第100話 ポーション錬成してみた
図書館から帰ってきた水龍ちゃんとトラ丸は、とりあえず、ハーブティーを入れて一服です。
「まずはヒール草だけでポーション錬成してみて、何級くらいのポーションになるか見てみたいわね」
「なー……」
水龍ちゃんが、ダンジョンで採集してきたヒール草の使い道を考えていると、トラ丸が心配そうな顔で訴えてきました。
「ふふっ、大丈夫よ。味に期待はしていないから、今回は味見はしないわよ」
「なー」
どうやら、トラ丸は、美味しくないポーションを味見する水龍ちゃんを想像していたようで、水龍ちゃんが味見しないと言ってなでなですると安心したようです。
水龍ちゃんとトラ丸は、ハーブティーを飲み終えると調合室へと入りました。試験的に少量のポーションを作るならば、小さな魔導コンロやさまざまな器材の揃っている調合室の方が使い勝手が良いのです。
水龍ちゃんは、小さな錬金釜とヒール草を準備しました。ヒール草は、ダンジョンから持ち帰った後、乾煎りしておいたものです。
「う~ん、まずは沸騰させながら5分くらいポーション錬成してみようかな」
「なー」
水龍ちゃんは、ポーションの錬成条件を口にします。図書館の本からは、錬成条件についての情報は何も得られなかったので、適当に思いついた条件なのですが、トラ丸は、そだねー、と能天気に相槌を打ちました。
「う~ん、ヒール草の量は、とりあえずこんなもんかな」
水龍ちゃんは、実験でよく使う軽量スプーンでヒール草を掬い、錬金釜へと入れました。そして、ひょいっと人差し指を立てて小さな魔法の水球を作り上げると、錬金釜へと注ぎ入れました。
「魔導コンロ、オン! じっくり温度を上げながらポーション錬成してみよう」
「なー!」
なんだか、楽しそうになってきた水龍ちゃんに、トラ丸が声援を送ります。
水龍ちゃんは、ミスリル製の掻き混ぜ棒を使って魔力を込めて錬金釜の魔法水をゆっくりと掻き混ぜ始めました。
錬金釜の魔法水には、徐々に薬草成分が溶け出してきて、うっすらと青みがかってきました。ヒール草の青色の花から色が出て来たのでしょう。次第に色味が濃くなってゆき、魔法水が沸騰するころには青緑色へと染まってゆきました。
錬金釜の魔法水が沸騰したところで、水龍ちゃんは、魔導コンロの加熱を弱くしました。
「よし、あと5分間、ポーション錬成するわ。トラ丸、5分経ったら教えてね」
「なー!」
水龍ちゃんに頼まれて、トラ丸は、まかせてー! と元気に鳴いて見せると、時計を見つめました。
「ふふふん、ふふふん、ふふふのふん♪」
「なぅな~、なぅな~、なぅなぅな~♪」
水龍ちゃんが、ポーション錬成をしながら鼻歌を歌い始めると、トラ丸も合わせて歌い始めました。2人とも楽しそうです。
「なーなー!」
「もう5分経ったのね。教えてくれてありがと」
トラ丸の呼び声に、水龍ちゃんは、ポーション錬成を止めてにっこり笑顔でお礼を言うと、魔導コンロを止めました。
「冷めたら何級くらいになるのか、鑑定してみましょ」
「なー」
水龍ちゃんは、錬成したポーション?が自然に冷めるのを待つようです。その間に小さな漏斗とろ紙、ポーション瓶を用意して、今回の実験でポーション錬成した温度や時間、薬草量などの諸条件を紙に書き込んでおきました。
「そろそろ冷めたかしら?」
「なぅ?」
魔法水の玉を浮かべてトラ丸と遊んでいた水龍ちゃんは、そろそろ頃合いだろうと錬金釜の実験ポーションへ指を入れて温度を確かめました。
「うん、常温よりは少し暖かいけど、いいでしょう。ポーション鑑定してみましょ」
「なー」
実験ポーションはちょっと温いくらいのようで、トラ丸が、楽しみー、と見つめる中、水龍ちゃんは、小さな漏斗を使って実験ポーションをろ過し、ポーション瓶へと注ぎ入れました。
そして、壁際の小さな台に置かれているポーション鑑定魔道具の蓋を開け、実験ポーションの入ったポーション瓶を箱の中央部にある窪みへと入れて蓋を閉じました。
魔道具正面のスイッチを入れると、キュイーンと甲高い音が鳴り、魔道具正面のアナログメーターがゆるゆると動き出しました。
水龍ちゃんとトラ丸が、まじまじとメーターの動きを見ていると、やがてメーターが動かなくなり、ピロリロリ~ン♪と魔道具から音が鳴りました。メーターは、5級の真ん中あたりを示しています。
「う~ん、5級かぁ。ポーションとしては、全然ダメみたいね」
「なー……」
結果を受けて、水龍ちゃんとトラ丸は、あまり期待はしていなかったとはいえ残念そうな顔をしました。5級では、正直ポーションとしては使い物になりません。
「う~ん、ヒール草の量を増やしてみようかな?」
「なー」
「それとも、じっくり煮出した後に、ポーション錬成してみるか……」
「なー」
水龍ちゃんが、次の条件をどうするか言葉に出しながら考えていると、トラ丸は、尻尾をゆらゆら揺らしながら、そだねー、と適当に相槌を打ちます。
結局、水龍ちゃんは、ヒール草が無くなるまで、いろいろと条件を変更して実験を繰り返すのでした。
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