第127話 試食会
水龍ちゃんは、マーサさんが命名した美肌ポーションを完成させるべく、ダンジョンへと通いながらいろいろと実験を繰り返していました。
そんなある日のこと、水龍ちゃんは、商業ギルドへとやって来ました。水龍ちゃんとトラ丸は、いつものように101番窓口へ行くと、窓口担当のシュリさんと軽く挨拶を交わします。
それから、シュリさんに連れられて応接室へ入ると、トーマスさんがにっこり笑顔で待っていて、軽く挨拶を交わしました。
そして、さっそくとばかりに、トーマスさんが、テーブルに置いてある食べ物を示して口を開きました。
「これらは、先日サンプル提供いただいた毒消しマヨネーズを使って開発した毒消しサンドです。毒消し食品の第一弾として、まずは卵サンド以外にもいくつか具材のバリエーションを増やした毒消しサンドを販売していきたいと考えております」
トーマスさんが、自信満々に紹介してくれたとおり、テーブルの上には数種類のバゲットサンドが並んでいます。どれも毒消しマヨネーズを使ったものということで、今日は新商品の試食会なのです。
「うわぁ、どれも美味しそうね」
「な~♪」
水龍ちゃんとトラ丸は、具材の違う毒消しサンドを見てとても嬉しそうです。
「今日は、これら――」
トーマスさんが、話を進めようとしたところ、その言葉を遮るように応接室の扉がバーンと勢いよく開け放たれました。
「おはよー! あたしが商業ギルドのギルドマスター、プリンだー!!」
と、扉を開けたプリンちゃんが、楽しそうに大きな声で名乗りを上げました。皆の注目を一身に浴びたプリンちゃんは、あっはっは、と快活な笑い声を上げながらずかずかと応接室へ入ってきました。
「おはよう、プリンちゃん」
「なー!」
「おはよー! 水龍ちゃん! トラ丸も元気そうだなー!」
水龍ちゃんとトラ丸の挨拶に、プリンちゃんは嬉しそうに返しながら水龍ちゃんの隣へドカッと座りました。
「ギルマス、会議が入っていたと思いますが、どうしてここに?」
「おー! なんか美味しそうな匂いがしたからなー! 来てみたぞー!」
シュリさんの問いに、プリンちゃんは、陽気に答えました。
「確か、大変重要な会議だったかと……」
「ふはははははー! ギルマスの1人や2人いなくても問題ないだろー! それよりも美味しそうなパンだなー! 食べていいかー?」
頭を抱えるシュリさんに、プリンちゃんは、あっけらかんと問題なし発言をして、目の前のバゲットサンドを食べる気満々のようです。
「どうぞどうぞ、近々販売しようと考えている毒消しマヨネーズを使った毒消しサンドの試作品でございます。試食した後で感想をお聞かせいただければと思います」
「おおー! 例の毒消しサンド復活の話だなー! いっただっきまーす!」
トーマスさんが、もみ手で試食を勧めると、プリンちゃんは、心得たとばかりに、1つ手に取りました。シュリさんは、会議をサボったであろうプリンちゃんに呆れ顔で、やれやれと肩を竦めています。
「それは、赤毒マヨネーズを使った特性ソースを絡めた焼肉サンドでございますね」
「うはー! これ、うまいなー!」
トーマスさんが、プリンちゃんの手にした焼肉サンドについて簡単に説明すると、プリンちゃんは、一口食べて喜びの声を上げ、もぐもぐと夢中で食べています。
「ありがとうございます。ほかにもフィッシュフライサンド、ツナサンド、ポテトサラダとハムを挟んだポテサラハムサンドをご用意しておりますよ。ささ、水龍ちゃんもシュリさんもどうぞ食べてみてください」
トーマスさんの勧めに、水龍ちゃんは、トラ丸がガン見していたフィッシュフライサンドを手に取ると、どこからか取り出したナイフで半分に切り、トラ丸と半分こしました。
「うん、おいしい~♪」
「な~♪」
パクリとフィッシュフライサンドにかぶりついた水龍ちゃんとトラ丸は、その美味しさにご満悦です。
「ありがとうございます。フィッシュフライサンドには、青毒マヨネーズを使った特性タルタルソースを使用しております。このタルタルソースは、魚介の揚げ物に非常に良く合うので、いろいろ応用できると考えております」
トーマスさんは、水龍ちゃんとトラ丸の食べっぷりを見ながら、嬉しそうにフィッシュフライサンドの説明をしてくれました。
「このポテサラサンドもうまいぞー!」
「ポテサラハムサンドですね。青毒マヨネーズを使ったポテトサラダがとても美味しく、厚切りハムと一緒にすることでハンターの皆様にもご満足いただける商品に仕上げました」
すでに焼肉サンドを食べ終えて、次のポテサラハムサンドを食べ始めたプリンちゃんに、トーマスさんは、さらっと商品名を正しながら説明をしてゆきました。
「こちらのツナサンドは、赤毒マヨネーズを使ってピリ辛風味に仕上げており、ピリ辛好きの方々に受け入れられるだろうと考えております」
さらにトーマスさんは、ツナサンドを手に取り、その商品説明をすると、にっこり笑顔をシュリさんへと向けました。
「ふむ、ピリ辛風味と言われては、試食せずにはいられませんな」
シュリさんは、口角を上げてそう言うと、ツナサンドを手に取り一口食べて、目を見開きました。
「むぅ、これは素晴らしい仕上がりです。ピリッとする辛さだけでなく、まろやかな旨味が絶妙に調和していて、とても味わい深いですね」
シュリさんの評価に、トーマスさんは、そうでしょう、そうでしょうと、とても満足げな笑顔をみせるのでした。
こうして、和気あいあいとした雰囲気の中、新たな毒消しサンドの試食会は続くのでした。
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