第63話 午後は、毒消しポーションづくり

 図書館で小説を楽しんだ水龍ちゃんは、トラ丸と一緒にカレーライスを食べて帰宅しました。


「さぁ、まずは、青毒ポーションを作ってしまうわよ!」

「なー!」


 帰宅後、水龍ちゃんはトラ丸の声援を受けながら、フンスとやる気を出して青毒ポーション作りに取り掛かりました。新型青毒ポーション作りも慣れたもので、テキパキと作業を進めてゆきます。


 トラ丸は、尻尾をゆらゆら揺らしながら、水龍ちゃんの作業をおとなしく見ていたのですが、そのうち大きなあくびをしたかと思うと丸くなって眠ってしまいました。


 水龍ちゃんは、ポーション錬成が終わったところで、熱々の錬金釜から茶こしで薬草を掬い取って、すり鉢へ入れました。そして、すりこ木を使って薬草をすりつぶしてゆきました。


 続いて錬金釜の新型青毒ポーションを冷ましてから、ろ過してブルーライムを絞った果汁を適量混ぜて仕上げます。


「うん、こんなもんね」


 完成した新型青毒ポーションを味見して、水龍ちゃんは満足げに頷くと、ポーション瓶へ注いで、鑑定魔道具で品質確認をします。


 ピロリロリ~ン♪という鑑定完了の音が鳴り響くと、トラ丸がピクリと耳を動かして顔を上げました。


「品質よし!」


 今日も安定の品質です。


 水龍ちゃんは、水流操作で次々とポーションを小瓶へ注ぎ入れると、蓋をして猫の手シールを貼りつけ、ポーションケースへ入れてゆきました。


「さて、次は青毒消し入りマヨネーズね」


 水龍ちゃんは、テーブルの上を片付けて、ボウルやマヨネーズなどを準備します。マヨネーズは、はかりを使って必要量を量っておきます。


 すり鉢ですりつぶしておいた薬草をマヨネーズの入ったボウルへ入れて、さらに青毒ポーション作りで余ったブルーライムの果汁を投入します。


 あとは混ぜ合わせるだけです。水龍ちゃんは、ミスリル製の掻き混ぜ棒を使って魔力を込めながら混ぜてゆきます。


 すりつぶした薬草には、既に青毒消しの有効成分が錬成されているので、普通に混ぜ合わせるだけでよいとは思うのですが、水龍ちゃんは何となくポーション錬成する時のように魔力を込めて混ぜることにしています。


「ふぅ、こんなものかしら」

「なー」


 ちょうど混ぜ終わったところで、トラ丸が、水龍ちゃんへ甘えるようにすりすりしてきました。


「ふふっ、ちょうど出来たところよ。トラ丸、休憩しよっか」

「な~♪」


 水龍ちゃんは、すりすりしてきたトラ丸を撫でてから、ちゃちゃっと後片付けをすると、青毒消し入りマヨネーズの入ったボウルに蓋をのせてキッチンへと運び、休憩に入りました。


「クッキー美味しいねー」

「なー」


 水龍ちゃんが、トラ丸とおやつのクッキーを食べながらハーブティーを嗜んでいると、ピンポ~ン♪と玄関のチャイムが鳴りました。


「あら? エメラルド商会かしら。今日は少し早いわね」

「なー」


 水龍ちゃんは、トラ丸を引き連れてトテトテと玄関へ向かいます。


「こんちはー! エメラルド商会でーす!」


 やはり、エメラルド商会の陽気な配達人でした。


 水龍ちゃんは、薬草類や毒消しサンドの材料などをエメラルド商会に注文して配達を頼んでいます。特にバゲットは、当日焼いたものを毎日届けてもらっています。


 今日は、卵にベーコン、バゲットを頼んでいて、水龍ちゃんは、各品の数量を確認してゆきます。


 水龍ちゃんは、配達品の確認を終えると、伝票を確認して料金を支払い、領収書を受け取りました。


「明日は、卵とバゲットのほかに、アオドクダミンとタチマチソウを1缶ずつお願いします」

「アオドクダミンとタチマチソウを1缶ずつですねー。いつもありがとうございまーす。では、また明日ー」


 水龍ちゃんは、明日の配達品に薬草を追加で頼み、陽気な配達人を見送ると、リビングへ戻って再び休憩に入りました。


「毒消しサンドの材料も届いたし、あとは赤毒ポーションの研究をして赤毒消しマヨネーズを作れば、今日の仕事は終わりよね」

「なー」


「さて、赤毒ポーションだけど、辛みが取り切れなくって困ったものよね。別の味を足してみた方が早いかしら?」

「なぅ?」


 クッキーを食べながら、水龍ちゃんは、休憩後に行う事について話します。トラ丸は、そーだねー、とか、どうかな? とかいう感じで、かわいらしく相槌を打つように鳴き声を上げていました。


 まったりと休憩を終えた水龍ちゃんは、調合室へ入って、赤毒ポーションの研究を始めました。


 今まで取ったデータを広げて眺めながら、今までにない新たな条件を考えだしては実験をします。毎日、こうした地道な試行錯誤を繰り返しているのです。


「なー」

「ん? あー、もう薬草の出涸らしは十分だね。研究はここまでにして、赤毒消しマヨネーズを作ろっか」


 トラ丸の呼び声で、水龍ちゃんは、赤毒ポーションの実験のたびにすり鉢に取り集めていた薬草の出涸らしが十分な量になっていることに気付き、明日の赤毒サンドに使うマヨネーズ作りに取り掛かりました。


 青毒消しマヨネーズと同様に、すり鉢ですりつぶした薬草にマヨネーズを混ぜ合わせれば出来上がりです。


 水龍ちゃんが、完成した赤毒消しマヨネーズの入ったボウルを持って、トラ丸と一緒に調合室を出ると、いい匂いが漂ってきました。


「ばばさま、帰って来てたのね。気付かなかったわ」

「ふはははは、お前さん、今日もポーションの研究に夢中になっておったようじゃのう。さぁ、ちょうど晩ご飯が出来たところじゃ。運ぶのを手伝っておくれ」


「うん!」

「なー!」


 元気に返事をして、水龍ちゃんは、手にしたボウルをいつもの保管場所に置くと、晩ご飯を運ぶお手伝いをしました。


 今日も水龍ちゃんは、おばばさまとトラ丸と一緒にテーブルを囲み、笑顔でたわいのない話をしながら温かなご飯を食べました。そして、トラ丸とお風呂に入り、明日に備えて早めに眠りにつくのでした。

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