第70話 新型ポーションの生産開始
今日から、新型治癒ポーションの生産開始です。
水龍ちゃんは、ハンターギルドへの毒消しアイテム納品から帰宅し、朝食を済ませて薬師ギルドへ向かうおばばさまを送り出すと、さっそく新型治癒ポーション作りに取り掛かりました。
およそ大瓶1本程度のポーション作りに適したサイズの錬金釜を使って、水龍ちゃんは、トラ丸の応援を受けながら、ご機嫌で新型治癒ポーションを作ってゆきます。
水龍ちゃんは、数回ポーション作りを繰り返し、大瓶1本と特大瓶1本分の新型治癒ポーションを完成させると、大瓶1本を持って薬師ギルドへ向かいました。
「まぁ! これが1級ポーションなのね!」
「綺麗な色のポーションだわ!」
「素敵!!!」
薬師ギルドの女性職員達は、新型治癒ポーションを見て、かなりテンションが上がっていました。水龍ちゃんが、いつものように小瓶に入れた余った新型治癒ポーションを渡すと、ものすごく喜んでくれました。
買取り金額は、商業ギルドから連絡があったとのことで、すんなり買い取ってもらえましたが、ポーション鑑定をして1級を確認したところで、やはりギルド職員達が盛大に盛り上がっていました。
薬師ギルドを出ると、水龍ちゃんは商業ギルドへやって来ました。もちろん、トラ丸も一緒です。
「売り買いに関係する伝票とか全部持ってきましたよ!」
「なー!」
シュリさんに案内された応接室で、水龍ちゃんが、バックパックから取り出した伝票入りの袋をドサッとテーブルの上へ乗せました。
「それでは、一緒に帳簿を作成してゆきましょう」
「はい!」
「なー!」
シュリさんの言葉に、水龍ちゃんとトラ丸は、元気よく返事をしました。
今日は、シュリさんが、帳簿の付け方を教えてくれる約束なのです。
というのも、昨日、水龍ちゃんが毒消しアイテムの売買に関する帳簿を全く付けていないことが発覚したため、シュリさんが教えくれることになったのです。
実は、水龍ちゃんの帳簿の作成は、エメラルド商会が代行して行う予定だったと、昨日トーマスさんが教えてくれました。
大手商会では、個人経営の職人さんのために帳簿などを代行して行うサービスを提供していて、水龍ちゃんの帳簿作成をおばばさまに頼まれていたのだとトーマスさんが話してくれたのです。
それを聞いたシュリさんは、勉強の為にも初めの数か月分は、水龍ちゃん自身で帳簿を付けてみた方がいいと言い、シュリさんが直々に教えましょうと手を上げてくれたのです。
そういう流れで、今日は、さっそく溜まっていた伝票をもとに、水龍ちゃんが、帳簿の作成にチャレンジするのです。
水龍ちゃんは、シュリさんに1から教えてもらいながら、伝票等の資料を基に1つ1つ丁寧に帳簿付けをしてゆきます。
「水龍様は、覚えるのが早いですね」
「えへへ、シュリさんの教え方が分かり易いからですよ」
シュリさんに褒められて、水龍ちゃんは、嬉しそうな笑顔を見せました。その横ではトラ丸が胸を張ってドヤ顔を決めています。
水龍ちゃんの場合、理解が早いということもありますが、金額が違うだけで毎日同じような売買を繰り返しているため、どんどん帳簿付けを進めてゆき、今までの商い分を全て片付けてしまいました。
「商業ギルドでは、帳簿付けや税金についての相談も行っておりますので、不明なことがあれば、いつでもご相談ください」
「はい! 今日はありがとうございました!」
「なー!」
水龍ちゃんとトラ丸は、元気にお礼を言って、商業ギルドを後にしました。
お昼ご飯にと、途中のお店で買ったハンバーガーを持って、水龍ちゃんとトラ丸は家路につきました。
「あら? エメラルド商会の竜車だわ」
「ぅな?」
水龍ちゃんとトラ丸は、家の前にエメラルド商会の竜車を見つけて、ちょっと首を傾げました。いつもの配達には、まだ随分と早いのです。
「おお、今、戻られたところですね。お会いできて良かったです」
玄関前にいたトーマスさんが、水龍ちゃんとトラ丸を見つけて、嬉しそうに話しかけて来ました。
「こんにちは、トーマスさん。こんな時間にどうしたんですか?」
「なー?」
「突然お伺いして申し訳ないですな。ちょうど近くを通りがかったものでして、例の新型治癒ポーションが出来ていたなら買い取ろうと立ち寄ったのですよ」
なるほど、新型治癒ポーションが目的だったようです。水龍ちゃんは、いつもの配達までには作っておくと言っておいたのですが、販売初日とあって、トーマスさんも気になっていたようです。
「出かける前に作っておいたので、持ってきますね」
「おお、そうでしたか! ありがとうございます!」
水龍ちゃんは、トーマスさんを玄関で待たせて、トラ丸と一緒に調合室に置いてある新型治癒ポーション入りの特大瓶を取りに行きました。トラ丸が、水龍ちゃんの後をトコトコ追いかけて歩く姿はとってもかわいらしいです。
「おおっ! これが新型治癒ポーションですか。透き通った綺麗な青色ですねぇ」
トーマスさんが、水龍ちゃんが持ってきた新型治癒ポーションを見るや、宝物でも見つけたかのようにキラキラと瞳を光らせ、感嘆の声を漏らしました。そんなトーマスさんに向かって、トラ丸は、ドヤ顔を見せていました。
「なんだか、嬉しそうですね」
「ええ、新しい商品を取り扱うのは、嬉しいものですよ。とりわけ、優良商品の場合は格別です」
水龍ちゃんの声に、トーマスさんは満面の笑みを浮かべながら、そう答えるのでした。
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