ちゃんは、おばばさまと美発部の話をしていました。
「ばばさま、美発部に入ったのはいいのだけれど、具体的には何をすればいいのかしら?」
「そうじゃのう。当面は、素材集めじゃな。まぁ、お前さんはちょくちょくダンジョンから素材を持ち帰っておるから、既に十分な素材があるがの」
「そっか。どんな素材が必要になるか分からないから、もっといろんな素材を探してこようかしらね」
「なー!」
水龍ちゃんは、美発部で自分が何をすればいいのか、今一つピンと来ていないようです。おばばさまと話して、素材集めを頑張ろうと決めると、トラ丸も がんばるぞー! と意気込んでいました。
「ふはははは、そんなに気合を入れんでも、ダンジョンへ行ったついでに、少し素材を採って来るくらいで良いのじゃぞ」
「そうなの?」
「まぁ、そのうち、いろいろ実験することになるじゃろうから、その時は、皆と一緒になって実験するとええ。お前さんもきっと楽しめるじゃろうよ」
「うふふ、楽しみだわ」
「なー」
おばばさまの話を聞いて、水龍ちゃんとトラ丸は、薬師ギルドのお姉さん達と一緒に実験する日を楽しみにするのでした。
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