第48話 研究の成果
水龍ちゃんが、青毒ポーションの錬成について新たな発見を得てから数日が経ちました。その間、水龍ちゃんは、平和な日常生活を送りながらも、精力的に青毒ポーションの研究に励んでいました。
「うん、こんなもんね」
「なー」
水龍ちゃんは、試作した青毒ポーションを味見して、にっこりと笑顔を見せると、テーブルの上にちょこんとお座りしていたトラ丸が、水龍ちゃんを見上げて、おめでとうとでも言うように、嬉しそうに声を上げました。
「ありがとう、トラ丸ぅ。ようやく青毒ポーションが完成したわ」
水龍ちゃんは、そう言いながら、トラ丸をテーブルの上でモフモフします。トラ丸も気持ちよさそうに目を細めては、尻尾をゆらゆらと揺らしました。
「ふふっ、ばばさまが帰ってきたら報告しなくちゃね。きっと喜んでくれるわ」
「な~♪」
水龍ちゃんが嬉しそうに言うと、トラ丸もそうだねとご機嫌に頷いてくれました。
調合室を片付けて、水龍ちゃんがトラ丸としばらく遊んでいると、おばばさまが帰ってきました。
「ばばさま、お帰りなさい」
「なー」
「ただいま」
「あのね、研究していた青毒ポーションがようやく完成したの。美味しいとまでは言わないけれど、随分と飲みやすくなったと思うわ」
「ほうほう、そうかい、そうかい、よく頑張ったのう」
水龍ちゃんが、嬉しそうに青毒ポーションの話をすると、おばばさまは、まるで自分のことのように、とても嬉しそうな笑顔で労ってくれました。
「えへへ、ばばさまに喜んでもらえて嬉しいわ」
「それじゃぁ、完成した青毒ポーションを見せて貰おうかのう」
「もちろんよ!」
「な~♪」
おばばさまに完成した青毒ポーションを見せようと、水龍ちゃんとトラ丸はトテトテと調合室へと駆け出しました。
「これよ! 新型青毒ポーション。鑑定結果は3級よ!」
水龍ちゃんは、遅れて調合室へ入って来たおばばさまへと、青毒ポーションの入った小瓶を掲げて見せました。トラ丸は、テーブルの上へちょこんとお座りして、どうだと言わんばかりに胸を張っています。
「ほほう、綺麗な澄んだ青紫色じゃのう。見た目だけでも今までの青毒ポーションとは違っておるのじゃ」
「えへへ、苦みとかえぐみとか、なるべく取り除いたら濁りが少なくなったのよ」
おばばさまが、水龍ちゃんの開発した青毒ポーションを手に取り、その色合いの違いに感心すると、水龍ちゃんは、とても嬉しそうにその経緯を話して聞かせました。
「どうれ、まずは3級相当という鑑定結果を確認させてもらおうかのう」
「いいわよ。ちゃんと3級だったから、確認してみて」
おばばさまは、手にした青毒ポーションを壁際の小さな台に置かれたポーション鑑定魔道具へセットしました。おばばさまは、水龍ちゃんが言うことを疑う気など毛頭ないのでしょうが、一度、その目で確認しておきたいようです。
おばばさまが魔道具のスイッチを押すと、キュイーンと甲高い音が鳴り、魔道具正面のアナログメーターがゆるゆると動き出しました。やがて、ピロリロリ~ン♪と魔道具から音が鳴り、ポーションの鑑定が完了しました。
「ほう、3級の、それも上の方とは、さすがじゃのう」
「えへへ、頑張ったのよ」
おばばさまが、鑑定魔道具のメーターから等級を読み取り、笑顔でうんうんと頷いて見せると、水龍ちゃんは、はにかんだ笑顔で答えました。地道な実験を繰り返して得られた研究成果なのですから、褒められて嬉しいに決まってます。
「それじゃぁ、味の方を確認してみようかの」
「ふふふっ、ばばさま、きっとびっくりするわよ」
「ふはははは、それは楽しみじゃのう」
おばばさまは、愉快そうに快活に笑って見せると、ポーション鑑定魔道具から青毒ポーションを取り出してカップへと注ぎ入れました。そして、水龍ちゃんとトラ丸がどきどきしながら見つめる中、おばばさまは、くいっと一口青毒ポーションを飲みました。
「なんと!!」
おばばさまは、くわっと目を見開き、驚きの声を漏らすと、カップの中の青毒ポーションをまじまじと見つめました。
「まさか、これほどまでに飲みやすくなっておるとは思わなかったのじゃ。これぞ、まさに味の革命なのじゃ!」
おばばさまが、興奮気味に賞賛の声を上げると、水龍ちゃんは嬉しそうに照れ笑いしました。トラ丸は、テーブルの上へちょこんとお座りして、誇らしげに胸を張って満足顔です。
「ばばさまにも作り方を教えてあげるわ」
「よいのか? まだ特許登録もしておらぬのじゃろう。わしが、先に特許登録してしまうかもしれぬのじゃぞ」
褒められて気を良くした水龍ちゃんが、嬉しそうに作り方を披露しようとすると、おばばさまは、少し困った顔をして、最悪の事態の可能性を示唆しました。
「大丈夫よ。ばばさまは、そんなことしないもの」
「ふはははは、嬉しいこと言ってくれるのう。うむ、ならば、わしもお前さんの不利益になることはしないと誓うのじゃ」
あっけらかんとした水龍ちゃんの態度に、おばばさまは、それはもう、たいそう嬉しそうな笑い声を上げるのでした。
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