第六章 水龍ちゃんのポーション開発
1.水龍ちゃん、臭いにおいを絶つ
第129話 臭み取り素材
今日も水龍ちゃんは、ダンジョンの泉へやって来て、美肌ポーションの臭みを取るべく実験を重ねていました。
水龍ちゃんは、泉の水の上で立ったまま、手にした錬金釜の中を青い掻き混ぜ棒へと魔力を込めてゆっくりと掻き混ぜてゆきます。
「よし、いい感じね」
ポーション錬成が終わったようで、水龍ちゃんは、パシャパシャと水の上を歩いて泉の畔へ向かいます。
「なー」
「ふふっ、トラ丸は、そろそろ休憩にするのかしら?」
トラ丸が、ぎこちないながらもパシャ、パシャ、パシャとゆっくりと歩いて近づいて来ます。泉に来るたびに水上歩行の練習をしていた成果が現れて、なんとか水の上を歩けるようになっていました。
まだまだ、水の上ではゆっくりとしか歩けず、ときどき水の中に足を沈めてしまうため、トラ丸は、もっと上手に歩けるようにと、今も水上歩行の練習を続けているのです。
水龍ちゃんは、片手に錬金釜を持ったまま、途中でトラ丸を片手で抱き上げると、パシャパシャと歩いて泉の畔へ上がりました。
「さてと、実験品のにおいはどうかな? すんすん、ん? すんすんすん、生臭いにおいが全然しないわ!」
「なー!」
泉の畔に敷いた敷物の上に座り、錬金釜の中身のにおいを嗅いで、水龍ちゃんは嬉しそうに声を上げました。トラ丸も、わーい!と自分のことのように嬉しそうです。
水龍ちゃんは、水流操作で錬金釜を中身を浮かび上がらせると、器用にろ過してポーション瓶へと注ぎ入れました。
「お待たせ。お茶を入れて休憩にしましょ」
「な~♪」
水龍ちゃんは、バックパックからお茶の入った水筒やカップなどを次々と取り出すと、テキパキと休憩の準備をしました。
「今日は、お茶菓子にクッキーを持ってきたわ」
「な~♪」
清涼な泉の畔で、サクサクとしたクッキーを食べながら、まったりとお茶を飲むひと時も良いものです。
「まさか、マンドラゴラもどきを使ったら臭みが無くなるとはね。いろいろ試してみるものだわ」
水龍ちゃんは、先ほど作ったポーションを入れた瓶を手に取り、嬉しそうに呟きます。ポーション瓶の中身は、ほぼ透明ですが、どこかキラキラした感じがします。
「なー?」
「完成したのかって? う~ん、どうかしら。生臭いにおいが発生しなくなったようだけど、時間を置いてもにおいが出ないか確認しなくちゃね。あとは、そうね、マンドラゴラもどきが美肌ポーションの臭み取りに有効だとして、素材の分量なんかもどれくらいが最適か調べておきたいわね」
「なー」
「大変だねって? そうね、だけど、とっても楽しいわよ」
水龍ちゃんは、にっこり笑顔で そう言うと、ゆっくりとお茶を嗜むのでした。
しばしの間、のんびりとした休憩を取ると、トラ丸は、再び水上歩行の練習を始めました。
水龍ちゃんは、お茶のカップやクッキーを乗せたお皿を綺麗に洗って片付けると、もう一度、先ほど作ったポーションのにおいを確認しました。
「うん、やっぱり生臭いにおいはしないわね。よし、素材の分量を変えたものを作ってみましょ」
水龍ちゃんは、マンドラゴラもどきの有効性を確信すると、ふんすとやる気を漲らせて、研究を再開するのでした。
美肌ポーションの研究が捗り、水龍ちゃんは、上機嫌で帰宅しました。
おばばさまが、すでに晩ご飯の準備を終えていて、水龍ちゃんとトラ丸は、すぐにご飯の席に着きました。
今日のご飯は、魚と野菜がたっぷり入ったのお鍋です。沸々と煮立つ土鍋から、とても美味しそうな香りが溢れてきます。
「お魚おいしいね~♪」
「な~♪」
美味しそうに食べる水龍ちゃんとトラ丸の姿に、おばばさまも微笑んでいます。
「今日は、いつになく嬉しそうじゃのう」
「えへへ、実はね、——」
おばばさまに尋ねられて、水龍ちゃんは、ようやく生臭いにおいのしない美肌ポーションを作ることが出来たのだと、嬉しそうに話して聞かせます。
おばばさまも相槌を打ちながら聞いてくれて、よく頑張ったのう、と褒めてくれました。ここのところ、いつも臭み取りに使えそうな素材の話をしていたので、おばばさまは、水龍ちゃんが根気よく頑張っていたことをよく知っているのです。
「そういえば、明日は、毒消しサンドの屋台がオープンするんじゃったかのう」
「そうよ。だから、明日は早起きしてダンジョン村へ行こうと思ってるの」
「なー!」
おばばさまが毒消しサンドの話題を切り出すと、水龍ちゃんとトラ丸も嬉しそうに話に乗りました。
水龍ちゃんがサンプルとして2倍、3倍、5倍の毒消しマヨネーズを試作、提供した結果、5倍の毒消しマヨネーズが好評で、赤毒、青毒共に5倍濃度の毒消しマヨネーズを売り出すことになったのです。
そして、各種毒消しサンドの評価も終わり、明日、ダンジョン村で屋台販売を開始することになっています。
「ハンター達も喜ぶことじゃろうのう」
「宣伝もバッチリだって、トーマスさんが言ってたわ」
「ふはははは、トーマスも気合が入っておるようじゃな」
「うふふっ、とっても楽しそうよ」
「なー」
楽しく話をしながら鍋を食べ、水龍ちゃんは、明日オープンする毒消しサンドの屋台を見るのを楽しみにしているのでした。
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